内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

食生活の乱れが便秘や大腸がんのリスクにもなることをご存じですか?

便秘や大腸がんは食生活が大きく影響している

今のところ、便秘と大腸がんの関係性は科学的にはっきりとは証明はされていませんが、便秘も大腸がんも食生活が大きく影響していることは間違いないとされております。
食生活を見直すことで便秘解消や大腸がんのリスク軽減につながる可能性が高いと思われます。
当院では、内視鏡専門クリニックとして多くの大腸内視鏡検査を行っていることもあり「便秘」で悩んでいる方を多く目にします。

あまり知られていませんが、実は便秘には「何日出ないと便秘」という明確な日数の定義というものはありません。日本消化器病学会によると便の出なかった日数ではなく、排便することが困難であったり、腹部膨満感といった症状を伴う便通異常のことを「便秘症」と定義しています。
そのため、腹部症状をあまり感じなければ、便が出ないことについてそこまで神経質にならなくても良いのかもしれませんし、逆にあまり過剰に気にしすぎることにより益々排便状況が悪くなるという悪循環に陥ってしまう可能性も少なくありません。
しかし、そうはいっても「快便になりたい」、「毎日(もしくは2,3日に1回程度)は排便があった方が良い」と思われる方も多くいらっしゃいます。そういう方はまず、食生活の乱れや偏りがあるかどうかを自分なりに検証して、下記の「便通に良いとされる習慣」を参照していただき、自分に不足する項目などを実践していただけると良いと思います。

便通に良いとされる習慣

01 水分を多く摂る

毎食前にコップ1~2杯の水(カフェインが含まれていないもの)と日中に1000ml程度の水分をこまめに摂ることが大切です。

02 食物繊維を多く摂る

玄米を主食として、野菜や海藻類を多く摂りましょう。青汁やサプリメントの食物繊維を利用することも良いと思います。

03 腸内の善玉菌を増やす

薬局やドラッグストアで市販されている整腸剤(ビオフェルミンSなど)が有効です。乳酸菌やビフィズス菌を摂るためにヨーグルトを食べている方が多いですが、一般のヨーグルトに含まれている動物性脂肪は、逆に大腸がんのリスクを高めてしまいますので、見直した方がよいでしょう。

04 マグネシウム製剤を利用する

医療機関で処方されるマグミット・マグラックス・カマグは、便の水分量を増やします。習慣性の下剤のようにクセにはなりませんので、うまく利用してみるとよいでしょう。

05 ビタミンCやオリーブオイルを摂る

腸の働きを活発にし、排便をスムーズにする作用があります。

06 腹部マッサージをする

大腸の形に合わせて、右下腹部から時計回りにマッサージをします。

07 ウォーキングをする

週に3、4回程度軽く汗をかくくらいの速度で30分程度ウォーキングをします。

08 食後の30分前後にトイレに行く

食後しばらくすると排便反射が起こるので、食後にトイレに行くことを習慣にします。

大腸がんリスクが増加する恐れがある食品

近年、急激に増加している大腸がんも食生活の偏りが大きなリスクとなります。例えば、大腸がんは野菜類や海藻類などに代表される食物繊維を多く摂ることによって、リスクが下がるということは科学的に証明されております。逆に、大腸がんでは赤身肉(牛肉、豚肉、羊肉など)や加工肉(ソーセージやハム、ベーコンなど)・乳製品(牛乳やチーズ、ヨーグルトなど)の摂取が増えるほどリスクが増加すると言われています。
つまり、食生活の欧米化により肉食中心となり、野菜をはじめとする食物繊維の摂取が減少することで大腸がんのリスクが増加していると考えられます。
そのため、大腸がんや便秘のリスクを下げるような食生活を心がけることで両方のリスクを下げることが期待されるとも言えます。
現在までに「便秘と大腸がん」の直接的な結びつきは科学的には証明されていませんが、
  1. 大腸内では、大腸がんや大腸ポリープの約70%が肛門に近い直腸やS状結腸にできるということ(便秘症の人は便が長時間にわたり直腸とS状結腸に停滞するので大腸がんのリスクが高まる可能性があると推察されます)
  2. 日本では、食生活の欧米化により大腸ポリープや大腸がんの罹患数が近年急激に増加していること
  3. 問診による各人の「食生活や生活習慣」と日々の大腸内視鏡検査を通じて知り得る「大腸粘膜の状態や腸環境」との関わりに大きな関係性があるのではと実感していること
の3つを考え合わせると、
「慢性的な便秘症になりやすい食生活や便そのものが大腸がんのリスクを急増させているのではないか」と、感じることが少なくありません。
常日頃から食物繊維の摂取を心がけ、赤身肉や加工肉・乳製品を摂りすぎないように意識することを心がけましょう。
便秘症の方は、大腸がんの有無をチェックするため一度は大腸内視鏡検査を受けるようにすることは勿論ですが、便通に問題ない方も一度は大腸内視鏡検査を受けられることを強くお勧めいたします。
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この記事を書いた人

平島 徹朗医師

国立佐賀大学医学部 卒業。
大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。