おはようございます。
前回は、ピロリ菌の感染診断法のうち尿素呼気試験についてお話ししました。
今回は、迅速ウレアーゼ試験についてお話ししたいと思います。
迅速ウレアーゼ試験は、前回お話しして尿素呼気試験と同じく、ピロリ菌の持つウレアーゼ活性を利用し、ピロリ菌の感染の有無を調べる検査です。
具体的には、ピロリ菌がウレアーゼを分泌し胃液中の尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を産生する性質(ウレアーゼ活性)を利用した検査です。
胃カメラ検査時に採取した胃粘膜組織を尿素とpH指示薬が入った容器に入れると、ピロリ菌がいる場合は、尿素が分解されてアンモニアが生じるため、pHが上昇しpH指示薬の色が変化することで感染の有無が分かります。
尿素呼気試験と同様、ピロリ菌のウレアーゼ活性を検出する方法のため、胃内が酸性環境であることに結果が依存します。
このため、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムチャネル競合型胃酸抑制薬(P-CAB)といった胃酸を抑えることで胃内の酸性環境が変化する薬剤を服用中に検査を行うと、ピロリ菌感染があっても感染が無いという間違った結果が出る偽陰性になることが多く、これらの薬剤を服用している場合は、迅速ウレアーゼ試験を行う前に2週間休薬する必要があります。
また、ピロリ菌感染により胃粘膜の萎縮が高度である場合に、ピロリ菌以外の口腔内細菌が胃内に存在すると、これらの菌のウレアーゼ活性により迅速ウレアーゼ試験が弱陽性となることもあります。高度の胃粘膜萎縮者の除菌治療後に弱陽性が継続する場合は、除菌失敗ではなく、ピロリ菌以外の口腔内細菌が胃内に存在する可能性もあるため、直接菌の存在を顕微鏡で確認する鏡検法などを併用する必要などがあります。
さらに、迅速ウレアーゼ試験の測定キットによっては、長時間経過すると変色してくる場合があるため、検査判定に必要以上に反応時間をとらないようにするなどの注意も必要です。
迅速ウレアーゼ試験は、迅速性に優れ、簡便であり、胃カメラ検査時にピロリ菌感染が疑われた場合に行う検査として実用性が高い検査です。しかし、陽性の診断のためには、生検組織内にある程度の菌量が存在する必要があるため、除菌治療前の検査精度は高くなりますが、除菌治療終了後4週目での効果判定には、推奨されません。
このため、除菌治療終了後4週目での効果判定には、尿素呼気試験などの他の検査方法で行います。
私たち消化器内視鏡専門医は、これらの検査結果を一つずつ丁寧に拾い上げていくことで、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。
私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。
ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。