福岡天神内視鏡クリニックブログ

漢方薬は本当に効くのですか?

おはようございます。医師の秋山です。

福岡は、早くも梅雨入りしました。ジメジメしてきましたので、今日はスッキリする?話題を。

 

「漢方薬って、本当に効くのですか?」という質問をよく受けますが、

「体質や体型、これまでの症状の様子から、適切な処方になっていれば効く可能性が高いですよ」

とお答えしています。

私は帝京大学の新見正則先生の漢方の本が大好きで、よく読んでいます。

新見先生は、「林先生の今でしょ」というテレビ番組に時々出演しています。

漢方だけでなくカゼやインフルエンザの予防・対処法など、誰にでもわかりやすく説明してくださるので、いつも参考にしています。

 

大切なことは、「漢方は、あくまで西洋薬の補完的な存在である」ことです。

漢方だけで治そう、と思うのは医療の原則ではありません。

漢方薬は、「西洋薬で病気に対して処方がなされ、それでも症状が改善しないときの補完的な治療」という位置づけです。

ですから、西洋薬で効果がなかったから漢方薬に切り替えるのではなく、西洋薬に加えていくが、正しい漢方薬の使い方です。

このように書くと、「何だ、漢方薬って大して効かないのかな?」と思うかもしれません。

もともと医師同士で話していると、漢方薬は「大して効かないもの・まやかし・怪しいもの」として考えている方々が少なくないように感じます。

私は「漢方薬は患者さんの多くの悩みに向き合うための選択肢を増やしてくれるもの」と考えています。

 

漢方には、治療の得意分野があります。

カゼ  ・・・「カゼ薬って効かないじゃん」と思っている方に、おススメです。

カゼの引きはじめ、ここはどうしても会社を休めない、咳が慢性化してツライなど。

カゼに対しては引き始めから治りにくくなったものまで幅広く、漢方がかなり使えます。

 

更年期障害 ・・・メジャーどころで3種類あります。上手く体質と漢方が合えば、長く苦しんでいた更年期障害を軽くすることができます。

 

不定愁訴 ・・・「何となく調子悪い」「何となく疲労感が取れない」といった、もう治しようがない、と悩んでいる場合に、漢方が効く場合があります。

あれこれ処方を試しながら話を聞いていくと、ふと症状のきっかけとなる出来事が思い出されたりして、治療の突破口になることもあります。

 

数ある漢方の中で、有用な漢方をいくつかご紹介します。

これは「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方です。

胃けいれんや、足がつったときに効果があります。

私は、昨年のトライアスロン時に持参しました。

止まりにくい ”しゃっくり” にも効果があります。

漢方の中でも「即効性がある」という面で、とても興味深い漢方です。

 

これは柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)といいます。

いつも血の気が多くて、イライラしている人に効果的です。

牡蠣(といっても殻ですが)はカルシウムが含まれており、イライラを鎮めてくれます。

不眠症高血圧、そしてストレスからくる薄毛にも効果があり、用途が広く使いやすい漢方です。

家族のために毎日頑張って働くお父さんに、井戸端会議に付き合わないといけない奥様方に、おススメです。

 

私が漢方を使い始めた頃は、効果が思ったより出ないことが多かった印象です。

だいたい半分くらいの患者さんに効果があり、残りの半分の患者さんには効果がありませんでした。

でも試行錯誤で使用しているうちに、漢方薬で効果が出てくる患者さんがとても多くなりました。

1つの漢方が効果がなくても、「ではこちらを試してみましょうか」といろいろと患者さんと話しながら、診療を重ねていきます。

すると、話しているうちにいつの間にか症状が改善していることもよくあります。

漢方薬は、主役の西洋薬で効果をもっと上げたい場合に併用して使用すると、非常に効果が高い。

が新見先生の漢方薬に対する考え方で、とても参考になります。

西洋薬のように論理的に症状が説明できなくとも、「何となく・いつの間にか」体調がよくなって、主となる症状の改善が期待できます。

 

漢方だけで症状を治そうと気負いすぎるとうまくいかないので、良い意味で力を抜いて処方しています。

患者さんにも力を抜いて飲んでいただけるように、お話ししています。

食前・食間服用が漢方の原則ですが、飲み忘れたら、食後でも飲んでいいですよ、と話します。

 

これは半夏厚朴湯(半夏厚朴湯)という漢方です。

のどのあたりに何か違和感がある、いつものどがつかえた感じがして不快感が取れない方におススメです。

のどの症状は、気になりだすとますます止まらなくなります。

咳ばらいをするとますますのどが詰まってしまうこともあるので、一度こちらを試してみる価値はあります。

 

西洋薬は疾患をピンポイントで治すのに対して、漢方薬は症状を総合的に改善していきます。

ピンポイントで良くならなかった(診断が当たらなかった)場合は、漢方薬の出番となります。

 

「漢方薬は身体に合っているかを、どのように判断するのでしょうか?」

「漢方薬はいつまで続けたらよいのでしょうか?」

基本的に、飲み始めて症状がすぐに良くならなくとも、「何となく体調が良い気がする」場合は、その漢方が身体に合っていると判断してよいと思います。

体調が良くなるようでしたら、しばらく続けていくと症状が改善してくる可能性が高いので、主治医の先生と話しながら漢方を続けていくのがよいと思います。

逆に、「症状が全くよくならない、もしくは逆に体調が悪くなる」ようでしたら、漢方が身体に合っていない可能性が高いので、主治医に相談して止めたほうが良いと思います。

 

”良薬は口に苦し” といいますが、漢方薬の場合はそうとは限らないのも面白いところです。

”飲みやすい” と思った場合は、効くことが多く、”美味しくない” と思った場合は効かないことが多いのが特徴です。

「漢方は副作用がない」と思われている方も多いと思います。

しかし漢方エキスはさまざまな種類の生薬の組み合わせでできていますので、むしろ副作用には注意しないといけません。

身体に合わないな、と感じたら、早めに相談した方がよいでしょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。