NBI(狭帯域光観察)とは?
WHAT IS NBI
内視鏡スコープや内視鏡モニターがハイビジョン対応でない少し前の時代には、内視鏡検査で小さながん病変を発見することはとても困難であり、ミリ単位の微細な病変への認識が医師側にも少なかったと言われています。
画像が粗く・光量も暗かったため、現在の経鼻内視鏡検査のように画質があまり鮮明ではなく、病変が発見しづらかったと思われます。
さらには、ピロリ菌がいたこと(または現在ピロリ菌がいること)により胃粘膜が萎縮している(薄くなっている)胃では、以前の内視鏡スコープでは画質が粗いために「粘膜の至る所ががんのように見えてしまう」こともあったとのことです。
ピロリ菌がいることにより胃粘膜の萎縮が進んでいまうと、胃の粘膜が腸の粘膜に置き換わる腸上皮化生(矢印あたりのボコボコした粘膜)という状態になってしまいます。ハイビジョン内視鏡での画質ですと、このような状態でも病変の認識精度は高くなります。
インジゴカルミン特殊染色を行うとより詳細に病変の認識ができるようになります
最終的には粘膜を染色して組織検査を行って診断していくのですが、
内視鏡医の観察眼には皆さまが想像しているより遙かに大きな力量差があるのが現実です。
観察眼は、「内視鏡経験の多さ」と「注意深く診ていく用心深さ」の2点が最も大切ですが、
内視鏡医の「勘とセンス」も重要だと言われることもあります。
内視鏡経験症例数・勘やセンスなどといったかなり漠然とした論理的根拠の乏しいものに頼って、
内視鏡検査を行っていた時代も過去にありました。
現在では、NBI(狭帯域光観察)というボタン一つで波長を変えて血管を強調する特殊光で、観察ができるようになりました。
このNBIのメリットは、病変と正常粘膜との違いを「粘膜の色調」や「血管走行」として認識できるようになりました。
以前の観察では病変の立体感、周りの正常粘膜との存在の仕方の違いなどから「怪しい」と思う内視鏡経験や勘から入っていましたが、
NBIは「色の違い」という点で、正常粘膜とがん病変との差を識別できるようになりました。
これは、がんやがん化する可能性のある大腸ポリープなどでは血流が豊富なためNBIにて表面粘膜の血管がより強調されることに起因しています。
色調の違いという論理的な検査方法のため、実際にがんの発見率も向上するという画期的な観察方法となったのです。
ハイビジョン内視鏡の通常光観察でもなかなか認識するのが難しい平坦な大腸ポリープです。
ボタン一つで切り替え可能なハイビジョン内視鏡のNBIでは大腸ポリープの血管が茶色に強調され、ハッキリと認識できるようになります。また、強調された表面模様から将来がん化する可能性の高い大腸ポリープであることが即座に確認できます。
NBIは食道や咽頭・喉頭の粘膜で特に威力を発揮します。早期の食道がんは微細な色の変化さえも示さないことが多く、
特に早期発見が難しいとされています。
微細な早期食道がんや早期咽頭がんに対してはこの血管を強調して粘膜の色の違いを際立たせるNBI(狭帯域光観察)が非常に有用となっています。
ハイビジョン内視鏡でも認識しづらい早期食道がんの内視鏡画像です。かなりの内視鏡経験がないと通常光での観察での病変発見は難しいと思われます。ましてや、経鼻内視鏡検査ではまず認識できない病変だと思われます。
早期食道がんに豊富にある血管模様を強調できるNBIでは色調の違いとして病変を認識できます。通常光で疑わしいと考えれば即座にボタン一つでNBIに切り換え、病変の確認ができます。
当院では、病変をより詳しく観察するために全例で、NBIシステムを用いた内視鏡検査を行っています。そしてNBIは、病変をズーム機能で最大限に拡大できた時にこそ、最大限の力を発揮できます。拡大ズームをしながらNBI観察をすると、粘膜表面の微細な模様や血管構造まで観察でき、病変の詳細な情報を得ることができます。
当院では全例で、100倍ズーム機能を搭載した内視鏡スコープを使用していますので、少しでも怪しい病変を発見した場合はボタン操作で簡単に「NBI・拡大ズームでの観察」までもが同時に行えます。病理組織検査を行う際にも重要な情報となるのです。
内視鏡検査後のご説明でも、特に食道や咽頭・喉頭のNBI画像はみなさまにとっても鮮明で分かりやすいため、
非常に有効な検査方法となっています。
ハイビジョン内視鏡でNBI観察・100倍ズーム観察も併用し、より詳細に内視鏡検査を行っていく事が
早期発見・早期治療につながると確信しております。
通常光とNBIとの比較
Comparison of normal light and NBI
NBIは、中でも食道・咽頭喉頭の観察に優れています。
食道の観察
通常光
通常光での食道の内視鏡像です。
NBI
NBIでの食道の内視鏡像です。内視鏡挿入時(行き)には通常光で観察し、内視鏡抜去時(帰り)にNBIで詳細に観察します。
咽頭・喉頭の観察
通常光
通常光での喉頭(のど)の内視鏡像です。耳鼻科領域である咽頭・喉頭(のどや声帯)の観察もすみずみまで行います。
NBI
NBIでの喉頭(のど)の内視鏡像です。内視鏡抜去時にNBIで詳細に観察することで、咽頭・喉頭のがんや乳頭腫などが発見しやすくなります。
早期大腸がんの詳細観察
通常光
早期大腸がんの通常光での内視鏡像です。
NBIの100倍
NBIにて拡大観察を行うと、がんの部分が明瞭となります。
NBI
NBIでの早期大腸がんの内視鏡像です。
NBIの100倍
この部分はまだがんにはなっていない「腺腫」であることが分かります。
早期咽頭がん(喉のがん)の詳細観察
通常光
上咽頭(のどの入り口)にできた咽頭がんです。
NBI
NBIに切り換えるとより血管が強調され、詳細に観察することが可能となります
NBIの100倍
NBI100倍拡大観察で血管の細かな走行が確認でき、咽頭がんと診断することが可能となります