みなさん、こんにちは
萱嶋です。
自然の猛威を痛感する夏となりました。
見えないものへの畏敬の念を忘れてはいけません。
日々、自然や人々に感謝しなければなりません。
自然や人を大切にする人こそ、人格者と思います。
さて、皆さんは、遺伝性の大腸がんを知っていますか。
本当の意味での遺伝性大腸がんのひとつにリンチ症候群があります。
遺伝性大腸がんのひとつである、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸がん:Hereditary Non-Polyposis Colorectal Cancer:HNPCC)は、大腸がんや子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、腎盂・尿管がんなどの発症リスクが高まる疾患です
全大腸がんの2-5%程度がリンチ症候群と考えられ、最も頻度が高い遺伝性腫瘍の一つとされています。
リンチ症候群の特徴
リンチ症候群は、大腸がんの若年発症、異時性あるいは同時性の大腸多発がんおよび多臓器がんの発症が特徴です。
リンチ症候群の平均発症年齢は43-45歳と考えられています。
しかし、50歳以下で進行大腸がんと診断された場合、リンチ症候群を念頭においておく必要があります。
リンチ症候群の遺伝子変異を持つ人では、約80%が生涯の間に大腸がんを発症すると報告されています。
また、女性では、20-60%が生涯に子宮体がんを発症するとされています。
リンチ症候群の遺伝形式など
リンチ症候群の原因は、生殖細胞系列でのミスマッチ修復遺伝子(MSH2・MLH1・MSH6・PMS1・PMS2)の変異です。
リンチ症候群は常染色体優性遺伝形式を示し、性別に関係なく、子供に50%の確率で遺伝します。
リンチ症候群と診断するうえで、家族歴の聴取は極めて重要です。
家族歴の聴取で、リンチ症候群かどうか、概ね予測できます。
リンチ症候群の検査・治療
リンチ症候群では、発症前の大腸全摘出術は一般に行われていませんが、大腸がんを発症した際には多発がんの発症を視野に入れ、大腸亜全摘出術を検討することもあります。
リンチ症候群の方は、高率に大腸がんを発症します。
私も、リンチ症候群の方を診療した経験がありますが、腫瘍の増殖速度は通常の大腸がんを遥かに凌駕します。
大腸内視鏡検査の間隔について、一定の見解はありませんが、私は6ヶ月毎の検査を推奨します。
また、胃がん・小腸がんの併発の可能性もあるため、総合的な検査・診療が重要です。
ご家族に大腸がんや子宮体がんの方が多いという方は、遺伝性の大腸がんの可能性があります。症状がなくとも、早めに大腸内視鏡検査を受けましょう。