福岡天神内視鏡クリニックブログ

「空腹」こそ最強のクスリ、なのか?

おはようございます。医師の秋山です。

GW中に本を1日1冊読もうと決めて実践しました。

その中で、「「空腹」こそ最強のクスリ」という本を読みました。非常に勉強になりましたが、考えさせられる内容でしたのでここで解説したいと思います。

 

著者は埼玉県で開業されている糖尿病専門医の青木厚先生です。

自らの経験を元に執筆されており、すでに37万部も売れているベストセラーです。

 

この本の内容を一言で表すと

「1日のうちで16時間絶食すると、健康になります」です。

残りの8時間は基本的に何を食べてもいいですよ、とのことでした。

 

「16時間って結構長くない?」と思われた方も多いかと思いますが、眠っている時間を有効に活用すれば可能です。

例えば、20時までに夕食を済ませ、そこから絶食を開始し、翌日昼の12時まで絶食すると16時間の絶食が完成します。

つまり、朝食を抜けば良いということになりますね。

 

この16時間絶食を行う最大の目的は、「過剰な糖質を制限する」ことと「オートファジーの活性化」です。

オートファジーとは、細胞内の老廃物や有害物質を回収し、新しい細胞に作り替えるという意味になります。

 

人間は、食後12時間程度で飢餓状態となり、脂肪を分解してエネルギーに変えるケトン体代謝になります。

→その後、食後16時間程度でオートファジーが活性化され、細胞が新しく生まれ変わるということです。

 

ふむふむなるほど、という内容でしたが疑問点もいくつかあります。

 

①過剰な糖質を制限するのに16時間も絶食する必要があるのか?

糖質の取りすぎは確かに体には良くないです。

ただ、ダイエット目的という視点から見ると、16時間絶食のダイエットと普通の糖質制限ダイエットには効果に差はない、という論文があります。

「Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss」N Engl J Med 2022; 386:1495-1504

つまり、糖質を制限するという点においては、わざわざ16時間もの絶食をする必要がなく、1日3食の食事で糖質を食べすぎなければ問題ない、ということになります。

 

②オートファジーの活性化は、16時間も絶食する必要があるのか?

16時間の絶食は正直きついですよね。ですので、前日の夕食の食事量を少なめ(腹七〜八分)にすれば、12時間よりももっと早く飢餓状態になり、オートファジーの活性化も早まるのではないか?と考えてしまいます。

例えば、19時に少なめの夕食を摂り、翌朝7時に朝食を摂れば、12時間の絶食時間となりますが、これでもオートファジーは活性化されないのでしょうか・・・どうなんでしょうね。

16時間絶食が終了した後に食事すると、血糖値は爆上がりするので、私はそちらの方が心配です。

ちなみにオートファジーですが、もともと常に体内で起こっている現象です。

ですので、飢餓状態の時だけでなく、食べるもの(グルコサミンやカテキンなど)で活性化されたり、適度な運動や良質な睡眠でもオートファジーは活性化されています。

 

③16時間絶食により、働きづくめの腸を休めることができると解説されているが、そもそも腸を休める必要があるのか?

私は大学病院でICU(集中治療室)の患者さんを受け持っていた時、ICUの救命救急医の先生は、ご飯が食べることができない重症の患者さんでもできるだけ早く腸管栄養を開始していました。

理由としては、絶食期間が長くなると、小腸が使われないため次第に小腸の絨毛が萎縮して、消化吸収能力の低下や免疫力の低下をきたすからです。

16時間絶食したところで小腸の絨毛が萎縮することはほとんどないでしょうが、個人的には「腸を休める必要」はないのではないかと思ってます。

私は「腸は使える時に使おう」という考え方です。腸はもともと24時間働けるように作られています。

もちろん、暴飲暴食ばかりしていると腸は疲れてしまいますが、規則正しい食事をしていれば全く問題ないです。

 

いかがでしょうか。

もちろん、16時間絶食で健康になった方も沢山いらっしゃいますので、この16時間絶食はエビデンスのある一つの方法だと思います。

結論としては、たくさん本を読んでたくさん勉強して、自分の体に合った健康法を見つけて、それを実践するのがベストですね。

それでは今週もがんばりましょう。クリニックでお待ちしております。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。