各薬剤の解説
MEDICINE DESCRIPTION

01逆流性食道炎・胃潰瘍の薬
(胃酸分泌抑制薬)

このお薬はおそらく、「ランソプラゾール」や「タケキャブ」「ガスター」といった名前で、
これまで薬が長期間にわたって処方されているのではないかと思います。
このお薬はプロトンポンプ阻害薬と呼ばれており、
胃内の胃酸の分泌を強力に抑制します。
胃酸を強力に抑えることで、食道に逆流して食道の粘膜表面をただれさせることや
胃粘膜表面を攻撃して胃潰瘍になる事を防ぐことができます。
しかしつい最近の研究により、逆流性食道炎は食道粘膜表面のただれから起きるものは
ごく一部分であるにすぎないことが分かってきました。
逆流性食道炎の大部分は、「逆流過敏性食道」という範疇に分類されるようになりました。
胸焼けや逆流感、呑酸といった逆流性食道炎初期の症状が改善すれば、
胃の運動機能改善薬に変えることができます。
このことから、

「胃酸分泌抑制薬は逆流性食道炎の
初期症状にとてもキレが良いお薬ですが、
長期間漫然と続けるものではない」

ことが分かります。
胃酸を長い間抑えてしまうことは、胃の本来の働きである、
「胃に入ってきた食べ物を細かく砕いて腸に送り出す」機能(消化といいます)自体を
抑えることになってしまいます。
つまり

胃酸分泌抑制薬を長く続けることで、
かえって消化が悪くなってしまう
という
「負のスパイラル」を
作ってしまうことになります。

また胃酸分泌抑制薬を飲み続けることでの

「重大な副作用」

についても触れなければいけません。

認知症のリスクを上昇

認知症のリスクを上昇

健康寿命の質を大きく低下させてしまう疾患の1つとして、「認知症」は 外すことができません。
胃酸を長期間抑え続ける→胃腸内の細菌叢が変化する→認知症のリスクが高くなることが、
最近進化している遺伝子解析によって証明されてきています。

骨粗しょう症のリスクも増加

骨粗しょう症のリスクも増加

胃腸内の細菌叢の変化は、骨粗しょう症のリスクも増加させることが分かってきています。
今現在、胸焼け・逆流・呑酸といった症状に苦悩していないならば、これらの胃酸分泌抑制薬を1度止めた方がよいでしょう。もし、胃酸分泌抑制薬を止めてみて逆流症状がでてくるときは、胃の運動機能改善薬に切り替えたり、積極的に運動を取り入れていくほうが良いと思います。

胃の運動機能改善薬は胃の消化を助けてくれるものであり、より生理的な胃の状態をつくることができます。
毎日おいしくご飯を食べることができますし、便通改善も期待できます。

02抗生物質(抗生剤)

普段カゼを引いて長引かせてしまったときは、どのように対応していますか?
市販のカゼ薬を飲む方が多いと思いますが、病院に行って「良く効く抗生剤を出してもらって、早く治そう」
と治療に積極的な方もいますが、

これ大きな間違いです!

カゼの原因は主にかぜウイルスの経口感染です(空気や手のひらの接触を介して、口から侵入してきます)。
抗生物質は細菌を死滅させるお薬ですので、大部分がウイルス感染であるカゼには
全くといっていいほど効果がないと言えます(唯一、ウイルス感染に合併した細菌感染には効果があります)。
つまり抗生剤には「カゼを細菌感染によって重症化させない」というある 一定の効果はあるものの、普通のカゼの治療には

抗生剤は全く不必要である

ことが分かります。
メリットがないばかりか、デメリットの方が多くあります。
それは、

「身体にとって大切な善玉菌
まで死滅してしまう」

ことです。
抗生剤を内服した後に、お腹を壊したり食欲がなくなったりした経験はないでしょうか。
これはカゼの症状が原因ではなく、抗生剤投与による胃や腸内の環境の乱れから 引き起こされる「副作用」です。

カゼを引いたときに、
むやみに
抗生剤を飲んではいけません。

これは抗生剤が必要となる細菌感染を起こしたときに、
すでにその抗生剤に対して身体が耐性を持ってしまったら、肝心の抗生剤が効かなくなる可能性があるからです。
胃腸内環境を大切にしたいと思う方は、カゼに抗生剤を使用することは止めたほうが良いでしょう。
政府は2016年から、抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」の拡大に歯止めをかけようと、啓蒙を続けています。
その結果2019年4月現在、5年前と比較して抗生物質の国内販売量10.7%減っていることが分かりました。
それでも毎日診療をしていると、
「抗生物質を出す先生が良い先生で、抗生物質を出してくれない先生はやぶ医者」
と思っている方がまだまだ多いと感じています。

03生活習慣病の薬
(高脂血症、糖尿病、高尿酸血症)

健康診断で、「悪玉コレステロールが140mg/dlを超えたら高脂血症」と診断されます。
「食事や運動療法について医師からあまり奨励されることもないので、仕方なく毎日高脂血症の薬を飲んでいる」
という方が昨今とても多くなっています。
まず、検診結果を机に置きながら、コレステロールの項目を眺めてみましょう。

「総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪」
と書かれていることが多いのではないでしょうか。
この4つの値が1つでも高くはみ出ると「高脂血症」と診断されているようです。
本来はLDLコレステロールとHDLコレステロールの比が大切です。
LDLとHDLの両方が高い場合は総コレステロールが非常に高い値となるために、
検診で「要精密検査」となりますが、
コレステロールの内訳を見ると特に問題ない場合も多くあります。
さらにHDLコレステロールは値だけでなく、LDLコレステロールを抑える「強さ」が重要とも言われています。
大切なことの1つは、総コレステロール値に一喜一憂せずにそれぞれのコレステロール値をじっくり見てみることです。
HDLコレステロールがある程度低い方で、 LDLコレステロールがどのぐらい高い場合に薬を飲んだ方がよいでしょうか。
私達はおおむね

LDLコレステロール 180~200㎎/dlをカットオフ値(仕切り)

としています。このカットオフ値はだいぶ高すぎないのか、
このままでは脳卒中や心筋梗塞になってしまうのではないか、という意見が出てくると思います。
まず、女性は加齢とともに女性ホルモンが減ってきます。
すると女性ホルモンである「エストロゲン」がもともとコレステロール値を下げる作用があるため、
50歳前後から大部分の方が特に食事を増やしたこともないのに、
コレステロール値が上がってくることがよくあります。

そこでコレステロール値を下げる薬、となるわけですが少し待ってください。
女性の場合、閉経と共にコレステロール値が上昇した方と、
上昇しなかった方とを比較したデータがあります。このデータによると、
コレステロール値が上がっても上がらなくても、
脳卒中や心筋梗塞といった疾患の発生率に決定的な差がなかったと言っています。

次に男性ですが、女性のようなホルモン周期はないので、
コレステロール値や血糖値、尿酸値が上がる原因はとてもシンプルです。
お酒と炭水化物(糖質)の2つです。

「仕事が終わってホッと一息してから飲む酒と白ご飯が美味しいのだ」
と主張されるお父さん、その通りだと思います。
そこで、お酒と炭水化物(糖質)を我慢せずに「置き換えていく方法」はいかがでしょうか。
どうしてもビールが好きな方は糖質オフのビールを飲んでほしいですが、特にアルコールの味にこだわらない人は、
ぜひウイスキーを炭酸水で割ったハイボールや焼酎と言った蒸留酒をおすすめします(どのみち楽しむならば蒸留酒の方がよい、
という意味であり、蒸留酒を多量に飲むことを勧めているわけではありませんよ)。
ハイボールはのど越しがよいし、他の食事との相性もよいのでお勧めです。
ビールだけで夕食がお腹いっぱいにならないよう、ハイボールに置き換えてみることも良いでしょう。
日本酒やワインにもそれぞれ発酵食品、ポリフェノールといった良さがありますが、
ここでは糖質を控えるということから、ウイスキーや蒸留酒をお勧めしています。
蒸留酒には糖質がほとんど入っていませんので、蒸留酒のカロリーは脂肪に変わることがありません。
また夕食の炭水化物(白ご飯やパン、ラーメンやうどんなどの麺類)はとてもおいしいものです。
ですが、ここは今後も末永く美味しくお酒や食事をいただくために、置き換え法をお勧めします。

夕食で摂っている炭水化物(糖質)の
分を、
おかず(肉や魚、野菜や汁物)
に変えていくのです。

食べる量としては我慢する必要はなく、しっかりと摂っていただきたいと思います。
なるべくストレスを感じることなく、この食事が習慣化してしまえば、体重が落ちてきます。
すると自然にコレステロール値と血糖値が落ちてきます。
まずは3週間続けてみましょう。
身体に何かしらの良い変化を感じたならば、次は3か月続けてみましょう。
体重や血糖値、コレステロール値が下がってくることが数値化されてきます。
成功体験という結果が出てくると人間はドーパミン分泌が高くなり、
食事やお酒を楽しみながら生活習慣病の数値の改善が望めます。
ストレスというコルチゾール分泌を抑えることができますので、
ますます太りにくい身体ができてきます。ここに整腸剤が1日に1回でも継続していたら、
時々は炭水化物(糖質)を摂りすぎたとしても3日間でつじつまを合わせていくことで、帳尻を合わせることができます。
工夫をした緩めの糖質で、男性は我慢せずとも生活習慣病の値を改善させることができるのです
(最新の痛風ガイドラインの観点からは心血管系イベント(心筋梗塞や脳卒中)を防ぐために、
尿酸値を下げていた方が望ましいという立場をとっていますが、推奨度は高くありません。)

04骨粗鬆症の薬

次は私達の身体を支えている「骨」についてです。
骨は子供の頃から身体の成長と共に大きくなり中身が充実していきますが、成人になったころにピークを迎えます。
20代からは骨の成分がだんだんと減り始めます。
骨の成分が減ると骨粗鬆症、サルコペニア(筋肉量の減少)、関節の疾患を引き起こしやすくなります。
骨の不調の怖いところは、骨折などを起こさない限り衰えに気が付かないことです。
ですから、骨折などの生活の質を落としてしまう前に、
骨の成分を維持することがとても大切になります。
骨粗鬆症の予防としてビスホスホネート製剤が病院で処方されることがあります。
しかしこの薬が骨粗鬆症や骨折の原因になっていることがあります。
ビスホスホネート製剤は、骨が溶出することを防ぎ、弱っていくことを防止すると言われていました。
しかし、ビスホスホネート製剤を内服し続けることで、
抜歯や口腔内環境の悪化などの要因により顎骨壊死を引き起こすことが多数報告されています。

骨折を予防するために用いられる薬が、
逆に骨の壊死を引き起こしてしまって
いるのです。

内科の医師がこのビスホスホネート製剤を開始する際には十分な検討が必要とされていますが、

残念ながら骨粗鬆症の
第一選択薬として使用されてい
る場合が多く、
開始以降も特に
効果の観察もないまま、
継続処方されているケースが
多々見られています。

骨粗鬆症も自らで管理することがとても大切です。
まずは50歳を過ぎたら年に1度ほど骨密度を測定してみましょう。
1日に必要なカルシウム摂取量は、650㎎です。
現在の日本人女性のカルシウム摂取量の平均は500㎎ですので毎日150㎎不足しています。
カルシウムを摂るために牛乳を積極的に飲むようにしている方を多くお見受けしますが、
牛乳のカルシウムは吸収率が90%前後あり、多くが急激に吸収される分、
その後に尿からカルシウムが多く出て行ってしまいます。

その際に骨のカルシウムも
一緒に
尿の中に出て行ってしまうため、
かえって骨の中のカルシウムが
減ってしまうとも言われています

ので注意が必要です。
小魚に含まれているカルシウムの吸収率は30%前後であるため、
緩やかにカルシウムが血液中に入ってくることから尿の中にカルシウムが抜け出ていくことが少なくなります。

そのためカルシウムの骨への定着
が強化される

と言われています。摂取してもおしっことして多くのカルシウムが出て行き、
むしろ骨粗鬆症を悪化させてしまう可能性のある牛乳などの乳製品を摂るよりは、
魚やキノコを積極的に食べることやサプリメントで「カルシウムやビタミンD」を摂取することの方が、骨形成においてとても大切です。
そして毎日少しずつでも歩いたり階段を上ることなど、骨を刺激する運動を行いましょう。
このように「測る」「食べる」「運動する」ことで、薬を飲まなくても骨粗鬆症は予防できますから、
まずは骨密度を測定することから始めてみましょう。

05解熱鎮痛剤

解熱鎮痛剤を安易に内服していないでしょうか。
解熱鎮痛剤はドラッグストアで簡単に買うことができます。
頭痛や生理痛で、「痛みが取れるから」と慢性的に内服しているかもしれません。
身体の中は、炎症の起こっている部位に血流を送ることで炎症を治そうとしています。
ところが

解熱鎮痛剤を使用することで血流を遮断
してしまうので、
いつも内服していると頭痛や生理痛は
炎症が取れずにますます慢性化する

ことになってしまいます。
さらに解熱鎮痛剤の使用が慢性化すると、腎機能の悪化を招くことになります。
病院で解熱鎮痛剤が処方されているからと言って、安心してはいけません。
病院で処方される痛み止めも、市販のものと同様の成分でできているものがほとんどです。
特に1日3回で毎食後などとして毎日処方されていることもありますので、要注意です。
大切なことは痛みの原因を知り、それに合わせた治療を受けることです。
「解熱鎮痛剤を使わないで」ということではありません。
痛みがあるときに頓服として使用するには、良い薬だと思います。

安易に慢性的に飲み続けないことが
大切です。

06抗アレルギー剤

アレルギー性鼻炎や花粉症、喘息などのアレルギー症状によく使われる薬です。
鼻水やくしゃみなどの症状を引き起こす物質の働きを抑えることにより、症状を和らげる効果があります。
抗アレルギー剤も最近はドラッグストアで簡単に買うことができます。
確かに、抗アレルギー剤を飲むことにより、上記のような症状は緩和されますが、眠気などの副作用が問題となります。
そもそも

抗アレルギー薬は、アレルギー症状を緩
和するだけであり、
アレルギー自体を予
防するものではありません。

それではアレルギーはなぜ起こるのでしょうか。 アレルギーを引き起こす原因の一つとして、

腸内環境の悪化

があります。
人間の腸内には100兆個もの腸内細菌が存在しており、
善玉菌と悪玉菌、日和見菌がそれぞれバランスを保ち、腸内環境を作っています。
不摂生な食生活、ストレスなどにより、腸内細菌のバランスが崩れ、免疫力が低下することにより、
アレルギー症状を引き起こす原因となるのです。
腸内環境を良くするために、整腸剤やビタミン剤を内服することをお勧めします。
ただし、

即効性があるわけではないので、
根気強く長期間飲み続けることが必要です。

07総括

このように
1.胃酸分泌抑制薬 2.抗生物質 3.生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症)
4.骨粗鬆症 5.解熱鎮痛剤 6.抗アレルギー剤

といった薬を減らしていけると、

ほとんどの薬は不要

もしくは、より身体に優しい薬に変えていくことができます。

つまり内服薬を減らすには

つまり内服薬を減らすには
01胃酸分泌抑制薬は運動機能改善薬あるいは消化剤に置き換える 02抗生物質は必要な時のみしっかり使用する 03生活習慣病の薬は、生活習慣のクセを見直して、我慢しない糖質制限を継続する 04骨粗鬆症は、骨密度を毎年測定して、食事・軽い運動を継続すること 05解熱鎮痛剤は症状があるときにのみ使用して、痛みの原因を治療することが大切 06抗アレルギー剤も症状があるときのみ使用して、アレルギーの原因となっている腸内環境の悪化を防ぐため、整腸剤やビタミン剤を内服する

書き出すだけではいかにも簡単なように思えますが、
実際にはそう簡単にはいかないことはみなさんも承知のことですし、私達も知っています。
継続が何よりの力になりますし、勇気づけ動機づけがとても大切ですから、
私達の力を利用していただき、薬を減らしてより健康寿命を長くしていただきたいと思います。

「少しでも無駄な薬を減らした
い、薬を止めていきたい」

と思われる方は、遠慮なく一度当院に相談に来てみてください。
薬を減らす・中止していくお手伝いができればとてもうれしく思います。