福岡天神内視鏡クリニックブログ

胃薬内服中に起こる下痢

みなさんこんにちは。

萱嶋です。

 

12月になりました。

1年はあっという間に終わります。

人生は限りあるものです。

少しの時間も無駄にはできませんね。

 

皆さんは、胃薬の長期内服によって引き起こされる下痢があることを知っていますでしょうか。

今回は、Collagenous colitisという病気について概説します。

 

Collagenous colitis

慢性の水様性下痢と大腸上皮直下の膠原線維帯の肥厚を特徴とする疾患です。

 

 

【疫学】
50歳以降の女性に好発し、男女比は約1:7です。

欧米では慢性下痢の原因疾患として比較的頻度の高い疾患で、地域差があるものの10万人あたりの年間発症率は0.8~7.2人とされています。

 

【原因】

原因は不明な点が多いですが、遺伝的要因、自己免疫、薬剤、腸管感染(カンピロバクター、エルシニア、Clostridium difficileなど)、胆汁代謝異常、食物アレルギーなど多因子の関与が示唆されていいます。

特に注目されているのは薬剤であり、非ステロイド性消炎鎮痛薬(non-steroidal anti-inflammatory drug;NSAID)、アスピリン、チクロピジン,ランソプラゾール(lansoprazole;LPZ)、アカルボース、ラニチジン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor;SSRI)などが報告されています。

特に重要視されているのはNSAIDプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor;PPI)です。

私の経験上は、ランソプラゾールやタケプロンを長期服用されている高齢者に多いように感じます。

 

【症状】

主な症状は慢性下痢(再発性、間欠的)であり、徐々に発症することが多いですが、急性に発症することも少なくありません。夜間の下痢、便失禁もあります。

下痢以外の症状としては腹痛、体重減少、関節痛などがみられます。

 

【診断】

内視鏡検査を行います。

正常、あるいは発赤、浮腫、毛細血管の増生、粘膜の顆粒状変化などの軽微な所見にとどまることが知られているため、内視鏡所見のみで本症と診断することは不可能です。

薬剤内服歴からcollagenous colitisを疑い、生検組織検査を行うことが重要です。

生検で、上皮直下の膠原線維帯が確認され、垂直方向に10μm以上の厚さがあれば確定診断となります。

 

【治療】

まず内服歴を詳細に聴取し、薬剤との関連が疑われる場合は被疑薬(NSAIDs、アスピリン、ランソプラゾールやチクロピジンなど)を中止します。

カフェイン、アルコール、乳製品の過剰摂取は下痢の増悪因子となるため控えたほうがよいです。

 

まとめ

ランソプラゾールやタケプロンを長期服用されている方で下痢が続いている方は、Collagenous colitisかもしれません。

内視鏡診断に精通したクリニックを受診しましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。