おはようございます。医師の秋山です。
クリニックに来てくれる患者さんから、「いつもブログ見てますよ」と言われることが多くなりました。
皆さんにブログを見てもらえて嬉しいです。これを励みにこれからもいろいろな記事を気軽に書いていきたいと思います。
今回は検診採血項目の見方の第2回目です。
前回はコレステロールまで書きました。今回はその続きです。
〇 総ビリルビン(T-bil)、AST(GOT)・ALT(GPT)、γGTP
総ビリルビンは、ほとんどの方が基準値範囲内だと思いますが、時折、1~2台と高値(H)の方がおられます。
ビリルビンが高値でも、ASTやALTが高くなければ、心配いりません。
「体質性黄疸」といって、人口の約8%の方は異常がなくても上昇することがあります。
今後、今以上に値が上がることもほとんどなく、治療の必要もないので、毎年経過を見ているだけで大丈夫です。
AST(GOT)とALT(GPT)は肝機能評価のメインであり、注意してみています。
男性でこれらの値が50前後くらいまで上昇している方は、多くの方が脂肪肝です。
お酒を飲まなくても、肥満傾向の方は、AST(GOT)とALT(GPT)が少し上昇しています。
これらの値は少しくらい高くても大丈夫か、というとあまり良くありません。
AST(GOT)とALT(GPT)は、どれだけ肝細胞が壊れているかを示しています。
基準値の範囲内でも壊れていますが、毎日肝細胞は再生されるので大丈夫です。
基準値の範囲を超えると、肝細胞の再生が追いつかなくなります。
特にAST(GOT)とALT(GPT)が100を超える場合は、要注意です。
100を超えてくると、全身倦怠感が出現することが多くなります。
肝機能の値が高い方は、お酒と肥満に気をつけましょう。
〇 γ‐GTP
これも「お酒」の値で有名です。
肝機能障害のうち特に胆汁のうっ滞を示しているので、高い場合は放っておかない方が無難です。
どうやってγ-GTPを改善するかですが、お酒を飲んでいる人は止めてみて、きちんと下がるかをみてみます。
これで下がればお酒が原因だったということなので、お酒を減らした方が良いでしょう。
何でお酒を控えなければいけないのか、と悲しくなりますが、肝臓がお酒に強くないのだから仕方がないと考えた方がよさそうです。
ところで、「大酒飲みなのにγ-GTPが全く上がらない人」がいます。
うらやましいと思うかもしれませんが、過量の飲酒はやはり生活習慣病(心筋梗塞や脳卒中)、がんのリスクを上昇させます。
お酒は身体をいたわって適量で楽しみましょう!!
〇 Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(クロール)
元素記号みたいですが、身体の中のミネラルバランスを表しています。
身体はホメオスタシスが上手く働いていますので、大部分の方が基準値範囲内だと思います。
NaとClは連動しており、ホルモンの異常がなければ高値・低値にはなりません。
一方、カリウムは高くなると心臓に負担がかかり、不整脈の原因になりますので、5以上になりましたら注意してみていく必要があります。
ただ細い針で採血した場合や採血に時間がかかった場合に、血液が溶血を起こしてカリウムが上昇していることもありますので、何回かの採血結果を照らし合わせてみるとよいでしょう。
〇 空腹時血糖値(FBS)
空腹時の血糖値が110を超えると高値となり、検診で「要精密検査」となることが増えました。
みなさん心配して来院しますが、すぐに糖尿病という訳ではないので心配しすぎないようにしてください。
糖尿病の定義は、
1.空腹時血糖値が2回126以上
2.空腹時血糖値が1回126以上 + HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)6.5%以上
なので、これを満たさなければ糖尿病の診断にはならないということになります。
110を一度超えても心配ないことが多いので、逃げ腰にならずに積極的に採血再検査を受けることをおススメします。
もし126を超えているときでも、糖尿病ならば早く治療を始めた方が良いと思います。
現実から目をそむけたくもなりますが、糖尿病であるかどうかをはっきりさせることが大切ですから、思い切って病院に行ってみましょう。
〇 梅毒
最近地味に増えてきています。
福岡県は全国平均より罹患率が高くなっています。
性感染症は、正しい知識がなければ蔓延してしまいます。
そして正しい知識がなければ、「無意味な差別を生む」原因にもなります。
検診で梅毒を測定してくれる施設も増えてきていますので、一度検査してみることをおすすめします。
そして性感染症が蔓延させないこと、正しい知識を啓蒙していくこと、これは私達医療機関の重要な役目だと思っています。
次回は検診採血最終回:貧血や白血球、血小板についてと検診の上手な受け方・使い方について書きたいと思います。
良かったら、また見てください。