福岡天神内視鏡クリニックブログ

目に見えない疾患の「見える化」計画(大腸カメラ編)

医師の秋山です。

前回は胃カメラで、目に見えない疾患である機能性ディスペプシアの「胃の知覚過敏」と「胃の動きの悪さ」に気づく方法を紹介しました。

今回は、大腸カメラで目に見えない疾患の「見える化」を紹介したいと思います。

今回の疾患は、「過敏性腸症候群」です。

過敏性腸症候群は、大腸カメラなどの検査を行っても症状(下痢や腹満感、腹痛など)の原因となる異常が見つからないにも関わらず、繰り返し腸の症状を訴える病気をいいます。

機能性ディスペプシアの、腸バージョンといったイメージです。

過敏性腸症候群は潰瘍やがんといった器質的疾患を「認めない」ことが定義の前提になりますので、大腸カメラをしても異常のない綺麗な腸粘膜をしています。

私たちは大腸カメラをするとき、腸の動きを緩やかにするお薬を注射します。

この注射は大腸の入り口である盲腸部に到達しやすくすることと、大腸ポリープを見逃さないようにするためです。

一般の人では、この注射で腸の動きが緩やかになります。

ところが、過敏性腸症候群の方は注射をしても腸の蠕動運動がおさまらないことがあるのです。

スコープを口側から肛門側に「押し出そう押し出そう」と動きます。

「この腸内容物を早く押し出そうとする力が強いこと」が過敏性腸症候群の病態になります。

私たちは「腸の蠕動が他の人よりも強いな」と感づいてはいても、あまり患者さんに話すことはありません。

胃の知覚過敏と同じで、これは「カメラ検査者の主観」になるのですが、そのまま伝えると患者さん自身は納得されるのではないかと思います。

過敏性腸症候群は機能性ディスペプシアと同じで、原因が分からないものに「不安」を感じていて、それが疾患の治りにくさに輪をかけています。

「このような原因で下痢や腹痛、腹満感が出ているのだな」というものが分かるだけでも、症状の改善につながるのではないかと考えています。

過敏性腸症候群の原因検索と症状改善に、大腸カメラが役に立つということを紹介してみました。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。