福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その12 胃炎内視鏡所見⑥ 鳥肌胃炎について

おはようございます。医師の細川です。

 

前回、ピロリ菌感染胃炎の中でもこの内視鏡所見があると、ピロリ菌の現感染(現在も胃にピロリ菌感染が継続している状態)があると考えられる「粘膜腫脹・皺襞腫大」についてお話ししました。

 

今回は、前回同様にピロリ菌の現感染があると考えられる鳥肌胃炎についてお話ししたいと思います。

 

胃カメラ検査を行った際に、腕の皮膚に見られる鳥肌の様に胃粘膜に均一なつぶつぶした顆粒状の隆起が密集して認められることがあります。この密集した隆起が鳥肌胃炎です。

特に胃の出口付近である幽門前庭部から胃角部にかけて認められることが多い胃炎です。

内視鏡検査時にインジゴカルミンという青い色素を胃粘膜に散布して観察すると粘膜の凹凸が更に目立つようになり視認し易くなります。

 

ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると、通常は、ピロリ菌が産生する病原性タンパク質により胃粘膜に持続的な炎症が引き起こされます。この炎症が継続し、慢性活動性胃炎の状態になると徐々に胃粘膜が薄くなっていく胃の老化(胃粘膜の萎縮)が進行するという経過をとります。

 

しかし、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染によりこのような慢性活動性胃炎の経過をとらず、胃粘膜の萎縮が起こる前にピロリ菌感染により過剰なリンパ組織の免疫応答を引き起こす経過をとることがあります。

この経過で過剰なリンパ組織の免疫応答によりリンパ濾胞が増生すると、胃の出口付近に鳥肌の様な胃粘膜のつぶつぶした顆粒状の隆起が形成され、鳥肌胃炎として観察されます。

鳥肌胃炎は、ピロリ菌の初感染後に見られる過剰なリンパ組織の免疫応答が原因のため、若い人に見られやすい胃炎です。

鳥肌胃炎があると通常のヘリコバクター・ピロリ菌感染による慢性胃炎よりも胃がんのリスクが60倍以上も高くなると言われています。特に悪性度が高く、正常な胃粘膜の下に浸潤して拡がりやすい未分化型胃がん(いわゆるスキルス型胃がん)の発生母地になりやすいと考えられています。

 

鳥肌胃炎を認めた場合は、胃がんがある可能性が高いため、胃内をしっかりと内視鏡で観察する必要があります。特に早期の未分化型胃がんは見つけづらいことも多く、注意が必要です。

鳥肌胃炎(通常光観察)

鳥肌胃炎(インジゴカルミン特殊染色観察)

 

鳥肌胃炎の原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌感染であるため、ピロリ菌の除菌で治療が可能です。

除菌治療が成功すると、鳥肌様の粘膜の凹凸は徐々に目立たなくなっていき、胃がん発生のリスクは低下しますが、ゼロにはならないため1年に1回の定期的な胃カメラ検査を受ける事が絶対に必要です。

 

これらの胃炎の京都分類で定義されている胃炎の内視鏡所見は、ピロリ菌感染の有無・胃がんリスクを評価する上で、非常に重要な所見です。

私たち消化器内視鏡専門医は、これらの所見を一つずつ丁寧に拾い上げていくことで、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。

 

専門的な難しいお話しですが、私たち消化器内視鏡専門医が、普段どういったところに気をつけながら、検査をしているのかということが少しでも伝われば幸いです。

これらの所見を見落とすこと無く、しっかりと拾い上げて胃カメラ検査時に患者様一人一人のピロリ菌感染診断、ひいては将来の胃がんの発生リスクを推測し、必要な内視鏡検査のフォローアップのタイミングを提案していきます。ご不明な点がありましたら、是非一度、ご相談ください。

 

私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。

ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。

細川 泰三医師

国立鹿児島大学医学部卒業。
麻生飯塚病院、北九州市立医療センター、国立病院機構福岡東医療センターで多数の消化器内視鏡検査・治療に従事。
2020年4月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。