おはようございます。
前回、ピロリ菌感染胃炎の中でもこの内視鏡所見があると、ピロリ菌の現感染(現在も胃にピロリ菌感染が継続している状態)があると考えられる「鳥肌胃炎」についてお話ししました。
今回は、前回同様にピロリ菌感染のある胃に見られやすい胃過形成性ポリープについてお話ししたいと思います。
胃過形成性ポリープは、胃内であればどこの部分にも発生しうるポリープです。
ポリープの大きさや形態は非常に多彩で、多発することもあります。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染により胃粘膜に萎縮が起こると発生しやすいポリープです。
ピロリ菌の除菌治療を行うと、大きさが小さくなったり、消えて無くなることもあるポリープです。
ピロリ菌感染により胃粘膜に炎症が起こり、慢性的に炎症が持続すると、この慢性炎症による粘膜の損傷が修復される過程で粘膜が過剰に再生されてしまうことがあります。
この粘膜の過剰再生の過程で発生するポリープが胃過形成性ポリープと考えられています。
病理組織学的には、腺窩上皮の過形成性変化がメインとなり、粘膜固有層に炎症細胞の浸潤を認める炎症性ポリープの一種です。
胃過形成性ポリープは、ポリープの表面に血管が発達しているため、周囲の正常な胃粘膜と比べて色調は赤く、表面には粘液や白苔の付着を多く認めます。
基本的には良性のポリープです。がん化は多くありませんが、サイズが2cm以上になるとがん化することがあります。
また、ポリープ表面の粘膜が食事や胃酸などで物理的に刺激されると、表面には血管が豊富なため持続的な出血を起こしやすく、鉄欠乏性貧血の原因となることがあります。
また、胃の入り口や出口付近にできた胃過形成ポリープの場合、サイズが大きくなると、食べ物が通過しにくくなり、吐き気や胃もたれなどの症状が出現することがあります。
確定診断には、胃カメラ検査で直接ポリープの形態や表面構造、色調などを観察し、場合によっては、ポリープ表面の組織を一部とって顕微鏡で病理組織学的に調べます。
胃過形成性ポリープは、基本的には良性のポリープですが、サイズが大きくなるとがん化のリスクがあることや出血の原因となることがあるため、定期的に胃カメラ検査でポリープのサイズが大きくなっていないか、表面に凹凸不整などの悪性化を疑う変化が出ていないかをフォローする必要があります。
胃過形成性ポリープを認めた場合は、ピロリ菌感染の有無を調べる検査が必要です。ピロリ菌に感染していれば、除菌治療を行い、その後、定期的に胃カメラ検査を行いフォローアップします。
ポリープサイズが2cm以上ある場合、フォロー中にサイズが急速に大きくなった場合、内視鏡所見や病理組織学検査でがん化が疑われた場合、ポリープ表面から持続的な出血があり貧血の原因となっている場合などは、内視鏡的に切除術(ポリペクトミー)による治療が必要になります。
これらの胃炎の京都分類で定義されている胃炎の内視鏡所見は、ピロリ菌感染の有無・胃がんリスクを評価する上で、非常に重要な所見です。
私たち消化器内視鏡専門医は、これらの所見を一つずつ丁寧に拾い上げていくことで、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。
専門的な難しいお話しですが、私たち消化器内視鏡専門医が、普段どういったところに気をつけながら、検査をしているのかということが少しでも伝われば幸いです。
これらの所見を見落とすこと無く、しっかりと拾い上げて胃カメラ検査時に患者様一人一人のピロリ菌感染診断、ひいては将来の胃がんの発生リスクを推測し、必要な内視鏡検査のフォローアップのタイミングを提案していきます。ご不明な点がありましたら、是非一度、ご相談ください。
私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。
ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。