福岡天神内視鏡クリニックブログ

胃のポリープと大腸のポリープについて(再掲) ~取った方がいいのか取らなくていいのか

おはようございます、医師の秋山です。

診察時に「他院でポリープがあると言われたのに、取ってくれなかった」「他院でポリープがあるのに、2、3年後の検査で見たらいいと言われた」と、不安やモヤモヤした思いをもって受診される方が沢山おられます。

そこで、今回は胃と大腸のポリープについてできる限り分かりやすく解説したいと思います。

お時間がありましたら、「胃と大腸ポリープについて2019年度改訂版」もご覧になってください。

胃のポリープと大腸ポリープについて

〇 胃ポリープについて

胃ポリープは大きく4つに分かれます。1つずつ見ていきましょう。

1.胃底腺ポリープ

一番多く見られポリープで非腫瘍性ポリープに分類されます。組織検査をすると、Group1(間違いなく良性)と診断されます。

このポリープができる原因は、いまだにはっきりしていませんが、女性にできていることが多いので、女性ホルモン(エストロゲン)が影響しているのではないかと言われています。また、年齢が高くなり女性ホルモンが減ってくると、小さくなったり自然に消失したりします。

女性ホルモンは男性でも産生される(本当です)ため、男性でも胃底腺ポリープができている人はいます。

またピロリ菌のいないきれいな胃粘膜の人にできやすい、という特徴もあります。

いずれにせよ、「胃底腺ポリープは腫瘍ではないため、そのまま治療しなくてよい」、ということになります。

「胃のポリープがあるのに治療してくれなかった」「胃のポリープがあると言われたのに、そのままでよいと言われた」というのは、この胃底腺ポリープだった可能性があります。

 

2.過形成性ポリープ

これも非腫瘍性ポリープです。組織検査はGroup1(間違いなく良性)です。これも基本的には切除する必要はありません。ただ、胃底腺ポリープと違うところは、大きくなるとがん化したり、出血の原因となることがあることです。2cm以上に成長すると、数パーセントの確率でがん化すると言われています。

ピロリ菌がいる胃の粘膜の人にできやすいポリープです。

除菌治療が成功すると、ポリープが小さくなったり中には消えてしまうこともあります。

胃底腺ポリープと比較すると、「経過観察はしていく必要がありますが、慌てて切除する必要はない」ものと捉えるとよいと思います。

 

3.胃腺腫

これは腫瘍性ポリープに分類されます。組織検査ではGroup3(がんではないが、腫瘍性)となります。

形は白くて平坦なものが多く地味ですが、前がん段階のポリープ・腫瘍であり、がん化する前に切除した方が良いことが多いと思います。

ただ、必ずがん化するわけではないので、年齢によっては慎重に経過観察をして必要あれば切除をするという考え方もあります。

 

4.胃がん

これは切除しなければ治癒しません。組織検査はGroup5(間違いなく悪性腫瘍)となります。

放っておくと多臓器に浸潤・転移しますので、治療が必要になります。

 

〇 大腸ポリープについて

つぎに大腸ポリープについてです。大きく3つに分類されます。

1.腺腫(腫瘍性ポリープ)

大きく成長するまでに年単位かかることが多いですが、放っておくといずれ大腸がんになる可能性があるポリープです。組織検査はGroup3(腫瘍性ポリープ)です。

クリニックや病院の方針によっては、”小さな腺腫(5mm以下)は取らない” ことがあります

ここがみなさんが疑問に思うところだと思います。

腫瘍性ポリープが体内にあるのに、「取らなくてよい」「2~3年後に取りましょう」と言われてしまいます。

「じゃあどうしたらよいの?」と不安になります。

医療者側は、「数年たっても、まずがん化するほど大きくはなっていないだろう」と考えています。

でも、患者さんは「ポリープをほったらかしにされた」と思いますから、不安感を持つこともあるでしょう。

さまざまな意見がありますが、私は早急に切除する必要がないといわれる腫瘍性ポリープでも、次に大腸内視鏡検査の組織検査を受ける時間やタイミングが誰にでもあるわけではないので、見つけたときに切除するようにしています。

 

2.過形成性ポリープ・炎症性ポリープ(非腫瘍性ポリープ)

基本的には放っておいても、がん化することは非常に少ないタイプのポリープです。

組織検査はGroup1(非腫瘍性ポリープ)です。

ただし、大きな過形成性ポリープは、ごくまれにがん化することがあると報告されています。

先ほどの腺腫(腫瘍性ポリープ)と内視鏡観察上区別がとても難しいことが時々あります。

 

3.大腸がん

組織検査はGroup5(間違いなく悪性)です。

これは早急に切除をして治療する必要があります。

 

まとめ

1.胃ポリープ:切除しなくてよいポリープがほとんどです。

ポリープと聞くとイメージが悪いですが、胃の場合は心配いらないことがほとんどです。

 

2.大腸ポリープ:切除が必要なポリープ(腺腫)と切除しなくてよいポリープ(過形成性ポリープ・炎症性ポリープ)があります。

腺腫でも小さなポリープの場合は、切除しない病院・クリニックがあります

 

本題に戻ります。

どうしてみなさんが、「ポリープを取ってくれなかった」と、不安やモヤモヤした思いをもって過ごすことになるのでしょうか?

本来は、「ポリープがある」と説明をした時点で医療者側が、どの種類のポリープなのかを説明しなければなりません。そして特にポリープを切除しなかった場合、切除しないで良い理由もしくは経過観察でよい理由をきちんとお話しする必要があります。

「ポリープ」という言葉が、どれだけ患者さんを不安にさせるか。

私達医療者側と患者さんとの間で、「ポリープ」という言葉の意味に乖離が存在しています。

ポリープに対する認識が医療者側と患者さん側で一致すれば、みなさんが次回の胃カメラ・大腸内視鏡検査まで安心して生活できると思います。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。