一般診療
GENERAL PRACTICE

ピロリ菌検査について

胃に関する項目
ピロリ菌検査について

1) 一度もピロリ菌の検査を受けたことがない人

今までに一度もピロリ菌の検査を受けたことがない方は、胃の症状の有無に関わらず、まずは一度、胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を受けましょう。ピロリ菌の感染があると胃がんのリスクが高くなるだけでなく、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃過形成ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血、機能性ディスペプシア、慢性蕁麻疹などの原因にもなると言われています。ピロリ菌の感染を確認するだけでなく、これらの病気が無いかも合わせて確認することが大切です。胃カメラ検査(胃内視鏡検査)をするとピロリ菌の感染の有無がある程度分かります。胃カメラ検査(胃内視鏡検査)でピロリ菌感染が疑われ場合に追加でピロリ菌の検査を受けることをお勧め致します。

2) 血縁の家族に胃がんの人がいる、ピロリ菌に感染していた人がいる

ヘリコバクター・ピロリ菌は、口から菌が胃内に侵入することによって感染が成立する経口感染で感染します。
主な感染経路は、ピロリ菌に汚染された井戸水などの飲水やピロリ菌に感染した人の唾液からの経口感染です。特にピロリ菌に感染した両親や祖父母が口移しなどで子供に食事を与えることで感染が成立することが多いと考えられているため、血縁の家族にピロリ菌に感染していた人がいる場合は、自身もピロリ菌に感染している可能性があります
また、胃がん患者の90%以上はピロリ菌に感染していたという報告があります。このため、血縁の家族に胃がんの人がいる場合は、自身もピロリ菌に感染している可能性があります
保険診療でピロリ菌の除菌治療を行う場合は、6ヶ月以内に胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を受けている必要があるため、胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を受けていない人はまずは、胃カメラ検査(胃内視鏡検査)から受けましょう。

3) 過去にピロリ菌の除菌治療を受けたが、除菌が成功したかどうかの判定を受けていない人

ピロリ菌除菌の成功率は、残念ながら100%ではないため、除菌後の効果判定の検査を受けていない人は、必ず除菌が成功したかどうかを調べるために検査を受けましょう。
ピロリ菌除菌後は、除菌が成功していても胃がんが発生するリスクが残ります。1年以内に胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を受けていない場合は、まずは胃カメラ検査(胃内視鏡検査)から受けることをお勧め致します。

ピロリ菌の検査にはどんな検査があるの?

ヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査には胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を用いて調べる方法と胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を用いずに調べる方法があります。
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を用いて調べる方法では、内視鏡検査時に胃内を観察する際にピロリ菌感染が疑われる場所から胃の組織を採取し、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。次のような検査があります。

1) 迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌がウレアーゼを分泌し胃液中の尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を産生する性質(ウレアーゼ活性)を利用した検査です。採取した組織を尿素とpH指示薬が入った容器に入れると、ピロリ菌がいる場合は、尿素が分解されてアンモニアが生じるため、pHが上昇しpH指示薬の色が変化することで感染の有無が分かります。

2) 鏡検法

採取した組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌がいるかどうかを調べる検査です。

3) 培養法

採取した組織を微好気性条件下(5%酸素)で培養してピロリ菌がいるかどうかを調べる検査です。

胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を用いずに調べる方法には次のような検査があります。

1) 尿素呼気試験

ピロリ菌の持つウレアーゼ活性を利用し、経口投与した13C標識尿素がアンモニアと13C標識二酸化炭素に分解されるのを呼気中の13C標識二酸化炭素によって判定する検査です。13C標識尿素の服用前と服用後の呼気を専用の袋に採って測定します。

2) 抗ヘリコバクター・ピロリ抗体測定

血液中または尿中の抗ヘリコバクター・ピロリ抗体を測定する検査です。過去の感染も認識するため、除菌後も陽性となることがあります。

3) 便中ヘリコバクター・ピロリ抗原測定

便中のヘリコバクター・ピロリ抗原を測定する検査です。
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているかどうかを調べるには、これらの検査を単独またはいくつか組み合わせて検査を行い、判定します。患者様一人一人によって最適な検査方法が異なるため、担当医にご相談下さい。

胃がんリスク層別化検査(ABC検診)について

自治体などの検診や人間ドックで行われている胃がんリスク層別化検査(ABC検診)は、採血を行い、血液中の抗ヘリコバクター・ピロリ抗体の測定と食べ物の消化に関与するペプシノゲンいう物質の血中濃度を測定することで胃粘膜の萎縮(老化)の状態を評価する検査です。検査結果に応じて胃がんのリスクをA、B、C、Dの4群に分類して評価する検査ですが、その有効性に関しては未だに議論されています。
胃粘膜の 萎縮(老化)が進んでいる胃は、ヘリコバクター・ピロリ菌感染があり、胃がんの発生リスクが高い胃である可能性があると評価することはできますが、胃がんリスク層別化検査(ABC検診)は「胃がん検診」にかわる検査ではありません。
現在、胃がん検診として推奨されている検査方法は胃カメラ検査(胃内視鏡検査)と胃レントゲン検査(胃透視検査)の2つのみです。特に、胃がんを早期発見するという点では、胃カメラ検査(胃内視鏡検査)が最も有効です。
胃がんリスク層別化検査(ABC検診)がA群で、胃がんのリスクが低いから大丈夫と安心せずに1年に1回は胃カメラ検査(胃内視鏡検査)を受けることをお勧め致します。

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。