福岡天神内視鏡クリニックブログ

漢方薬で腹痛?

みなさんこんにちは。

萱嶋です。

 

3月になりました。

春ですが、まだ寒い日が続きます。

 

漢方の長期服用によっておこる腹痛があります。

その一つが「腸間膜静脈硬化症」です。

さて、みなさんは「腸間膜静脈硬化症」を知っていますか。

 

 

【疾患概念】

腸間膜静脈硬化症は、大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰化が生じ、血流が障害される病気です。

無症状の場合もありますが、腹痛(右側)、下痢、悪心・嘔吐が症状としてみられ、重いものではイレウス(腸閉塞)を起こすこともあります。

近年サンシシを含有する漢方薬の長期服用が原因の一つとして注目されています。

 

【疫学】

若年者から高齢者に幅広く発症(平均60歳代)

男性:女性=1:1.8

 

【原因】
漢方薬、特にサンシシがその原因の一つとされています。

サンシシ中のゲニポシドが大腸の腸内細菌によって加水分解され、生成されたゲニピンが腸間膜の静脈の壁の線維性肥厚・石灰化を引き起こすことで、 血流が悪くなり、腸管の壁のむくみ、線維化、石灰化、腸管の狭窄を起こすと考えられています。

 

【症状】

主に腹痛(右側)、下痢、悪心・嘔吐が認められますが、無症状(便潜血陽性を含む)の症例もあります。また、症状の重いものではイレウスを呈する場合もあります。

 

【診断】

全大腸内視鏡検査

盲腸や上行結腸を中心とした粘膜の色調変化(暗紫色、青銅色など)、浮腫、血管透見消失、半月襞の腫大、伸展不良、 管腔狭小、びらん・潰瘍などがみられます。

レントゲンやCT検査

盲腸や上行結腸を中心とした大腸壁あるいは腸間膜静脈に沿った線状,点状の石灰化がみられます。

病理組織検査では、静脈壁の著明な線維性肥厚と石灰化、粘膜固有層の著明な膠原線維の血管周囲性沈着、粘膜下層の高度の線維化などがみられます。

種々の検査を総合して、「腸間膜静脈硬化症」と診断されます。

 

【治療】

サンシシを含む漢方薬を中止することです。

サンシシを含む漢方薬には

黄連解毒湯
竜胆瀉肝湯
加味逍遙散
柴胡清肝湯
荊芥連翹湯
清肺湯五淋散
辛夷清肺湯
温清飲
茵蔯蒿湯
清上防風湯
加味帰脾湯
防風通聖散
生薬サンシシ

があります。

その中でも

➀加味逍遙散、②黄連解毒湯、③茵蔯蒿湯

が「腸間膜静脈硬化症」の原因となっていることが多いです。

 

「腸間膜静脈硬化症」について概説しました。

➀加味逍遙散、②黄連解毒湯、③茵蔯蒿湯を長年服用されている方、注意が必要です。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。