福岡天神内視鏡クリニックブログ

大腸カメラ前の下剤の楽な飲み方

おはようございます。医師の秋山です。

今回は「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)前の下剤の楽な飲み方」についてお話しします。

2019年現在、「大腸がん」は女性のがん死因の第1位となっています。

男性においては現在、大腸がんはがん死因の第3位ですが、2025年には女性と同じく第1位となることが予想されています。

このことから、大腸がんで亡くなる方が急増してくることは間違いありません。

 

大腸がんで亡くなる人の多くは、生まれて初めて受けた大腸カメラで進行した大腸がんと診断される方がほとんどです。

大腸がんは「前がん病変」と言われる大腸ポリープが癌化してできます。

このため、大腸カメラを若い年齢で受け、大腸がんの前段階である「ポリープ」があった場合、その時点で内視鏡切除してしまえば癌化を防ぐことができます。

もし早期大腸がんが見つかったとしても、初期の粘膜内癌であれば内視鏡で切除することで容易に完治できます。

また進行大腸がんが発見されたとしても、腹膜播種や転移がなければ手術療法と抗がん剤療法で完治が可能です。

このことから40歳くらいまでに1度大腸カメラを受け、以降は定期的な検査を受ければ、大腸がんでの死亡は防ぐことが可能です。

大腸がんは進行がんになるまで、ほとんど自覚症状がありません。

 

また、がん検診として便潜血検査がありますが、大腸がんがあっても、必ずしも便潜血検査が陽性になるとは限りません。

早期大腸がんの場合、多くは出血を起こさないため、便潜血検査が陰性であることが起こりえます。

腫瘍に便が擦れていなければ、原理上便潜血検査は陽性になりません。

便が腫瘍の間をスルリと抜けてしまえば、便潜血は陰性になります。

 

 

ところで日々診察していると多くの患者さんは「検査そのものよりも検査前の下剤を飲むことが苦痛」であると感じている人がとても多い印象です。

そこで「当院を受診しなくてもできる、大腸内視鏡前下剤の楽な飲み方」について紹介します。

これは、「大腸内視鏡前の下剤を飲むことが苦痛である理由を考える」とおのずと答えが見えてきます。

理由①:下剤が不味い

理由②:下剤を飲む量が多すぎる

理由③:指示された下剤量を飲んでも、便が出ない

の3つに大別されると思います。

① これについては病院やクリニックが採用している下剤によります(数種類あります)ので、飲みやすい下剤がないか主治医の先生に相談してみてください。

ちなみに当院では横浜本院のスタッフが下剤の飲み比べをして一番飲みやすかったものを採用しています。

現在は他社の下剤で色々と味を工夫されているものもありますが、一般的に誰もが飲みやすいと感じる下剤は、上記の写真のものです(なお、当院と販売会社における利益相反はありません)。

 

② 下剤量は、本来誰もが一律ではありません。

私が考える下剤量を規定する因子としては大きく2つあり、「体重」と「便秘の度合い」です。

割腹のよい男性で便秘の人と、華奢で便秘のない女性が一律2リットルで内服するというのは、不思議な話だと思いませんか。

前者では2リットル飲んだ方がよいでしょうし、男性であればゴクゴクと飲み進められるでしょう。

逆に普段水分を摂取することに慣れていない女性は、1リットルを飲むことだけでも大変です。

主治医としては「各個人に合わせた下剤量を設定することは問診に時間をかけることになる」ので、手間がかかるために一律2リットルにしているという現状があります。

実際、華奢で便秘のない女性ならば半分の1リットルの内服で十分なことがほとんどです。

これも主治医の先生に相談してみてください(ただ先生に嫌われないように注意してください)。

最近は1リットルの下剤量で済む種類のものも出ており、私も試したことがありますが、同じ量の水をチェイサーとして飲む必要があります(結局2リットルになります)。

1リットルの下剤だけ飲むと、脱水による頭痛が起きやすい方がいますので当院では採用していません(私個人も頭痛が起きましたので、使用していません)。

 

③ 2リットル飲んでも便が出ない人がいます。

ここが少し難しいところであり、主治医が一律2リットルの下剤としていることもうなずけます。

結局病院で浣腸をしてもらうことになり、ますます次回に大腸カメラを受けたくなくなるでしょう。

それでも2リットル飲まなくてよい裏ワザを紹介します。

前もって軽い便秘薬を飲んでおくのです。

もともと便秘があり、市販の大腸刺激性便秘薬を飲むことが多い方は、1週間前から毎日便秘薬を飲んでおくことをお勧めします。

検査前だからと便秘薬を止めて病院の指示だけに従うと、当日に便が出らず苦しい思いをすることになります。

また、普段便秘はないが当日便がきちんと出るか不安に思われている方も多いでしょう。

「不安」は副交感神経を著しく低下させるのでますます腸の動きが悪くなり、当日に便が出ないという予想通りの結果になることが多いのです。

これはマーフィーの法則です。

それならば1週間前から前もって下準備をすることで、当日便が出ないというトラブルを防ぐことが可能になります。

何より不安が取れますので、安心して検査当日を迎えることができるので、ますます便が出やすい環境になります。

具体的な方法ですが、

強ミヤリサン(ビオフェルミンSでもよいです)と酸化マグネシウムをドラッグストアで買ってきます。

そして決められた用法で、1日2回で1週間前から内服します。

これでおそらく1週間前から毎日便がやや緩めの状態となり、検査当日を迎えることができます。

これでも便の反応がないようでしたら、軽い便秘薬(武田漢方胃腸薬やクラシエなどの麻子仁丸という軽い便秘薬)を併用すると良いでしょう。

 

まとめ②

大腸前下剤を飲むことが苦痛である・心配である人は、規定量よりも不味くない味の下剤がないか、少ない量で内服できないかを主治医に相談してみる(嫌われない程度に)。

不安であれば、1週間前からあらかじめ軽い便秘薬・整腸剤を飲んで安心して当日を迎える。

 

以上になります。これで大腸カメラ前の下剤についての壁は突破できると思います。

ぜひ試してみてください。

なぜ私が「自宅でできる便秘外来」や「下剤の楽な飲み方」を公表しているのかと他のクリニックの先生に聞かれたことがありました。

秘密にしておけばよいのに、という意味のようです。

私は「1人でも多くの人ががんで苦しまないように」という平島医師の理念に共感して、福岡天神内視鏡クリニックで仕事を始めました。

遠方のために福岡まで受診できない方も多く、実は福岡の人だけでなく大阪や東京をはじめ日本全国の方がブログをみてくださっていることが分かりました。

その方々のお役に立てるようなブログを、これからも気楽に書いていきたいと思います。

ご参照頂けると幸いです。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。