福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その23 ABC検診について

おはようございます。

 

前回は、日本で用いられている最も一般的な血清胃炎マーカーである血清ペプシノゲンについてお話ししました。

今回は、血清ペプシノゲンと血中抗ピロリ菌抗体検査を組み合わせることにより、胃カメラ検査やバリウム検査を行うことなく、血液検査で将来的な胃がんリスクを調べる事が出来る胃ABC検診についてお話ししたいと思います。

 

過去の研究で、ピロリ未感染の人に比べて、ピロリ感染者が将来胃癌になるリスクは日本人では10倍以上と報告されています。

また、胃癌患者の90%以上はピロリ菌に感染していたという報告やピロリ菌感染者は80歳までに20人に1人の確率で胃癌になるという衝撃的な報告もあります。

現在、胃がんのほとんどは、ピロリ菌とピロリ菌によって荒らされた胃粘膜(萎縮粘膜)に発生することが分かっています。

 

そこで、「現在、ピロリ菌が胃の中にいるかどうか」と「胃に萎縮粘膜があるかどうか」を調べる事で間接的に将来的な胃がんリスクの予測を試みているのが胃ABC検診です。

 

ABC検診は、「ピロリ菌感染の有無」と「胃の萎縮粘膜の有無」からABCDの4つグループに分けて、それぞれリスク分類しています。

A群が最も胃がんリスクが低く、D群が最も胃がんリスクが高い群となります。

胃がんのリスクは、最もリスクが低いA群に対して、B群が約10倍、C群が20倍、D群が70倍高くなるという報告があります。

自分がどのグループに属するかを予め把握しておき、どれぐらいの頻度で胃カメラ検査を受ければ良いのかを決めるというのは大切です。

 

とはいえ、ABC検診は、あくまでも自分の胃粘膜が、将来、胃がんを発生しやすい粘膜かどうかを予測する簡易検査でしかありません。

A群だから絶対に胃がんにならないというものではないため、A群であっても、やはり40歳以降になれば、年1回程度、胃カメラ検査を受ける事をお勧め致します。

胃がんで命を取られないようにするために最も大切なことは、胃内視鏡検査(胃カメラ)を定期に受け、胃がんを早期発見することです。

自分は、最も胃がんになるリスクが低いA群に属しているから大丈夫と考え、定期の胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けないということは絶対にしないで下さい。

 

胃がんは早期発見できれば、内視鏡切除で治せる時代です。早期発見の為にも定期的な胃内視鏡検査(胃カメラ)受診をお勧め致します。

 

私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。

ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。