おはようございます。医師の秋山です。
先日患者さんが、「先生、面白い本を見つけましたよ」と、1冊の本を持ってきてくれました。
それは、
”お腹の弱い人の胃腸トラブル” 江田証先生 著
という本でした。
江田先生は、栃木県の無医地区で毎日200人以上の患者さんを診察している内科医です。
これまで多くの患者さんの胃腸の悩みに真剣に向き合い、治療をしてきた先生のようです。
さっそく開いてみると、興味深い内容が盛りだくさんで、あっという間に最後まで読んでしまいました。
「”おなかの弱い人”の胃腸トラブルは、じつは治せる」
がテーマです。具体的には、
〇 女性に多い「胃もたれ・食べれない」は、”機能性ディスペプシア”と言い、胃が弱いとあきらめてしまうではなく、きちんと治していけること
「胃潰瘍や胃がんのような異常がないのに、いつも胃が調子悪い」のは、胃が弱いからではなく、きちんとした理由があったのです。
「胃のふくらみ・胃壁の感受性・ストレス耐性」といった要素が症状を左右します。
その病態を認知し、適切な内服薬(六君子湯とアコチアミド)を補助として用いることで大部分の患者さんの症状が改善します。
ガスターやタケプロンといった胃酸分泌抑制薬は、この胃が弱い患者さんには必要がないということになります。
〇 男性に多い「さしこむ腹痛・急な下痢」は、”過敏性腸症候群”と言い、ストレスへの上手な対応(認知行動療法やリラクゼーション)や低FODMAP食といった食事を意識して腸内環境を整えることで、きちんと治していけること
が書かれていました。
2つに共通しているのは、「まず胃腸が悪くなる病態(理由)をしっかり認知することが大切」だということです。
自分の行動や心理を認知し、意識してしかるべき行動をとっていく学問を ”行動認知学” と言います。
この行動認知学は、慢性疼痛の分野に新たな光を差し込む分野になるかもしれません。
行動認知学では、短期的な目標と長期的な目標を設定します。
目標達成を繰り返すことで成功報酬が得られ、脳の側坐核という部位を刺激することができる、と最近報告されました。
側坐核の血流が良くなると、側坐核から痛みや苦しみを和らげるドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといったホルモンがたくさん出るようになります。
こうして痛みや不快感が改善していくのです。
医師は薬は出せるが、行動認知学を知らない。
心理学者は行動認知学を実践しているが、薬は出せない。
医療と行動認知学が融合すれば、これまで苦しんできた痛みや不快感を取り除けるかもしれません。
江田先生は、医療に行動認知学を自然に(もしくは意図的かもしれません)取り入れているため、患者さんの症状改善率が驚くほど高くなっているのだと感じました。
この本は、これまで日本人で1000万~1500万人の方たちが苦しんできた、「治らない」と信じられてきた胃腸トラブルを突破する導きの書であると思いました。
みなさまもぜひ読んでみてください。おススメです(^^♪