福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その14 胃炎内視鏡所見8 胃黄色腫について

おはようございます。

 

前回、ピロリ菌感染のある胃に見られやすい胃過形成性ポリープについてお話ししました。

 

今回は、前回同様にピロリ菌感染のある胃に見られやすい胃黄色腫についてお話ししたいと思います。

胃黄色腫は、胃内であればどこの部分にも発生しうる隆起した病変です。

 

内視鏡で見ると、周囲の正常粘膜との境界が明瞭で白色~黄色調の平坦もしくは丈の低い隆起性病変です。

その形は、星芒形から類円形を呈しているものが多く、その表面は細顆粒状の構造を呈しています。

大きさは、多くは数mm大ですが、まれに1cm以上の大きになるものも認めます。

 

図.胃前庭部の黄色腫

春間賢.胃炎の京都分類.日本メディカルセンター,2014より転載

 

 

病理組織学的には、胃の粘膜固有層の表層に細胞質の明るい空胞状の円形細胞が局所的に集まっている像が観察され、脂質を貪食した組織球が集まった物と考えられています。

 

胃黄色腫の正確な発生原因はまだ不明ですが、ヘリコバクター・ピロリ菌感染胃炎やヘリコバクター・ピロリ菌感染の既往のある高度に粘膜萎縮が進行した胃粘膜に認められることが多く、その発生にはピロリ菌が関与していると考えられています。

 

ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌前から胃黄色腫が認められている場合は、除菌治療後もその形態は変化せず、萎縮胃粘膜や胃炎所見が改善しても胃黄色腫は縮小や消失する事は無く、除菌治療前と変わらず残存します。

胃黄色腫自体は、悪性化することは無く、良性ですが、胃がん症例に合併することも多く、胃黄色腫の存在する胃粘膜は、胃がんリスクが高いと考えられています。

 

このため、胃黄色腫を認めた場合は、胃がんの存在を考慮して胃内を念入りに観察する必要があり、問題が無い場合でも胃がんの早期発見のために、定期的に内視鏡検査を受ける必要があります。

 

これらの胃炎の京都分類で定義されている胃炎の内視鏡所見は、ピロリ菌感染の有無・胃がんリスクを評価する上で、非常に重要な所見です。

私たち消化器内視鏡専門医は、これらの所見を一つずつ丁寧に拾い上げていくことで、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。

 

専門的な難しいお話しですが、私たち消化器内視鏡専門医が、普段どういったところに気をつけながら、検査をしているのかということが少しでも伝われば幸いです。

これらの所見を見落とすこと無く、しっかりと拾い上げて胃カメラ検査時に患者様一人一人のピロリ菌感染診断、ひいては将来の胃がんの発生リスクを推測し、必要な内視鏡検査のフォローアップのタイミングを提案していきます。ご不明な点がありましたら、是非一度、ご相談ください。

 

私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。

ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。