みなさんこんにちは。
萱嶋です。
最近、日に日に寒さが増しています。
インフルエンザの流行拡大もあり、体調管理にはご留意ください。
さて、皆さんは「食道アカラシア」という疾患を聞いたことがありますか。
あまりなじみのない疾患かもしれません。
胸のつかえ感や飲み込みにくさがあるけど、長い間治らない。
という方は、この疾患の可能性があるかもしれません。
内視鏡を行っていても、時に見過ごされることがある疾患です。
食道アカラシアは
ギリシア語で『弛緩することがない、a(否定)- chalasia(噴門弛緩)』という意味であり、
食道の蠕動運動(前進を伴う収縮運動)が障害され、下部食道括約筋(胃に近い部分の食道の筋肉)が十分に開かなくなり、食物の通過障害や食道の拡張がおこる病気です。
また、アカラシアは食道がんの危険因子の1つと考えられています。
一般的には20~40歳の発症が多いと言われています。
頻度は10万人あたりに1人といわれており、まれな病気です。
<症状>
食道胃接合部の通りが悪いことによる食後の胸のつかえ感で、病状が進行すると嘔吐や体重減少を伴うこともあります。
その症状は、固形物、流動物のどちらでもみられ、ストレスや早食い、冷たい食物等で増悪することが特徴とされています。
また、食道炎を合併すると胸痛や胸やけも伴うようになります。
嘔吐により食物が誤って気管に入ってしまうと、それが原因で誤嚥性肺炎をおこすこともあります。
<原因>
下部食道括約筋は、一定の圧力で胃から胃酸を含む内容物が食道に逆流しないようになっています。
また、飲み込むときは、唾液を含む食物を食道から胃へ進ませるため一時的に弛緩します。
下部食道括約筋のこの運動は、脳からの信号でコントロールされています。この信号に何らかの障害がおきているものと考えられています。
<検査>
食道X線造影法
食道や下部食道括約筋の状態を観察します。
内視鏡検査
食道の拡張や屈曲の程度を観察し、下部食道や胃噴門部の粘膜に異常がないか調べます。
食道がんの合併頻度が高いため、がんの有無も調べます。
下部食道括約筋の弛緩不全により、通常はみられない食道内に食べ物や液体物がみられます。
食道内圧測定検査
診断を確定するための精密検査です。
鼻からセンサーがついたカテーテルを挿入し、喉から食道、胃の内圧を連続的に測定し、食道の運動異常を診断します。
<治療>
1.薬物療法
下部食道括約筋の圧力を下げる薬を初期にだけ行います。
2. 内視鏡的治療
内視鏡下食道バルーン拡張術は、下部食道括約筋部をバルーンで広げて筋肉の一部を裂き、食道括約部の通過をよくする方法です。
また、内視鏡的筋層切開術 (Per-oral Endoscopic Myotomy;POEM(ポエム))があり、良好な成績が報告されています。
3. 外科的治療
食道アカラシアに対する手術では、ヘラードール(Heller-Dor)術が主流となっています。
まとめ
胸のつかえ感や、食べものの飲み込みにくさが長い間治らない方は、「食道アカラシア」かもしれません。
内視鏡を行っていても、時に見過ごされることがある疾患です。
内視鏡診断に精通したクリニックで相談しましょう。