おはようございます。
前回、ヘリコバクター・ピロリ菌感染は、胃がんの原因の90%以上を占めることや胃・十二指腸潰瘍、胃過形成ポリープ、胃MALTリンパ腫、鉄欠乏性貧血、特発性血小板減少性紫斑病などの原因にもなることをお話しました。
ピロリ菌の長期感染が胃がんの原因となることは明らかですが、ピロリ菌の感染状況により胃がんの発生リスクは大きく異なると言われています。
そこで、今回はピロリ菌の感染状況の分類とそれぞれの胃がん発生のリスクについてお話ししたいと思います。
ピロリ菌の感染状況は、①未感染、②現感染、③既感染に分類するのが大切です。
この3つの感染状況は、それぞれ胃がん発生のリスクは大きく異なるため、まずは現在の胃の状況がどの状況であるのかを把握することが最も大切です。
既感染は、さらに1)除菌治療成功後、2)偶然除菌後(自然除菌後)、3)自然消滅後に分類されます。
それぞれの胃がん発生リスクは次のように言われています。
①未感染
これまでに一度もピロリ菌に感染したことが無い状態。
ほとんど胃がんは発生しないと考えられています。
しかし、未感染でも低分化型腺がんなどの悪性度の高い胃がんは稀に発生することがあります。
②現感染
まさに今現在、ピロリ菌感染が継続している状態。
胃がん発生のリスクが高く、未感染の人と比べると胃がん発生リスクは15倍以上高い状態と考えられています。
海外では現感染者の胃がんの発生リスクは20倍以上高いと報告されています。
このため、除菌治療を行い胃がんの発生リスクを下げる必要があります。
③既感染
過去にピロリ菌感染を起こしていたが、現在はピロリ菌の感染が無くなっている状態。
ピロリ菌感染がどういい経緯で無くなったのかによってさらに次の3つに分類されます。
過去にピロリ菌感染をしていたという点では、いずれも同じですが、感染が無くなるまでの経緯の違いで胃がん発生のリスクが大きく異なります。
1)除菌治療成功後
検査でピロリ菌感染があることが分かり、抗生剤服用による除菌治療を行い、除菌が成功し、菌がいなくなった状態。
除菌治療成功後は胃がんリスクが0.54倍に低下すると報告されています。
しかし、除菌治療前の胃がん発生リスクは15倍以上もあるため、除菌後も約10倍程度の胃がん発生リスクが残ってしまいます。
このため、除菌治療後も胃がんが出来る可能性は高いため、年に1回は胃カメラ検査を受けることが大切です。
2)偶然除菌後(自然除菌後)
ピロリ菌の除菌治療は受けていないが、他の病気の治療で抗生剤を服用した際に偶然除菌された状態。
いつの時点でピロリ感染が無くなったか不明なため、正確な胃がん発生のリスクは分からないが、未感染より高く、現感染より低いと考えられます。
3)自然消滅後
ピロリ菌の感染が長期間におよび強い慢性持続炎症が胃に継続した結果、胃炎の影響が胃全体に強くおよんで胃粘膜の萎縮や胃粘膜が腸上皮に置き換わる腸上皮化生が進んだ状態。
慢性胃炎の影響が強くなり胃がこの状態になると、胃粘膜がピロリ菌の生息に不利な状況となるため、ピロリ菌が自然に消滅します。
大発生したイナゴがエサを食べ尽くし、エサが無くなり死んでしまうのと同じイメージです。
ピロリ菌はいませんが、胃粘膜の状態が非常に悪いため、胃がん発生のリスクは最も高い状態です。
まずは、これらのピロリ菌の感染状況を知るための検査として、胃カメラ検査を受けることが最も大切です。
胃カメラ検査で将来の胃がん発生のリスクをしっかり把握いた上で、定期的に検査を受け、胃がんを早期発見するのが、胃がんで命を取られないために必要です。
胃癌は早期発見・早期治療ができれば、根治が目指せる疾患です。
10年後20年後の安心のためにも是非一度検査を受けることをお勧め致します。
お気軽にご相談ください。