福岡天神内視鏡クリニックブログ

ここまでわかる検診採血! ~検診採血項目の深読み解説①

おはようございます。医師の秋山です。

検診シーズンでもあるため、今回は検診採血をテーマにしたいと思います。

採血の項目を詳しく見たことはありますか?

「検診の採血結果は説明もないし、英語ばっかりで分からない・・・」方も多いかもしれません。

そこで、今回は検診採血項目の意義・評価を解説します!

ご自身の検診採血結果を片手に読んでみてください。

実はこの採血項目から、検診センターでは教えてもらえない身体の様々な仕組みが分かります

次からの採血が、「ただの痛い検査」から「結果が楽しみな検査」に変わる、かもしれません。

まず左上の項目から行きます。

〇 総蛋白(TP)

全身の栄養状態を表します。

アルブミン(Alb)という項目も、同様に全身の栄養状態を表しています。

ほとんどの方は、基準値の範囲内にあると思います。

基準値より低い場合は、かなり長期間食事が摂れていないという目安になります。

逆に総蛋白が高値になっていることがあります。

Point: この場合の多くは、「脱水」です。

”夜8時以降絶食 ” といった検診の注意事項を遵守すると、総蛋白が脱水のために(血が濃ゆくなり)高く出ることがあります。

 

〇 尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)

本来は腎機能を表しています。

Point: 尿素窒素は総蛋白と同様に栄養状態も表しています(医師の間でもあまり知られていません)。

尿素窒素は低い方が要注意です。

栄養、特にタンパク質摂取が十分でない可能性があります。

これが分かりお肉やお魚・卵といったタンパク質をしっかり摂るように意識すれば、なんとなく続いていた倦怠感が改善することが良くあります。

歳を重ねると、クレアチニンは徐々に高くなります(腎機能が落ちてきます)

少ない薬物量でも効果が長引きやすくなるのは、腎機能が徐々に落ちてくるからです。

最近の時折見られる興味深い傾向として、「若い男性のクレアチニン上昇」があります。

この方は、いろいろと話を聞いていくとたいていは筋トレをしているか、プロテインを飲んでいるところに行きつきます。

筋トレをして男性ホルモン(テストステロン)を出し、心身ともに健康に生活することはとても大切です。

果たしてこのクレアチニン上昇が将来の腎機能障害に影響するのか、そして寿命に影響するのか、まだ答えは出ていません。

 

〇 尿酸(UA)

昔は「尿酸=ビール・プリン体」と言われていましたが、今は尿酸値の上昇は主に「肥満」と「お酒」が原因と言われています。

「痛風がなくても尿酸値は正常に保った方がいいのか、痛風が起きなければ放っていいのか」

といった議論がありますが、いずれにせよ8.0は超えない方がよいと思います。

高尿酸血症は、将来の腎機能障害につながっていきます。

痛風になったことがなくても尿酸値が高くならないように、注意をしていきましょう。

尿酸値を改善するためには、直接ビールを控える必要はなく、お酒は適度に楽しみ、食べても体重が増えないようにしていくとよいと思います。

適度にお酒を飲み、食べても体重が増えないことは不可能に思えますが、腸内環境を改善し食べ方・飲み方を工夫するとそれほど努力が要らなくなります。

気になる方はご相談ください。いつかブログにも書いていきたいと思います。

 

 

〇 コレステロール

「コレステロールが高いのです」とよく相談を受けます。

でも、それほど心配しなくて良い場合も多くあります。

① 総コレステロール(T-chol)が高い場合

「総コレステロール」は、悪玉コレステロールと善玉コレステロールと中性脂肪の合計です。

細かく言うと、次の計算式で概算できます。

総コレステロール = 悪玉コレステロール + 善玉コレステロール + 中性脂肪 ÷ 5

上記の場合、

148 + 83 + 91 ÷ 5 = 249.2

ですので、総コレステロールは基準値を大幅にオーバーしています。

お気づきの方もいるかと思いますが、この方は善玉コレステロールが多いので、総コレステロールも多くなっているのです。

コレステロールは善玉と悪玉のバランスが大切ですので、総コレステロール値が高くても慌てなくてよいということになります。

 

② 悪玉コレステロール(LDL-C)が高い場合

「上記の検診者はそもそも悪玉コレステロールが高いじゃないか」、と気になると思います。

コレステロール値は、140を超えたら検診で引っかかります。

先生によっては、「悪玉が140超えたらすぐにお薬」、という場合もあります。

私は悪玉コレステロールは多少高いくらいの方が元気ハツラツに過ごしている、というイメージがあります。

実際に、コレステロールは人体の細胞を形作る(細胞膜といいます)大切な成分なのです。

私が以前勤務していた病院で、コレステロール値がかなり高い方にスタチン系という高脂血症のお薬を開始(おそらく100人くらいいました)しました。

すると、約4分の1の患者さんで”「体がだるくなった」という全身倦怠感 ”が出現したのです。

お薬の添付文書には、これほどの高い頻度で全身倦怠感が出現することは書いていませんので、正直驚きました。

でも、それだけコレステロールは身体の健康を保つ大切な役割を担っているのだと思っています。

目標は「コレステロールを下げること」ではなく、「脳卒中や心筋梗塞・狭心症といった生活習慣病を防ぎ、充実した生活を送ること」です。

そのためには、各人が持っている病気に合わせてコレステロールを最適な値にコントロールすればよい、ということになります。

”コレステロール薬” は必要な方にはきっちりと使用し、必要のない方には無駄に投与し続けないことを原則にしています。

 

③ 中性脂肪(TG)が高い場合

中性脂肪が上昇する一番の原因は、「お酒の飲みすぎ」と「肥満」です。

中性脂肪は食事やお酒の影響を強く受けますので、「食事や飲酒を少し工夫する(決して我慢ではありません)」だけで改善することも多くあります。

ただ中性脂肪が500を超えている場合は、食生活の影響だけではなく遺伝的な要因も考えられるため、主治医に相談する方がよいでしょう。

 

肝機能、電解質、血糖値、白血球や貧血といった項目についても、深読みすると興味深いことが数多くあります。

よかったら、次回も見てください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。