おはようございます。医師の秋山です。
昨日書いた便秘改善方法の続きです。
今回と前回のまとめたものを載せていますので、こちらもご覧ください。
始めに、昨日のおさらいをします。
1.長期投資として、整腸剤の少量内服を地道に継続すること
2.短期投資として、4つのエクササイズを就寝前に行うこと
昨日は4つのエクササイズのうち、初めの ”1つ「の」の字マッサージ” まで書きました。
本日は、残りの3つのエクササイズです。
全てのエクササイズは、30秒ずつです。
もちろんそれ以上長くしていただいても構いませんが、無理なく継続するためには合計で2分間くらいがちょうどよいと思います。
2 膝を抱えるストレッチ(ガス抜きのヨガ)
膝を抱えて、お腹に近づけるように10秒間ストレッチします。
後頭部を少し浮かせた状態がベストですが、無理のない程度で行えば十分です。
今度は、反対の膝で行います。
最後に両ひざを抱えます。
3つ合わせて30秒です。
背中や腰が伸びてくるのが実感できると思います。腰痛予防・改善にも効果的です。
これを行うと、インナーマッスルの一つである「腸腰筋」がストレッチされ、腹部全体の血流改善が望めます。
お腹の血流が良くなると、腸の働きが活発になり、便秘改善につながっていきます。
朝起きた時に、驚くくらいお腹の張りが取れていることでしょう。
3 鼠径部をさする
鼠径部とは股のことです。Vの字になっている股間をV字に沿って下から上へ強めにこすり上げます。
この体操のメリットは、「大腸のねじれの整復」です。
便秘の方の大腸は、大抵長くなっています。
「便秘だから腸が長いのか、腸が長いから便秘なのか」
”卵が先か、鶏が先か” のような話になってしまいますが、とにかく腸が長いのです。
そして靱帯で固定されていないS状結腸(お尻から入って20~40㎝くらいまでの大腸)がいくらでも伸びて、最終的にはねじれます。
特に痩せている華奢な女性は、長くなった大腸が蛇のようにとぐろを巻いて骨盤内にはまり込んでいます。
これだけ大腸が長くてねじれてしまうと、便が出ないのもうなずけます。
物理的に便が出なくなっているのです。
腸の長い方の大腸カメラをしますと、腸が長くねじれているので、挿入が難しくなります。
うまく挿入しないと、一番奥の盲腸部までたどり着けません。
大腸カメラを受ける患者さんも、苦痛を伴ってしまい、
「大腸カメラなんて、2度と受けたくない!」
となってしまいます。
私たちのクリニックでは丁寧な内視鏡操作を行いますので、少しずつ少しずつ伸びている腸を畳みながらねじれを解消して挿入していきます。
これが「苦しくない無痛内視鏡検査」の特徴、秘密になります。
大腸カメラ検査後に
「便秘が治ってしまった」
方がときどきいますが、それはねじれていた大腸が一度整復されるからです。
でも、大腸が長いこと自体は変わりないので、固定されていないS状結腸はまたねじれていきます。
ねじれることがクセになっているのです。
そこでこの鼠径部をさするマッサージを毎日していただくと、S状結腸のねじれがクルリと整復されます。
ねじれたら戻す、ねじれたら戻すの繰り返しをすることで、解剖の教科書にかいてあるような、シンプルな大腸の形を維持できます。
実はこのエクササイズだけで、便秘が改善する方もたくさんいます。
4 ツボ
便通改善のツボがあります。
いわゆる「足三里」のツボです。
場所は、両ひざの一番下から4本指下に下がった窪みにあります。
いろいろと触っていると、気持ちよく感じる凹みのある部分が分かりますので探してみましょう。
本当に便秘がひどい方は、少し触っただけでも驚くくらい「痛がります」。
まるでテレビ番組のようです。
それだけ、全身の血流が滞っている証拠です。
足三里のツボは、江戸時代に東海道五十三次を行うようなよく歩く人たちが、毎日疲れをいやすために押していたといいます。
脚の疲れをとるだけでなく、全身の血流がよくなりますので、胃腸特に便秘の改善への効果が高いことが実証されています。
このツボ押しは、体調が悪くて便秘になっている方への効果が絶大です。
両膝で30秒行いましょう。この足三里は就寝前でなくても構いません。
少しの隙間時間があれば、いつでもどこでもできます。
他の3つは、外でやっていると、変な人に思われかねませんのでご注意ください。
これらの4つのエクササイズを各30秒ずつ、計2分間で終了します。
終わったら、すぐに寝てしまいましょう。熟睡できて、体調がよくなります。
次の日はいつもよりも早めに目が覚めて、スッキリしていますので、早起きついでにコップ一杯の水を飲んだり、軽く家の周りを散歩をしてみたり。
いい習慣ができると、連鎖的にどんどん健康になっていきます。
当院では便秘の方の受診が多く、みな大腸がんができているのではないかと心配しています。
大腸カメラをするとポリープがある人もいますが、
便秘になるくらい大きなポリープができている、つまり腸管内をふさいでしまうくらい大きなポリープができていることは、実際にはほとんどありません。
もしポリープが便秘の原因だとしたら、かなり進行した大腸がんだからです。
大腸カメラを受けると、便秘の原因となる器質的疾患を認めない場合がほとんどです。
検査後に便秘の原因となる悪い病気がないことをお話しして、上記の便秘指導を行います。
みな便秘の原因となる大きなポリープができていないことを知り、安心して帰ります。
「安心してホッとして帰る。」
腸はメンタルの影響をとても受けやすい臓器なので、「安心すること」が実は便秘改善の一番大切なポイントなのですが、忙しくて大腸カメラを受ける暇がなくても便秘改善は可能です(でも一度は大腸がん予防・早期発見のために、大腸カメラは受けておいてください)。
2週間後に再来していただくと、かなり多くの方の便秘が改善傾向になっています。
あまり便秘改善の効果がなかった場合は、いろいろと話を聞きながら、エクササイズの方法を正しいやり方に修正したり、まだ書いていない便秘改善方法の続きをお話ししたりします。
数回通院していただいているうちに、ほとんどの方が大した薬も使用しないまま便秘が改善していきます。
一度便秘の負のスパイラルが取れると、さらにどんどん良くなっていきます。
便秘が改善してきたら、少しずつ食事の見直しや運動を取り入れていけばよいのです。
便秘が改善すると、お肌もキレイになるので、食事や運動も楽しくなります。
どんどん若返り、大したことをしていない(努力をするというほど苦しくない)のに、いつの間にか楽にアンチエイジング・肥満解消・健康的な生活を手に入れることができるのです。
本当にそうなるのでしょうか?
考える前に、さっそく一歩を踏み出してみましょう。
記事を読みながら見よう見真似でお腹をマッサージし始めている人は、すでに便秘改善のスタートが切れていると思います。
きっと良くなっていきます。
地道に楽しく、がんばりましょう(^^♪