おはようございます。医師の秋山です。
2023年6月15日〜16日に、奈良県で日本肝臓学会総会が開催されました。
この学会の中で、
「血液検査でALTが30U/Lを超えていたら、精密検査を受けましょう」
という趣旨の「奈良宣言2023」が公表されました。
このような宣言がされたのは、50年以上の歴史がある肝臓学会でも初めてとのことです。
学会は特設サイトを設けたり、YouTubeでも啓蒙していますが、まだまだあまり浸透していない印象です。ドクターですら知らない人が多いと思います。
健康診断や病院で受けることができる血液検査では、ALTという肝臓の数値は45U/L以下で正常となっている施設が多いです。当院の血液検査も、ALTは45U/L以下で正常となっています。
このため、ALTが30IU/Lを超えていても、データ上は正常範囲内であるため、異常値として指摘されることはありません。
しかしながら健康的な成人の15%でALTが30を超えているというデータがあり、この中に潜在的な慢性肝疾患が存在しているとのことでした。
慢性肝疾患は放置すると肝硬変へと進行し、肝臓がんができてしまうことがある恐ろしい病気です。
肝臓がんはじわじわと増えており、現在、がん死亡数の第5位が肝臓がんです。
皆さん、今一度自分の最新の血液検査のデータを見てみましょう。健康診断を受けていれば、肝臓の数値であるALTは必ず測定されています。
そして、ALTが31U/L以上の数値だけど特に精密検査も受けずに放置されていたら、まずはかかりつけ医に相談することをお勧めします。
慢性肝疾患は、きちんとした精密検査が必要です。かかりつけ医を受診して然るべき専門施設への紹介をしてもらうと良いのではないかと思います。
日本肝臓学会総会のサイトにて「奈良宣言」の詳しい内容がアップされていますので下記URLからご覧ください。
https://site2.convention.co.jp/jsh59/nara_sengen/
当院でも血液検査を行う機会がありますので、ALT31U/L以上の患者さんには積極的にエコー検査を勧めたいと思います。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。