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脂肪肝について

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脂肪肝について
健康的な肝臓での脂肪の占める割合は5%未満です。これが5%を超えてくると、いわゆる「脂肪肝」となります。ただ、エコーやCTなどの画像診断で脂肪肝と診断されるには、肝臓内に20%以上の脂肪沈着が必要となるんですね。ですから、「肝数値は高い、でもエコーでは異常なし」という方も脂肪肝の可能性は十分にあります。

脂肪肝とは?

脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が沈着した状態のことです。
脂肪肝は以前は軽い病気と考えられていましたが、最近になり、脂肪肝から肝硬変や肝臓癌へと進行することがあることがわかってきました。
最近では、アルコールが原因ではない非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease;NAFLD)が増加しており、NAFLDに肝臓の炎症や繊維化が認める疾患を非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis)と呼ばれています。
NASHはNAFLDの10%で発症すると言われており、10年以上の期間を経て、肝硬変や肝臓がんを発症することがあると言われています。

脂肪肝の原因

脂肪肝の原因は大きく2つに分けられます。

  • A.アルコール性脂肪肝:長年の飲酒により起こってくる脂肪肝です。1日60g以上のアルコールを飲む方は要注意です。 (アルコール20gは、ビールで500ml、日本酒で1合、ワインで200ml)
  • B.非アルコール性脂肪肝:男性で1日30g未満、女性で1日20g未満のアルコール摂取量なのに脂肪肝になっている方はこちらに分類されます。 高カロリー、糖質、肉類、脂質の過剰な摂取、魚類や食物繊維の摂取不足に要注意です。

脂肪肝の症状

脂肪肝には特別な症状はありません。ただ、進行して肝硬変や肝臓がんになると、全身倦怠感、食欲不振、黄疸などの症状が出現することがあります

脂肪肝の検査、診断法

健康的な肝臓での脂肪の占める割合は5%未満です。これが5%を超えてくると、いわゆる「脂肪肝」となります。ただ、エコーやCTなどの画像診断で脂肪肝と診断されるには、肝臓内に20%以上の脂肪沈着が必要です。
  • 血液検査
    肝数値であるAST、ALTの数値が高くなりますが、100mg/dl以下であることが多いです。
  • 腹部超音波検査
    安全性が高く、コストも安いです。 このため、健康診断において、脂肪肝の拾い上げに最適と言われています。 診断能力も高く、腎臓の黒い部分と比較して、肝臓が白く見えると「脂肪肝」と診断が可能です。
  • 腹部CT検査
    造影剤を使用しない、腹部単純CT検査も診断には有用ですが、コストが高く、放射線被ばくの問題もありますので、脂肪肝以外の他疾患の除外として利用されることが多いです。 脂肪肝のCT所見は、肝臓が、周りの臓器に比べて黒くなっている(CT値が低くなっている)と、脂肪が沈着していると判断します。
  • 腹部MRI検査
    MRI検査は、「水」と「脂肪」を見るのに適した検査ですので、脂肪肝の診断に有用です。しかしながらコストが高く、検査時間も長いため、脂肪肝以外の他疾患の除外として利用されることが多いです。
  • 肝生検
    肝臓に直接針を刺して、肝組織を採取して脂肪の沈着を確認する検査です。腹部超音波などの画像検査後の確定診断のために利用することが多いです。 体内に針を刺す検査ですので、検査後の出血などの合併症がわずかながら報告されています。

脂肪肝の治療

・食事療法、運動療法
まずは食事療法、運動療法が第一選択になります。これにより、現在の体重の5~7%を減量することができれば、脂肪肝の改善が期待できます。
食事療法としては、摂取カロリーを摂りすぎないこと、糖質や飲酒を摂りすぎないことです。
運動療法としては、1日30分以上のやや早歩きのウォーキングがお勧めです。

・薬物療法
食事療法、運動療法でも効果が不十分な場合は、慢性肝炎や肝硬変への進行を予防するために薬物療法を行います。
  • 抗酸化作用として
    ビタミンC、ビタミンEなど
  • 糖尿病治療薬として
    チアゾリジン系、ビグアナイド系、シダグリプチンなど
  • 脂質異常治療薬として
    フィブレート系、エゼチミブ、EPLなど
  • 肝臓を庇護する薬剤として
    ウルソデオキシコール酸、グリチルリチン製剤など
以上を用います。

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。