福岡天神内視鏡クリニックブログ

メッケル憩室とは

みなさんこんにちは。

萱嶋です。

 

先週は、急激に寒さが増しました。

福岡でも雹が観測されました。

体調管理にはご留意ください。

 

さて、先日歌手のKANさんがメッケル憩室がんで亡くなりました。

メッケル憩室に発生するがんは、きわめてまれです。

そもそも、メッケル憩室とは何なのでしょうか。

 

まず、憩室とは、消化管壁の一部が外側に突出し、嚢状(のうじょう・袋状の形のこと)になった状態をいいます。

憩室は食道、胃、十二指腸、小腸、大腸のいずれにもできますが、大腸にできることが一番多い病気です。

 

 

【メッケル憩室とは】

小腸の壁の一部が袋状になって外側に突き出たものをいいます。

消化管に関連した形態の異常としてはもっとも頻度の高いものであり、2%前後の人がもっているといわれています。

その多くは無症状ですが、なかには腹痛や出血などをきたし、必要になることもある病気です。

 

【原因】

妊娠初期の段階で、赤ちゃんの小腸は卵黄のうと呼ばれる体の外の空間とつながっています。卵黄のうと小腸をつなぐため、卵黄管と呼ばれる組織がへその緒の中に存在していますが、通常は妊娠7週頃までに卵黄管は閉鎖します。

しかし、卵黄管がうまく閉鎖せず残ったときにメッケル憩室が発生します。

メッケル憩室の粘膜には、胃や膵臓の組織の一部が認められることもあります。本来存在するべき部位以外にこれらの組織が認められることから、異所性組織と呼ばれることもあります。

 

【症状】

メッケル憩室が存在しても多くの方は無症状で経過します。

そのため、腹部の手術をした際に、偶然メッケル憩室が発見されることもあります。

メッケル憩室には胃の粘膜が存在していることがあり、粘膜に潰瘍が形成されることがあります。この場合は、メッケル憩室からの出血で、発見されることがあります。

出血以外に、腸閉塞、憩室炎、穿孔などで発症することがあります。これらの場合は、嘔吐や腹痛、発熱などの症状が現れます。

 

【診断】

メッケル憩室の診断は、シンチグラフィ、腸管動脈造影、小腸内視鏡、試験的開腹術などを組み合わせて行います。

メッケル憩室は上腸間膜動脈と呼ばれる動脈で血液の供給を受けています。出血をきたしている場合には、この動脈を介してメッケル憩室から出血していることが造影検査で同定できることもあります。

メッケル憩室の診断は必ずしも容易ではありません。

メッケル憩室が疑われるにもかかわらず、種々の検査で確定できない場合、お腹を実際に開けて直接病変部位を観察する試験的開腹術が行われることもあります。

 

【治療】

メッケル憩室の治療は手術が基本です。

炎症や出血による影響がメッケル憩室のみに限るようであれば、メッケル憩室を切除します。他の小腸にも影響が起きているときには、腸管切除・吻合術が必要になることもあります。

 

メッケル憩室について概説しました。

そもそもメッケル憩室を診断することが難しいうえに、がんと診断するのはさらに困難です。

記事が皆さんの知識の参考になれば幸いです。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。