おはようございます。
今回は逆流性食道炎シリーズの第18回です。
これまで多くの患者さんを診察してきた経験上、逆流性食道炎が良くならない方の多くは、食道裂孔ヘルニアがある印象です。
私達の体の内臓は、「肺や心臓などが入っている部分(胸腔)」と「胃や腸、肝臓などが入っている部分(腹腔)」にわけて収納されています。
この胸腔と腹腔は横隔膜と呼ばれる膜状の筋肉で仕切られていますが、横隔膜には胸腔と腹腔をまたいで存在する血管や食道が通るための穴が空いています。このうち、食道が通る穴を「食道裂孔」といいます。
食道裂孔は、ちょうど食道と胃のつながり目である食道胃接合部に存在し、下部食道括約筋とともに食道と胃のつなぎ目を締め付けることで、胃酸などの胃内容物が食道に逆流するのを防ぐ働きもしています。
しかし、何らかの原因で、この食道裂孔部がゆるむと、本来、横隔膜より下の腹腔内に存在すべき胃の一部が横隔膜より上の胸腔内に飛び出してしまうことがあります。
これを食道裂孔ヘルニアといいます。ヘルニアとは、臓器が体内の本来あるべき位置から脱出してしまった状態のことを表す医学用語です。
生まれつき、食道裂孔ヘルニアが存在するケースもありますが、その多くは加齢や生活習慣などが原因で起こります。
加齢により筋肉や結合組織が弱くなっても食道裂孔部にゆるみが生じますが、肥満やアルコール摂取により内臓脂肪が増加し、腹腔内圧が高まることでもゆるみが生じます。
近年、食生活の欧米化や肥満の増加により増加傾向です。
このため、横隔膜を鍛えると、食道胃接合部をゆるめたり締め付けたりする下部食道括約筋の本来の機能を保ち、正常に働くようになるだけでなく、食道裂孔ヘルニアも改善させ、食道への胃酸逆流を防ぐことが出来るようになると考えられます。
でも、体の奥にある横隔膜はどのように鍛えれば良いのでしょうか?
横隔膜を鍛える最も簡単な方法は、呼吸法です。
通常、空気を吸い込むときには肺が拡張して横隔膜は収縮するため下がり、空気を吐くときには肺が収縮して横隔膜は弛緩するため上がっています。
このため、横隔膜を大きく動かすことができる呼吸法を意識して行うと、横隔膜を刺激して鍛えることが出来るようになります。
オススメは大きく息を吸いながらお腹を膨らませ、ゆっくりと息を吐きながらお腹を凹ませる腹式呼吸です。
過去に食道裂孔ヘルニアや便秘を改善させる生活習慣改善の一つとして、腹式呼吸をお勧めしました。
腹式呼吸のススメ – 福岡天神内視鏡クリニックブログ (fukuoka-tenjin-naishikyo.com)
具体的な腹式呼吸のやり方もお話ししています。
腹式呼吸のやり方 – 福岡天神内視鏡クリニックブログ (fukuoka-tenjin-naishikyo.com)
参考にしてみてください。
また、大きく息を吸いながらお腹を凹ませ、ゆっくりと息を吐きながらお腹を膨らませる逆腹式呼吸も有効です。
いずれも即効性はありませんが、横隔膜の筋トレと思って毎日継続すると必ず効果が出てきます。
横隔膜の筋トレで逆流性食道炎を起こしにくい身体を手に入れましょう!!
症状でお悩みの場合は、是非一度、ご相談ください。