大腸がん検査を便潜血検査だけで済ませていませんか?
便潜血検査は、大腸がんや大腸ポリープを早期で見つけるための検査ではありません。
動画ではその知られざる仕組みを解説しております。
便潜血検査では、大腸がんの前がん病変である「大腸ポリープ」、「早期がん」の発見が困難です。
「進行がん」でも陽性にならないことがあります。この点は注意が必要です。
「大腸がん検診」として一般的に行われている「便潜血検査」、多くの方が受けていると思います。みなさんは便潜血検査の目的はご存知ですか?
- 大腸がん検診だから
- 大腸がんの有無を判定してくれる(大腸がんがあるときは陽性になり、大腸がんがなければ陰性になる)便利な検査だ
と思っている人も多いのではないでしょうか?
そもそも、便潜血検査の目的は、「大腸がんの死亡率減少」であって「早期がん、前がん病変のポリープの発見」ではありません。
まったく便潜血検査がだめかというとそういうわけではありません。死亡率減少効果を示す十分な証拠がありますし、身体には負担がかかりません。それに検査が比較的安価に行えます。このようなメリットもあります。
しかし、デメリットとして上記に述べているように便潜血検査での大腸がんの見逃しによるがん発見の遅れがあります。
(これは、日本対がん協会や国立がん研究センターのホームページにも書かれていることです)
賢い方なら、ここまで読むだけで検診の便潜血検査を受けようとは思わなくなるでしょう。
便潜血陽性で進行がんが見つかっても抗がん剤治療や手術による入院などで身体的、精神的負担が大きくなります。さらには金銭的な負担も大きく関わってきます。それなら、そうなる前に早期発見したり、早期に治療したり、がんを予防したくなりますよね。
では、大腸がんを早期発見したい、早期に治療したい、大腸がんを予防したいと思っている方はどうしたら良いのでしょうか?
大腸がんの中でも、かなり大きくなった「進行がん」であれば「陽性」になることは多いですが、「小さい進行がん」、「早期がん」、「前がん病変である大腸ポリープ」では陰性になることも少なくありません。
つまり
「便潜血反応が陰性」イコール「大腸がんはないから大丈夫」ということではない
のです。
大腸内視鏡検査は直接大腸表面を見ることで大腸がん、大腸ポリープの発見ができるうえ、その場で内視鏡治療を行うことができます。
進行がんの場合、入院は長くなり、体に負担がかかる外科的手術が必要になり、また進行度合いによっては抗がん剤治療が必要になります。
しかし、がんになる前の「大腸ポリープ」や「早期大腸がん」は内視鏡治療ができ、ほとんど身体に負担をかけず治療が完結します。
大腸内視鏡検査はキツイ検査だというイメージがありますよね?
大腸内視鏡検査は一般的に、「おいしくない下剤を飲まなければならず、検査もお腹が張って痛くなることもある」といわれており、昔ながらの内視鏡検査のやり方で検査や前処置を行っている施設では正直その通りのところも多いかと思います。
当院では以下のような工夫をしています。
- 洗腸剤:当院では、さまざまな種類の洗腸剤から飲みやすいものを医師やスタッフが厳選し採用しています。飲み方や飲む量を患者さん1人1人に合わせて工夫し、苦痛なく前処置ができるように努めております。
- 鎮静剤:洗腸剤と同様、患者さん1人1人に合わせた鎮静剤を使うことにより「うとうとした状態」で検査を受けることができます。
- 炭酸ガス:検査後のおなかの張りがないように吸収が空気の約200倍早い炭酸ガスを使用して内視鏡検査を行っています。
このような工夫をすることで実際に検査を受けられた多くの方が
「驚くほど検査が楽だった」
「大腸内視鏡検査のつらい、きついというイメージが払しょくされた」
とおっしゃってくれます。
自分のためにもそして何より大切な家族のためにも、便潜血検査ではなく一度は大腸内視鏡検査を受けてみられるのはいかがでしょうか?
食事をはじめとする生活習慣の見直しと共に、大腸内視鏡検査を受けることはそれ自体が
「究極のがん予防」
となります。
ではなぜ、便潜血で陰性となるがんやポリープがあるのでしょうか?
便潜血陽性と陰性の原理について考えていきましょう。
便潜血検査が陽性となるとどうしてもがんが心配になりますが、実際多い第1の状態は、「痔」が切れて便に血がつくことです。
そして第2の状態は、大腸がんが「かなり進行して」便の通り道が狭くなり、便ががんの表面に擦れて血が付くことです(本来はこれが便潜血検査の目的のはずですが、かなり進行したがんでなければ引っかかりません)。
大部分の便潜血陽性の原因は、痔ということになりますが、進行した大腸がんが存在しないかの確認を大腸内視鏡検査で行うことは大変重要です。
大腸内視鏡検査を受けるきっかけになるという意味では、便潜血検査の役割はあるかと思います。
もし早期の大腸がんや大腸ポリープがあった場合でも、便が腫瘍に擦れて血液が付くほど大きくないので、便潜血検査では「陰性」となることが多くなります。
「陰性」だからといって、大腸がんや大腸ポリープがないとは決して言えないのです。
「前に便潜血陰性と言われたから」、と大腸内視鏡検査を受けるきっかけを失ってしまい、気が付いたときには大腸がんが進行していたということもあります。これでは便潜血検査は全く逆効果になってしまいます。
これは早期大腸がんの内視鏡写真です。このように丈の低い病変では、便潜血検査は陽性になることはまずなく、陰性になります。
この記事を書いた人
平島 徹朗医師
国立佐賀大学医学部 卒業。
大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。