福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その22 ピロリ菌感染とペプシノゲン

おはようございます。

 

前回までは、ピロリ菌の感染診断法の各検査についてお話してきました。

今回は、日本で用いられている最も一般的な血清胃炎マーカーである血清ペプシノゲンについてお話ししたいと思います。

 

ペプシノゲンとは胃粘膜細胞で産生され、胃液中に分泌されるタンパク質分解酵素であるペプシンの前駆物質です。

ペプシノゲンが胃酸と反応するとタンパク質分解酵素であるペプシンに変換されます。

 

この胃粘膜で産生されるペプシノゲンは、胃内に分泌されるだけでなく、約1%が血液内に移行するため、採血により血清中のペプシノゲンを測定することで胃粘膜で産生されているペプシノゲンの量を測定することが可能です。

 

ピロリ菌感染により胃粘膜に炎症が起こるとペプシノゲンの産生細胞が破壊され、胃内への分泌が障害されるため、一時的に血清中のペプシノゲン値は上昇しますが、ピロリ菌の持続感染により慢性胃炎が進行し、萎縮性胃炎が進行してくると、ペプシノゲンの産生細胞数が減少し、血清ペプシノゲン値は低下します。

 

このため、血清ペプシノゲン値を測定することで、胃粘膜の萎縮の程度を推測することが可能です。

これが血清ペプシノゲンが血清胃炎マーカーと言われる所以です。

血清ペプシノゲン値が低値の場合、「萎縮性胃炎がある=ピロリ菌感染がある」可能性がある、と診断されます。

 

ただし、次のような場合は、血清ペプシノゲン値に影響を及ぼすため、血清ペプシノゲン値で胃粘膜の萎縮の程度が推測出来ません。

1.胃酸分泌抑制薬を内服している

→ペプシノゲン値が上昇する

2.胃の手術後である

→ペプシノゲン値が低下する

3.高度の腎機能障害がある

→ペプシノゲン値が上昇する

 

このような症例では血清ペプシノゲン値は当てになりませんが、多くの場合、胃粘膜の萎縮の程度を推測することが可能となるため、ピロリ菌感染の有無を評価するスクリーニング検査として有用です。

 

血清ペプシノゲン値異常を指摘された場合は、ピロリ菌感染により萎縮性胃炎が進行している可能性があります。その場合は、必ず胃カメラ検査を受けて、しっかりとピロリ菌感染の有無も併せて評価しましょう。

 

私たち消化器内視鏡専門医は、これらの検査結果を一つずつ丁寧に拾い上げていくことで、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。

 

私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。

ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。