おはようございます。医師の秋山です。
さて、今回は下剤についての興味深い研究結果を解説します。
慢性的に便秘があり、下剤を服用している方って多いのではないかと思います。当院でも便秘を主訴に外来受診される方は多いです。
このような下剤を長期服用していると、認知症のリスクが上がるという研究報告がありました。
Association Between Regular Laxative Use and Incident Dementia in UK Biobank Participants.Neurology. 2023 Apr 18;100(16);e1702-e1711.
認知症のない40〜69歳の成人50万2,229人(平均年齢56.5歳、女性54.4%)が対象で、このうち、4週間以上の下剤内服歴がある方が1万8,235人でした。
約10年の追跡期間中に認知症を発症した人の割合は、下剤を常用していない人では0.4%でしたが、下剤を常用していた人では1.3%という結果であり、統計学的な優位差も出ています。
しかも、複数の下剤を服用している人や、酸化マグネシウムを代表とした浸透圧下剤を服用している人が特にリスクが高くなるとのことです。
怖いですね。酸化マグネシウムは便秘治療をしている人のほとんどが服用しています。
それでは、なぜ下剤を服用すると認知症のリスクがあがるんでしょう?
論文によると、下剤の服用により腸内細菌叢が変化することで、腸から脳への神経伝達が影響を受けたり、あるいは脳に影響を及ぼす可能性のある腸内毒素の産生が増えたりするのではないかと考察していました。
この考察に関しては「なるほどな」と思うところがあります。
確かに、腸内環境が悪くなると、いわゆる「腸漏れ」が発生し、腸から有害物質が脳に流れ込みます。これが原因で脳内に悪いタンパク質が蓄積し、認知症を発症すると言われていますから。
下剤は便利です。飲めば便秘はほぼ解消します。しかしながらそれに甘えてしまい、普段の生活習慣を蔑ろにして、便秘薬を長期服用していくというスパイラルに陥ってしまうケースが非常に多いです。
下剤を飲んで排便習慣がついてきたら、今度は下剤を中止できるように、普段の生活習慣を見直していきましょう。
きちんと水分を摂取し、食物繊維を摂っていれば、半年くらいすれば下剤なしで便が出るようになります。
以上、下剤と認知症についての話でした。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。