福岡天神内視鏡クリニックブログ

遺伝性の大腸がんとは②

みなさん、こんにちは

萱嶋です。

 

暑い日が続きます。

動物も熱中症で亡くなっているそうです。

暑さに負けないようにというより、暑さから逃げて生きることも大事ですね。

皆様、くれぐれも無理せず生活してください。

 

さて、今回も遺伝性の大腸がんの続きです。

 

 

前回はリンチ症候群についてお話ししました。

今回は、家族性大腸腺腫症についてお話しします。

 

遺伝性大腸がんのひとつである、家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)は、大腸の中にたくさんのポリープができ(100個以上の場合が多い)、やがてそれががん化することにより、大腸がんを発症する病気です。

一般の大腸がんに比べて、若い年齢で大腸がんになるのが特徴です。

この病気の場合、10~20歳でポリープが出来始め、20代半ばで約10%、40歳で約50%、60歳で90%の方が大腸がんを発症します。

また、胃や十二指腸にもポリープが複数できることがあり、十二指腸がんもできやすいことが知られています。

常染色体優性遺伝の形式により遺伝します(親から子に2分の1の確率で受け継がれます)

 

【症状】

無症状であることが多いですが、血便、下痢、腹痛などの症状が出ることもあります。

甲状腺腫(甲状腺癌)、骨腫、軟部腫瘍(類表皮嚢胞やデスモイド腫瘍など)を合併し、症状が出ることがあります。

埋没歯、過剰歯、含歯性嚢胞、歯牙腫瘍などの歯牙の異常を呈することがあります。

 

【検査】

血液検査:大部分の症例では異常を認めませんが、大腸がんを合併すると高率に出血をきたして貧血となります。

全大腸内視鏡検査大腸に多数(通常100個以上)の腺腫性ポリープを認めます。

大腸腺腫の数により、腺腫を数百個認める非密生型、5千個以上認める密生型、100個未満の減衰型に分類されます。

上部消化管内視鏡検査:約半数の症例で多数の胃底腺ポリープを認めます。

また、胃前庭部にはしばしば腺腫を認めます)。十二指腸の観察では高率に腺腫を認めます。

遺伝子検査:末梢血液を用いた遺伝子検査により、原因遺伝子であるAPCの変異を認めます。

小腸カプセル内視鏡:十二指腸以外にも空腸および回腸にも腺腫ができる可能性が高いです。

 

【治療】
FAPと診断された場合、あるいは血縁者にFAP患者がいて遺伝子の変異を受け継いでいる可能性が考えられる場合には、10代から大腸内視鏡検査による検診を開始し、定期的にポリープの経過観察を行います。そして大腸がんが発生する前に予防的に手術を行い、大腸がんを防ぐのが一般的です。

また、胃や十二指腸にもポリープやがんが発生する可能性もあるため、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)も1年程度毎に行い、必要に応じて治療を行っていきます。

 

ご家族にFAPと診断された方がいる際は、早めに全大腸内視鏡検査を受けましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。