福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その24 ピロリ菌に関するトリビア ピロリ菌の遺伝子型と胃がんリスク

おはようございます。

 

前回は、胃カメラ検査やバリウム検査を行うことなく、血液検査で将来的な胃がんリスクを調べる事が出来る胃ABC検診についてお話ししました。

今回は、ピロリ菌に関するトリビアとして、ピロリ菌の種類の違いによる毒性の違いについてお話ししたいと思います。

 

ヘリコバクター・ピロリ菌は、グラム陰性菌というタイプの細菌です。

グラム陰性菌は、感染する宿主(ヒト)に対してエフェクタータンパク質というタンパク質を分泌し、宿主(ヒト)細胞のタンパク質の機能を制御したり阻害することで、細菌の宿主(ヒト)細胞への侵入や細胞内運動などの感染現象を誘導し易くします。

 

近年の研究で、ヘリコバクター・ピロリ菌が分泌するエフェクタータンパク質のうち、CagAタンパク質が宿主細胞に移行するとがんタンパク質として機能することが分かってきました。

ヘリコバクター・ピロリ菌には、その遺伝子型によりいくつかの種類があり、現時点では7タイプ存在すると考えられています。

また、ピロリ菌には、この遺伝子型による違いがあるだけでなく、それぞれの遺伝子型においても、がんタンパク質として作用するCagAタンパク質を分泌する菌としない菌があることも分かってきました。

さらに、CagAタンパク質を分泌する菌であってもCagAタンパク質の種類によっても胃がんのリスクが異なることが分かってきました。

この胃がんリスクが高いCagAをEast-Asian CagA、胃がんリスクがそこまで高くないCagAをWestern CagAといいます。

 

ややこしい話になってきましたが、がんタンパク質であるCagAタンパク質を分泌するピロリ菌は分泌しないものより胃がんリスクが高く、さらにCagAを分泌するピロリ菌のなかでもEast-Asian CagA typeはWestern CagA typeよりも胃がんリスクが高いということです。

 

日本人の感染しているヘリコバクター・ピロリ菌は、そのほとんどがCagA陽性菌で、その95%が胃がんリスクの高いEast-Asian typeと報告されています。

 

実は、地球上で発生している胃がんの60%は、日本、韓国、中国の3カ国に集中しています。

皆さん、知っていましたか?驚きですね!!

 

この理由は、この3カ国で感染しているヘリコバクター・ピロリ菌がEast-Asian Cag A typeのピロリ菌であることが原因です。もちろん、他国でもピロリ菌の感染はありますが、CagA陰性菌であったり、陽性菌でもEast-Asian CagAではなくWestern Cag A typeのため、胃がんリスクが高く無いというのがその理由です。

これは非常に衝撃的な事実です。

 

このように日本人の感染しているヘリコバクター・ピロリ菌は胃がんの高リスク菌ですが、胃がんは早期発見できれば、内視鏡切除で治せる時代です。早期発見の為にも定期的な胃内視鏡検査(胃カメラ)受診をお勧め致します。

 

私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。

ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。