一般診療
GENERAL PRACTICE

逆流性食道炎

食道に関する項目
「食事中に食べ物がのどにつかえる感じがする」「のどに違和感がある」「のどがしみる感じがする」といった症状がある場合は、食道の病気が原因の可能性があります。これらの症状がきっかけで、食道がんが見つかるケースもあります。症状がある場合は、必ず消化器内科を受診し、原因を調べてもらいましょう。

逆流性食道炎自己診断チェックリスト

「逆流性食道炎かもしれない」「今は症状が無いけど気になる」という人は、次の自己診断チェックリストをチェックしてみましょう。合計点数が6点以上なら逆流性食道炎の可能性があります。
是非一度、当クリニックへご相談ください。

食道ってどんな臓器?

食道は、咽頭(のど)と胃の間をつないでいる筒状の臓器です。口から食べた食べ物を胃に運ぶ働きをします。
咽頭(のど)に近い側から胃に近い側までを場所によって、便宜上、「頚部食道」、「胸部食道」、「腹部食道」と分類しますが、その機能に違いはありません。
食道は食べ物がスムーズに通過できるように粘膜から粘液を出しますが、消化機能は無いため、消化液は出しません。
食道と胃のつながり目の部位は、食道胃接合部といいます。ここには下部食道括約筋と呼ばれる筋肉が存在し、食道と胃のつなぎ目を締め付けることで、胃酸などの胃内容物が食道に逆流するのを防いでいます

食道裂孔ヘルニアとは?

私達の体の内臓は、「肺や心臓などが入っている部分(胸腔)」と「胃や腸、肝臓などが入っている部分(腹腔)」にわけて収納されています。この胸腔と腹腔は横隔膜と呼ばれる膜状の筋肉で仕切られていますが、横隔膜には胸腔と腹腔をまたいで存在する血管や食道が通るための穴が空いています。このうち、食道が通る穴を「食道裂孔」といいます。
食道裂孔は、ちょうど食道と胃のつながり目である食道胃接合部に存在し、下部食道括約筋とともに食道と胃のつなぎ目を締め付けることで、胃酸などの胃内容物が食道に逆流するのを防ぐ働きもしています。
しかし、何らかの原因で、この食道裂孔部がゆるむと、本来、横隔膜より下の腹腔内に存在すべき胃の一部が横隔膜より上の胸腔内に飛び出してしまうことがあります。
これを食道裂孔ヘルニアといいます。ヘルニアとは、臓器が体内の本来あるべき位置から脱出してしまった状態のことを表す医学用語です。
生まれつき、食道裂孔ヘルニアが存在するケースもありますが、多数は加齢や生活習慣などが原因で起こります。加齢により筋肉や結合組織が弱くなっても食道裂孔部にゆるみが生じますが、肥満やアルコール摂取により内臓脂肪が増加し、腹腔内圧が高まることでもゆるみが生じます。近年、食生活の欧米化や肥満の増加により増加傾向です。

逆流性食道炎とは?

「胸やけがする」、「ゲップがよく出る」、「呑酸症状」などの原因をインターネットで検索すると「逆流性食道炎」という疾患が検索されます。
実際には、色々な食道や胃の疾患でもこれらの症状が認められますが、胸やけ、呑酸症状の原因として最も多い疾患が逆流性食道炎などの胃食道逆流症です。新聞やテレビ、雑誌でも取り上げられることが多い疾患なので皆様もどこかで聞いたことがあるかもしれません。しかし、この逆流性食道炎という疾患は、あくまでも食道に胃酸があがることで胸やけや呑酸症状などを来す疾患の1つであり、食道に胃酸があがる疾患をまとめて、正式には「胃食道逆流症」といいます。胃食道逆流症は胃内視鏡検査(胃カメラ)を行った際に、実際に食道粘膜に炎症所見を認めるものと認めないもの、2つに大きく分けられます。検査を行ったときに食道粘膜に炎症があり、胃酸が食道に逆流することで起こる疾患の中で最も分かりやすく、診断しやすい疾患として最も有名になった疾患が逆流性食道炎なのです。
以下にそれぞれの疾患について解説します。

胃食道逆流症
(GERD:gastro-esophageal reflux disease)について

【何が原因で起こるの?】

食道裂孔ヘルニアなどにより食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)の下部食道括約筋がゆるみやすい状況になると、胃酸や胃内容物が食道や口腔内に逆流しやすくなります。
カルシウム拮抗薬という高血圧の薬が原因で下部食道括約筋がゆるみやすくなることもあります。このタイプの薬を内服していて胸やけや呑酸症状がある方は、一度主治医にご相談下さい。
食道粘膜は扁平上皮という体の皮膚と同じ細胞で出来ているため、主成分が塩酸である胃酸が逆流し、食道粘膜に触れると、胸やけや呑酸、胸部不快感、みぞおちの痛みなどの症状が出現します。手などの皮膚に塩酸がかかるとヤケドしてしまいますが、それと同じことが食道で起きているイメージです。胸やけ、呑酸症状の原因として最も多い疾患です。
胃食道逆流症(GERD)は、胃内視鏡検査(胃カメラ)で食道粘膜にびらんや潰瘍などの粘膜傷害を認めるもの(びらん性GERD、逆流性食道炎)と認めないもの(非びらん性GERD)に分類されます。

逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症、びらん性GERD)

胃食道逆流症の中で最も有名な疾患です。胃酸が食道に逆流し、実際に食道の粘膜にびらんや潰瘍などの炎症を来している状態です。胃内視鏡検査(胃カメラ)で食道粘膜の炎症を確認することで診断します。ひどい場合には出血や吐血を来すこともあります。
逆流性食道炎の重症度は、胃内視鏡検査(胃カメラ)で炎症の程度が、どの程度認められるかで診断します。
粘膜傷害の程度で重症度を分類した改訂ロサンゼルス分類を用います。Grade Nのものを非びらん性GERD(NERD)と診断します。

【改訂ロサンゼルス分類】

  1. Grade N(normal):内視鏡的に変化を認めない(正常粘膜)
  2. Grade M(minimal change):びらんや潰瘍などの粘膜傷害は認めないが、下部食道の色調変化(発赤粘膜、白濁粘膜)を認めるもの
  3. Grade A:粘膜傷害が粘膜ひだに限局し、長径が5mmを超えないもの
  4. Grade B:少なくとも1カ所の粘膜傷害の長径が5mm以上で、他の粘膜傷害と連続していないもの
  5. Grade C:全周の75%未満の連続した粘膜傷害を認めるもの
  6. Grade D:全周の75%以上の粘膜傷害を認めるもの
全周の75%未満の連続した粘膜傷害を認めます。
改訂ロサンゼルス分類でGrade Cの逆流性食道炎です。

非びらん性胃食道逆流症
(非びらん性GERD、NERD:non-erosive reflux disease)

胃内視鏡検査(胃カメラ)を行っても食道粘膜にびらんや潰瘍などの炎症所見を認めないにも関わらず、胸やけや呑酸症状などがあるものを非びらん性GERD(NERD)といいます。逆流性食道炎(びらん性GERD)は、ある程度の量の胃酸が食道に逆流するため、粘膜傷害を生じますが、非びらん性GERD(NERD)では、食道への胃酸逆流は認めないか、あってもごく少量のため、粘膜傷害は来しません。臨床的に胸やけや呑酸症状があるにもかかわらず、内視鏡的な炎症所見がない場合に非びらん性GERD(NERD)と診断します。
非びらん性GERD(NERD)は、さらに胃酸逆流が無いにもかかわらず症状だけがある「機能性胸やけ」と少量だが胃酸逆流がある「逆流性知覚過敏」の2つに分類されます。
非びらん性GERD(NERD)が機能性胸やけと逆流性知覚過敏のどちらであるかの確定診断は、胃内視鏡検査(胃カメラ)での視覚的な診断は出来ないため、実際に食道に胃酸が逆流しているかどうかを24時間モニターする24時間食道インピーダンス・pHモニタリングという検査が必要となります。この検査はかなり特殊な検査のため、当クリニックでは実施できませんが、必要がある場合には適切に実施できる医療機関を紹介いたします。
「機能性胸やけ」と「逆流性知覚過敏」のいずれもストレスや不安、不眠などが原因と考えられています。

1) 機能性胸やけ

食道への胃酸逆流が無いにもかかわらず、胸やけ症状を認める疾患です。ストレスや不安による食道の知覚過敏に加え、食道の動きが過剰に強くなっていることが原因と言われています。

2) 逆流性知覚過敏

胃酸の逆流は少量ですが、繰り返されることで食道粘膜が知覚過敏になり、少量の胃酸の逆流でも強い症状を感じるようになっている状態です。

24時間食道インピーダンス・pHモニタリング

当クリニックでは実施していませんが、必要と判断した場合は適切な医療機関をご紹介いたします。
食道への胃酸の逆流の程度を評価するための検査です。pHの低い酸性の胃液が食道内に逆流すると食道内のpH値が低下するためことを利用し、胃酸の逆流があるかどうかを評価します。pHモニターの装置(直径2ミリほどの柔らかいチューブ)を鼻から入れて先端部を胃に留置し24時間のpHの変動を記録し、胃酸逆流の有無やその程度を評価します。この検査は胃液だけでなく、胃液以外の逆流因子である腸液(アルカリ性)や食道の運動機能、気体の逆流も把握できます。しかし、かなり特殊な装置が必要な検査であり、検査のためには入院も必要となるため、大学病院などの専門病院での検査が必要となります。
ご希望があれば専門病院へご紹介いたします。ご相談下さい。

逆流性食道炎の症状

症状がある場合は、絶対に放置せず必ず消化器内科を受診しましょう。自分で判断し、様子をみるのは大変危険です!!食道がんや胃がんが隠れている場合もあります。
特に食事が食べられないぐらい症状がひどい場合や急に体重が減少している場合は、早急に受診しましょう。下記に示したのは症状の具体例です。
  1. 胸が焼けるような感じやヒリヒリする感じがする
  2. 胸の当たりが痛む(食後、前かがみの姿勢、横になる等で悪化する)
  3. 食事中に食べ物がのどにつかえる感じがする
  4. のどがしみる感じがする
  5. のどに違和感がある
  6. 酸っぱいものが上がってくる感じがする
  7. きちんと歯磨きをしているのに口臭が気になる
  8. 胸が重苦しい感じがする
  9. みぞおちが重苦しい感じがする
  10. みぞおちの当たりを中心にお腹が張る
  11. 食事の途中ですぐお腹がいっぱいになる
  12. ゲップが良く出る
など
症状の感じ方は、人により個人差がかなりあります。この病気の症状はこうで無いといけないというものはありません。あくまでも上記の具体例は、症状の一例です。
診察時にご自身がつらいと感じている症状をそのままご自身の言葉で伝えて頂くのが最も大切です。また、診察時には
「どういう時に症状が出現しやすいか」
「症状を軽くしたり悪化させるものがあるか(姿勢や食事、行動や朝・昼・夜の時間で症状が変わるかなど)」
もあればお伝えください。
最近、消化器系以外の疾患にもこの「胃酸の逆流」が症状の原因だったと考えられる疾患として慢性咳嗽(がいそう)が報告されています。CTやレントゲンで呼吸器系に異常が無いにもかかわらず、長期間咳だけが続き、咳止めや吸入薬などで治療を行っても改善しない場合に、逆流性食道炎の治療を行うと改善したという報告があります。
原因不明の長年続く咳と逆流性食道炎との関連が疑われています。

逆流性食道炎の治療について

逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)は、症状が続くと食事量が減り、痩せたり、体力が低下したり、仕事や勉強に身が入らないなど日常生活の質が低下するため、つらい疾患です。
薬物治療には、下記の薬を用います。

胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプ阻害剤、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)

胃酸の分泌を抑え、食道に逆流する胃酸が減ることで粘膜傷害の改善、症状の軽減が期待できます。食道の知覚過敏が症状の原因である非びらん性胃食道逆流症にはあまり効果は期待できません。

消化管運動機能改善薬

胃の動きを改善し、胃酸などの胃内容物がスムーズに流れるようにすることで、食道に逆流する胃酸を減らし、症状を改善します。
逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)だけでなく、胃酸分泌抑制剤が効きにくい非びらん性胃食道逆流症にも効果があります。

粘膜保護剤

粘膜表面をカバーすることで胃酸の刺激から粘膜を守る薬です。胃酸に対して知覚過敏の状態になっているときに有効です。

胃酸中和剤

すでに出過ぎた胃酸を直接中和する薬です。

腹式呼吸

腹式呼吸を毎日することにより食道裂孔ヘルニアが改善し、逆流性食道炎が良くなるケースが多く見受けられます。当クリニックでは薬を使わない腹式呼吸治療を積極的に推奨しております。

逆流性食道炎の予防について

逆流性食道炎は、胃酸を増やす食事の摂取や暴飲暴食、ストレス、肥満や加齢などによる食道裂孔ヘルニア、糖尿病などによる消化管運動機能低下などが原因となるため、まずは生活習慣改善や食生活の改善などの原因の改善が必要となります。原因の改善を行わず、薬による加療だけを行っても効果があまり得られません。逆流性食道炎を指摘された場合は、生活習慣を改める良い機会です。現在の習慣を一度見直してみましょう。
症状があるときは、胃酸が増える食事(高塩分食、高脂肪食、アルコール、チョコレート、コーヒー、炭酸飲料、柑橘類、揚げ物、熱いもの、辛いもの)の摂取も控えましょう。特にアルコールは胃酸の分泌を増やすだけでなく、食道胃接合部の下部食道括約筋をゆるめる作用もあり、症状の悪化につながりやすいといわれています。また、食道裂孔ヘルニアがある場合は、食後すぐに横にならない、胃酸が出やすくなる食事やアルコールの摂取を控える、定期的な運動を行い内臓脂肪を減らす、腹式呼吸を意識するなども併せて行いましょう。
胃酸が逆流しにくいような習慣、体づくりをすることが大切です。肥満傾向にある人ほど、腹腔内で胃が圧迫され胃酸が逆流し、逆流性食道炎を発症しやすくなります。また、お年寄りの方に多い、前かがみの姿勢も逆流しやすくなります。
食生活や生活習慣の改善でもよくならない場合は、薬の内服を併用することで改善する可能性があります。一度、当クリニックへご相談ください

当クリニックの胃内視鏡検査(胃カメラ検査)の特徴

症状の原因が特定できれば、治療が可能ですが、胃や腸に症状の原因がないかを診断する為には、内視鏡検査などでの原因検索が必要です。
当クリニックでは、「苦しさと痛みに配慮した胃大腸内視鏡検査」を患者様に提供することを第一に考え、皆様から検査後に「思った以上に楽だった」と思っていただける内視鏡検査を実践しています。当クリニックの内視鏡専門医は、臓器のポイント毎にどのような内視鏡操作を行えば苦しさと痛みに配慮した検査になるのかを熟知しております。これまで培ってきた内視鏡技術の経験を十分に活かし、検査を行っています。安心してお任せください。
また、最新の機器を使用し、その知識と技術を駆使して正確な内視鏡診断を行っています。皆様が消化管がんにかかり健康を損ねることがないよう最大限のサポートが出来るよう日々努力しております。まずはお気軽にご相談ください。

逆流性食道炎専門外来のご案内

当院では逆流性食道炎でお悩みの方を対象に逆流性食道炎専門外来を行っております。消化器内視鏡学会専門医である医師が様々な角度から逆流性食道炎の診察を行い、必要に応じて胃カメラ検査やエコー検査を実施しています。逆流性食道炎は消化器内科を受診しても根治に至らないことが多く、セカンドオピニオンや精度の高い胃カメラ検査を求められている患者様が多くいらっしゃる事実があり、当院ではそのような方に対して『眠っている間に終わる胃カメラ検査』を行い、逆流性食道炎の根治に向けて寄り添った治療をしています。初めて胸やけ症状で悩まれる方や他院を受診してもなかなか逆流性食道炎を治せない方は是非一度当院の逆流性食道炎専門外来を受診してください。些細な症状でも全く構いませんのでいつでもご相談ください。

~逆流性食道炎専門外来を受診される方へ~

当院は完全予約制であり、逆流性食道炎専門外来をご希望される方に対しては夕方に専用予約枠を開放しております。予約ページより内容ご確認の上、予約完了後にご来院ください。