「苦しさと
痛みに配慮した内視鏡検査」と
「経鼻内視鏡検査」は
何が違うの?DIFFERENCE BETWEEN PAINLESS ENDOSCOPY AND NASOGASTRIC ENDOSCOPY

動画で分かる「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」と 「経鼻内視鏡検査」の違い

違い01検査前の前処置の違い

「経鼻内視鏡検査」は狭い鼻の穴を通さないといけないため、鼻の穴を麻酔すると同時に狭い穴を広げる作業が加わり、さらには鼻の穴には毛細血管が非常に多くあるため鼻出血防止のため血管収縮剤の点鼻が必要になるなど前処置がかなり煩雑になってしまいます。
「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」は検査直前に約10秒間喉の麻酔をするだけと非常に前処置が簡易となっております。

経鼻内視鏡検査

鼻出血防止のため血管収縮剤であるナファゾリン硝酸塩を左右の鼻の穴に数滴点鼻します

STEP01

ナファゾリン硝酸塩点鼻してから5分後にジャクソン式スプレーを使ってキシロカイン液を左右の鼻の穴にそれぞれ1回ずつ噴霧します(スプレーは先端を1cm程鼻の穴に挿入して噴霧の際は息を止めていただきます)

STEP02

さらに5分後に再度ジャクソン式スプレーでキシロカイン液を左右の鼻の穴にそれぞれ2回ずつ噴霧します(噴霧の際は息止めしていただきます)

STEP03

約10cmのチューブにキシロカインゼリー2mlを塗布し、さらにキシロカインスプレーを数回噴霧します

STEP04

キシロカインを塗布した10cmのチューブを広い方の鼻の穴に挿入し、約2分間鼻の奥に留置し続け、その後左右にチューブを回転させ麻酔の効果を確認します

STEP05

咽頭麻酔としてキシロカインスプレーを数回噴霧して、それを飲み込んで終了となります

STEP06

苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査

ベッドに横になり検査直前に、キシロカインスプレーを口から噴霧し、
約10秒間だけ喉の奥に貯めていただきます。
そのまま飲み込んでいただければ前処置は終了です。

STEP01

違い02鎮静剤使用の有無

「経鼻内視鏡検査」は基本的には鎮静剤を使用しません。
「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」は各人に合わせた適量の鎮静剤を使用し、ウトウトしながらの検査となります。

胃カメラで「つらい、苦しい」と感じるのは次の3点に集約されます

  • 01のどを通過するときの「オエッとなる咽頭反射」
  • 02スコープがのどに触れている「最後まで取れない接触感」
  • 03胃の中に空気を入れるときに感じる「ゲップしたくなるほどの膨張感」

「経鼻内視鏡検査」は鼻からのどに直接カメラが入るため、舌の付け根を通過しません。
そのため咽頭反射が比較的少ないとされています(上記の01が比較的少ないと言われています)。
のどは通常通り通過しますので、のどの圧迫感と接触感は最後まで続きます

胃の中を詳細に観察するために胃の中に空気を入れて膨らませますが、鎮静剤を使用しない検査の場合、
人は胃にパンパンに空気を入れられると約30秒を過ぎてくると腹部に張り裂けそうな膨張感を感じ、
それを解消するために反射的にゲップをしてしまう
と言われています。
胃カメラで最も大切なことは「詳細に観察する」ということに尽きると思います。
そのためには胃の中に空気を十分に入れて、ヒダとヒダの間をきちんと広げて詳細に観察しなければなりません。
空気を十分に入れてヒダとヒダの間を広げないと微細な色調の変化だけの早期の胃がんは容易に隠れてしまい、発見することが難しくなってしまいます。

鎮静剤を使用しない検査の場合、
「空気を入れてヒダを伸ばしている間、張り裂けるような膨満感やゲップしたい状態を我慢していただく」か
「苦しさからゲップがどうしても我慢できず、詳細な観察ができないまま検査が終わってしまう」かの
どちらかになってしまうことが多くなってしまいます。

当然ですが、鎮静剤を使用していても経験の少ない医師が検査を行ったり、丁寧で細やかな内視鏡操作を徹底しないと、
すぐに目が覚めてしまい、苦しくてつらい検査となってしまいます。

鎮静剤を使用しない「経鼻内視鏡検査」は検査後休憩することなくすぐに帰宅できるという利点があります。
鎮静剤を使用すると検査後1時間程度お休みいただく必要がありますし、その後の車の運転ができないなどのデメリットがあります。
鎮静剤の扱いは非常に難しく熟練を要し、検査後のお休みするお部屋も必要となり、鎮静剤を上手く使用するのが難しいため、
画質の粗さや光源の明るさには目をつぶって経鼻内視鏡検査を導入する医療機関が多くなっているのが現状です。

鎮静剤を使用してウトウトした状態での
通常内視鏡検査

ハイビジョン内視鏡

鎮静剤でウトウトしている状態であれば胃に十分空気を入れても、膨張感を感じることなく、ヒダとヒダの間まできちんと詳細に観察することが可能となります。

鎮静剤を使用しない経鼻内視鏡検査

経鼻内視鏡

鎮静剤を使用していない検査の場合、胃に空気を入れようとすると膨張感を感じ、我慢できなくなり自然とゲップが出てしまうことが多くなります。ゲップをしてしまうと十分に胃が膨らまず、ヒダとヒダの間をきちんと観察できなくなり、微細な早期胃がんは容易にヒダの間に隠れてしまいます

症例ヒダとヒダの間に隠れていた早期胃がん

ハイビジョン内視鏡

人間ドックの「経鼻内視鏡検査」でお腹の膨張感がひどく、ゲップを何度もしてしまい観察不良のため再検査の指示があり当院受診しました。軽い鎮静剤を用いてウトウトしながらの「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」で再検査し、十分に胃の中に空気を入れてヒダとヒダの間を観察したところ、ヒダとヒダの間にわずかな色調の変化の早期胃がんが隠れていました。

インジゴカルミン特殊染色

インジゴカルミン特殊染色のハイビジョン画像です。早期胃がんの凹凸がハッキリとし、より病変の境界がきちんと認識できるようになります。早期発見のため手術にて完治となりました。

違い03胃カメラ先端のレンズ性能やライトの明るさ、観察できる視野の広さ

「経鼻内視鏡検査」で使用する内視鏡スコープは、毛細血管が非常に多くある出血しやすい狭い鼻の穴の中を通さないといけないため、出来るだけ細い内視鏡スコープしか使用することができません。スコープが細くなるための代償として「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」で使用するハイビジョン内視鏡スコープと比較して視野が狭く、光源の明るさも暗くなってしまい、そして何より画像の解像度が低くなるのが一番の問題だと言われております。
「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」で使用するハイビジョン内視鏡には「100倍ズーム機能」も付いているため、早期胃がん・食道がんが疑われるような病変が認められた時にはその場で100倍に拡大して詳細に病変を観察することが可能となります。

インジゴカルミン特殊染色

疑わしい病変部位にインジゴカルミンという青色の特殊な医療用染色液をかけると凹凸がよりはっきりとして、病変がより一層認識できるようになります。

インジゴカルミン拡大内視鏡

ハイビジョン内視鏡スコープは「100倍ズーム機能」を検査時にその場で使用することが可能となっております。疑わしい病変部位を瞬時に100倍に拡大することができ、より詳細な観察が可能となります。

違い04胃内に残った粘液や洗浄液を吸引する
鉗子口の大きさとウォータージェット機能

胃カメラでの観察で重要なのは
「胃内にある粘液を丁寧に洗い流して、微細な粘膜模様をきちんと詳細に観察するということ」です。

ウォータージェット付きのハイビジョン内視鏡ならボタン一つで水を内視鏡の先端から強弱を調整して出すことができますので、より簡易に粘液を洗い流すことが可能です。
さらには洗い流した洗浄液を鉗子口が大きいハイビジョン内視鏡スコープであれば短時間で吸引することができ、その余った時間を詳細な観察に回す事ができ、より長い時間観察が可能となります。

ハイビジョン内視鏡

ピロリ菌がいる方で胃の荒れが強い場合は、内視鏡前に粘液除去剤を服用してもらっても胃内に粘液が多量に残ることがあります。このような場合はハイビジョン内視鏡に付いているウォータージェット機能で粘液を即座に洗い流すことが可能です。

ハイビジョン内視鏡

ハイビジョン内視鏡のスコープ先端にはボタン一つで高速の洗浄水が出てくる「ウォータージェット機能」が備わっていますので、短時間で粘液を洗浄して観察を詳細に行うことが可能となります。

違い05早期胃がん・食道がんなどが疑われた時の再検査回数

検診などでの「経鼻内視鏡検査」で胃がんや食道がんが疑われる場合には「100倍ズーム機能」が付いた高詳細ハイビジョン内視鏡での再検査が必要となってしまいます。最初から拡大観察機能の付いたハイビジョン内視鏡を用いて検査をしていると、再検査の回数を減らす事が可能となります。

ハイビジョン内視鏡

ハイビジョン内視鏡の高詳細画像ではこのようなわずかな色の変化の退色のみを示す微細な早期胃がんでもきちんと認識することが可能となります。画質の粗い「経鼻内視鏡検査」ではこのような病変の認識は非常に難しいと思われます。

拡大内視鏡

100倍ズーム機能で拡大観察すると、より詳細に退色(色が少し薄くなっている)部位としてがん病変を認識することが可能となります。ハイビジョン画質で拡大機能が付いていればこその診断可能な病変と思われます。

違い06咽頭(のど)の観察範囲

「経鼻内視鏡検査」は狭い鼻からカメラを挿入して、のどの途中(中咽頭)からカメラが出てきます。
「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」では口からカメラを挿入して口の中、舌、口蓋垂(のどちんこ)、扁桃腺、上咽頭(のどの始まり)と観察していき、喉の真ん中である中咽頭に進んでいきます。のどの途中からカメラが出てくる「経鼻内視鏡検査」では上咽頭(のどの始まり)や扁桃腺、舌などの観察が出来ません

経口内視鏡
口から入れる「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」のカメラの通るルートです。
口の中や舌や喉の始まり(上咽頭)もきちんと観察できます。
まず、マウスピースの中から口へカメラが入っていきます。

STEP01

口の中、舌の観察を行っていきます

STEP02

口蓋垂(のどちんこ)の観察もきちんと行います(この部位にも咽頭がんができます)

STEP03

上咽頭(のどの始まり)に到達しました。扁桃腺などもきちんと観察します(この部位にも咽頭がんができますので、きちんと観察します)

STEP04

中咽頭に達しました。「経鼻内視鏡検査」はこの部位からカメラが出てきます。

STEP05

下咽頭(のどの奥)、喉頭(肺の入り口)が見えてきます

STEP06

経鼻内視鏡
鼻から入れて、のどの途中(中咽頭)から出てくる「経鼻内視鏡検査」のカメラの通るルートです。

鼻から入れて口の中をショートカットするため、舌や喉の始まり(上咽頭)が観察できません。
「経鼻内視鏡検査」ではカメラが口の中をショートカットして、のどの途中(中咽頭)から出てきます(矢印のルート)

STEP01

その先に進んでいくと下咽頭(のどの奥)、喉頭(肺の入り口)が見えてきます。

STEP02

症例上咽頭(のどの始まり)にできた早期上咽頭がん

ハイビジョン内視鏡

上咽頭(のどの始まり)にできた早期上咽頭がんのハイビジョン内視鏡画像です。「経鼻内視鏡検査」ではこの先の中咽頭からしか観察できませんので、病変が発見できなくなってしまいます。

NBI

NBI(狭帯域光観察)画像です。より強調されてがん部分が映し出されます

NBI拡大内視鏡

NBI拡大観察画像です。
100倍に拡大することにより上咽頭がんであることが判断できます。

違い07顕微鏡検査での組織診断の精度

違い4でも述べたように狭い鼻の穴を通さなければならない内視鏡径の細い「経鼻内視鏡検査」では組織採取の際に使える生検鉗子も小さいものしか使用できないため、採取した組織が小さいものとなり、十分な組織診断ができない可能性もでてきます。

早期胃がんの顕微鏡画像
ハイビジョン内視鏡検査では組織を採取するための生検鉗子を入れる鉗子口が大きいため、よりサイズの大きな生検鉗子を使用することが可能となります。十分な組織を採取することができますので、顕微鏡検査での診断もより正確なものとなってきます。鉗子口の小さな「経鼻内視鏡検査」では得られる組織も微小なものとなってしまいますので、診断が十分にできないことも多く、再検査になってしまう可能性もでてきます。

まとめ「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」と「経鼻内視鏡検査」それぞれの利点

苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査

01検査前の前処置が簡易

スプレーをのどに数回噴霧しての咽頭麻酔だけとなりますので、内視鏡前の前処置が格段に楽です

02お腹の膨張感がない

鎮静剤使用で軽くウトウトとしている状態ですので、お腹の張りやのどの苦しさがありません

03レンズ性能、視野角の広さ、光源の明るさで優位

ハイビジョン画質・広い視野・明るい光源で観察するため、微細な病変の発見に絶大な効果を発揮します

04検査時間が短縮され、観察に集中できる

内視鏡先端に付いているウォータージェット機能で胃の中の洗浄が短時間で容易に行うことができます

05100倍ズーム機能付き

ハイビジョン100倍ズーム機能で病変の観察をより詳細に行うことができ、ミリ単位の病変発見に役立ちます

06咽頭(のど)の観察範囲が広い

口から入っていくため、がんができる可能性がある舌やのどの始まり(上咽頭)もきちんと観察することができます。

07組織診断の精度

太い生検鉗子を使用することができるため、組織診断の精度が格段に増し、何度も再検査をする必要がなくなります

経鼻内視鏡検査

01検査後すぐに帰宅できる

経鼻内視鏡検査は基本的に鎮静剤を使用しませんので、検査後すぐに帰宅することができます

02検査後に車の運転ができる

鎮静剤を使用しないため、車での来院が可能であります。公共交通機関が少なく車が唯一の移動手段の地域では役に立ちます

まとめ

上記の点から、胃カメラであれば1年に1回の内視鏡検査間隔の方が多いとおもわれますが、1年365日のうち、内視鏡後に1,2時間の休憩も取ることが
できないぐらいお忙しい方は「経鼻内視鏡検査」
を、
鎮静剤を使用して検査後に1,2時間ぐらい休憩を取ることができる方は
「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」
を選択されるのが良いかと考えます。

当院では
当院では、微細なミリ単位の病変の早期発見
とにかくこだわって
内視鏡検査を行うことを信条としております。
上記7つの「違い」の観点から当院では「経鼻内視鏡スコープ」を導入しておりません。
100倍ズーム機能付きの
ハイビジョン内視鏡スコープでの
「苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査」のみ行っております。

健診などで導入されている「経鼻内視鏡検査」ですが、事前準備の煩雑さや検査精度の低さなど、
実際には知られていない検査の実際を動画で詳細に解説しております。