内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

鳥肌胃炎は胃がんリスクが60倍!リスクを避けるにはどうしたらいい?

皆さんは、鳥肌胃炎って聞いてことがあるでしょうか?鳥肌胃炎は、慢性胃炎の一種でヘリコバクター・ピロリ菌の感染が原因です。

鳥肌胃炎とそうでない胃炎を比べると、胃がんの発生するリスクが60倍高くなるといわれています。

そこで今回は、鳥肌胃炎の原因や鳥肌胃炎になりやすい人について解説していきます。

1. 鳥肌胃炎とは

鳥肌胃炎とは、胃内視鏡検査(胃カメラ検査)を行ったときに、胃の出口付近である幽門前庭部から胃角部にかけてみられることが多い胃炎です。

胃粘膜が鳥肌のようにつぶつぶした均一の顆粒状の隆起が密集しているように見えるため、鳥肌胃炎と呼ばれています。

内視鏡検査時にインジゴカルミンという青い色素を胃粘膜に散布すると、粘膜の凹凸の様子がさらに鮮明になり観察しやすくなります。
鳥肌胃炎

1-1. 鳥肌胃炎の原因は?

ヘリコバクター・ピロリ菌は胃がんや消化性潰瘍の原因となる病原細菌です。多くの細菌は胃酸で殺菌されますが、ピロリ菌は胃酸の中でも生きていけるようにウレアーゼという酸を中和できる酵素を分泌することが出来るため、胃の中でも殺菌されず生存することが可能です。

また、胃は胃そのものが自らが出す胃酸で傷つかない様にするために粘液を分泌しています。粘膜は胃のコーティング剤のようなものです。ピロリ菌はウレアーゼを分泌することで胃酸を中和するだけで無く、粘液の中に潜むことで、酸の影響をあまり受けないようにしています。

ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると、胃粘膜に継続的に炎症が起きるため常に胃炎を起こしている状態になります。胃炎が慢性化すると、胃粘膜が薄くなり、胃の老化が進行するため、胃がんを発生しやすい胃に変化してしまいます。

このようにピロリ菌感染を起こすと、通常は徐々に胃の老化が進行し、胃粘膜が萎縮する慢性胃炎の経過を取りますが、鳥肌胃炎は、ピロリ菌感染によって胃粘膜が萎縮を起こす前にリンパ組織がピロリ菌に対して過剰な免疫反応を起こすことで生じる胃炎です。

このため、ピロリ菌感染からそれ程、時間が経過していない若年者に発生し易い胃炎です。胃カメラで観察すると、このリンパ組織の過形成が均一で小さな袋状の集まりとして観察され、鳥肌のように見えるのです。

1-2. 鳥肌胃炎の症状は?

鳥肌胃炎に特有の症状はありません。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染による慢性胃炎の症状には、胃もたれ・胃痛・吐き気・胸やけなどの胃の不調があります。鳥肌胃炎の場合にも、同じような症状が出現しますが、無症状の人もいます。

日常的に胃の不調がある人では「いつものこと」と放置されやすいので、注意が必要です。みぞおちの違和感・痛み・胸やけが慢性的に起きている場合には、胃カメラ検査を受け原因を明確にしましょう。

1-3. どんな人に多い?

鳥肌胃炎は、ヘリコバクター・ピロリ菌感染がある若い女性にとくに多いという報告があります。

ピロリ菌は、5歳頃までの幼少期に感染する菌であるといわれています。そのピロリ菌の初感染後にみられる過剰なリンパ組織の免疫応答が原因で鳥肌胃炎が起こるため、10代や20代の若い人に見られる特徴があります。

鳥肌胃炎は、通常の胃がんに比べスキルス胃がんのような悪性度の高い低分化型や未分化型といわれるタイプの胃がんが発生するリスクがあるとされています。
スキルス胃がんは、増殖のスピードが速く、たった一年で進行がんになることもまれではありません。

家族にピロリ菌に感染したことのある人がいる場合は、自身も感染している可能性があります。症状の有無にかかわらず、専門医への受診をおすすめします。

スキルス胃がんが発症している場合は、胸やけ・胃もたれ・胃痛などの胃の不調がでやすいといわれています。胃の不調が長期に渡ってある場合も、ためらわずに専門医で検査を受けましょう。

2. 胃がんリスクを軽減するには

胃カメラ
鳥肌胃炎は胃がんリスクが高くなるといわれているため、胃がんリスクを軽減するには、鳥肌胃炎の原因であるヘリコバクター・ピロリ菌を除去する必要があります。

胃の不調が長期に渡って続いている場合はもちろん、症状が出てない場合でも家族にヘリコバクター・ピロリ菌に感染した人がいる場合は、専門医を受診し胃カメラ検査をすることを強くおすすめします。

2-1. ABC検診とは

ABC検診は、胃がんリスク検診ともいわれ血液の検査でヘリコバクター・ピロリ菌IgG抗体検査と胃がんの発生リスクを判断できる検査です。血液だけで簡単に行える検査ということもあり、近年は企業の健康診断でも行われています。

検査では、血液中のペプシノゲンとピロリ菌IgG抗体の量を測定することで胃の状態を簡易的に把握することができます。

ペプシノゲンは胃の細胞から分泌されるペプシンという消化酵素の元です。血液中のペプシノゲン値が少ないと、胃が老化し胃粘膜が萎縮している可能性があります。

ピロリ菌感染により、長期間ピロリ菌が胃粘膜に潜んで胃粘膜が傷つけられるとペプシノゲンの値は少なくなることを利用してピロリ菌感染の影響がどれぐらいあるかを推測する検査です。

結果は、A~Dの4段階で評価されます。A群の判定が、一番リスクが低いとされ、B・C・Dとなるにつれリスクが高くなります。

ピロリ菌とペプシノゲンともにA群で陰性評価された場合は、ピロリ菌に感染しておらず胃炎にもなってないという評価になります。それ以外の評価の例をまとめてみました。

・B群:ピロリ菌抗体が陽性でペプシノゲンが陰性の場合は、ピロリ菌感染の可能性はあるものの胃炎は起きていない状態

・C群:ピロリ菌抗体とペプシノゲンの両方が陽性の場合は、ピロリ菌感染によって胃炎が起きている状態

・D群:ピロリ菌抗体が陰性でペプシノゲンが陽性の場合は、胃全体に胃炎があり萎縮が進んでしまったためにピロリ菌さえ潜めないほどの状態、または過去にピロリ菌感染があり胃炎が起きているが、菌自体は既にいなくなっている状態

ただし、A判定だった場合でもABC検診はピロリ菌感染リスクと胃炎の程度を測定するだけであるため検査結果は絶対ではありません。

ABC検診では、ピロリ菌感染と胃炎の有無などを正確に判断することはできません。A以外の判定が出た場合は躊躇することなく、胃カメラ検査を受けましょう。

2-2. 鳥肌胃炎を発見するには胃カメラ検査が必要

胃カメラ検査(胃内視鏡検査)では、胃の出口付近である幽門前庭部から胃角部の粘膜の色調や凹凸の有無などを観察します。

検査時に、青色の色素であるインジゴカルミンを胃粘膜に散布し凹凸の有無を観察します。

画像検査である胃カメラは、血液採取だけで判定するABC検診とは異なり、その場で明確にピロリ菌感染による鳥肌胃炎の有無を診断できます。

鳥肌胃炎と診断された場合は、どの程度進行しているかなど胃全体を観察し進行状況を観察します。

スキルス胃がんが発生している場合は、早期であると粘膜の表面に変化がほとんどみられないことがあるため、発見しづらいこともあります。

3. 鳥肌胃炎の治療とは

飲み薬
ヘリコバクター・ピロリ感染が原因とされている鳥肌胃炎の治療は、ピロリ菌除去です。

ピロリ除菌は、2種類の抗生剤と1種類の胃酸を強力に抑える胃薬を1日2回、1週間服用します。抗生剤の副作用で下痢を起こすことが多いので、下痢予防に整腸剤も1週間合わせて服用をします。

治療薬の服用期間は、除菌の成功率が低下することや肝炎を引き起こすリスクを避けるためアルコール摂取を控える必要があります。

治療薬を服用しても除菌が100%成功するとは限らないため、多くの専門機関では除菌薬服用終了後に1か月以上の期間を空け、ピロリ菌が残っていないか確かめるために尿素呼気試験法(呼気検査)などを行いピロ菌除菌の成功の有無を確認します。

初めての呼気検査で除去の失敗判定が出た場合、一次除菌の抗生剤に耐性を持つピロリ菌に感染している可能性があるため、抗生剤の種類を変えて2回目の除菌治療を行います。

2回目の除菌治療も、1回目と同様に治療薬を1日2回、1週間服用します。その後、呼気検査などを行い除菌成功の判定を行います。

3-1. ピロリ菌除去しても胃がんリスクはなくならない

ピロリ菌は胃粘膜に炎症を起こす原因です。ピロリ菌を除去しても既に出来上がった胃炎は残念ながら完全には元に戻りません。既に出来上がった萎縮した胃粘膜から胃がんが発生するリスクが残ります。

鳥肌胃炎の場合は、スキルス胃がんのリスクが高いといわれており、ピロリ菌除去後でもスキルス胃がんが発症する恐れがあります。そのため、ピロリ菌除去後でも、胃の状態を年に一度の胃カメラ検査で確認する必要があります。

ピロリ菌は、5歳までの間に感染しますが、ピロリ菌除菌を行うのは成人になってからというケースがほとんどです。

長い間ピロリ菌が胃粘膜に潜んでおり、長期に渡り粘膜を傷つけている場合は、胃萎縮が進んでいる場合が多く胃がんのリスクが高まります。

4. まとめ

鳥肌胃炎の原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌です。鳥肌胃炎は、慢性胃炎の一種でほかの胃炎に比べると胃がんリスクが60倍高くなるという報告もあります。

とくに、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している若い女性に鳥肌胃炎が多く見られます。鳥肌胃炎は胃カメラで発見することができるので、発見された場合は、適切な治療を受けましょう。

胃の不調が長期に渡ってある場合や家族にヘリコバクターピロリ菌に感染者がいる場合は、専門医を受診し胃カメラ(胃内視鏡検査)を強くおすすめします。

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この記事を書いた人

細川 泰三医師

国立鹿児島大学医学部卒業。
麻生飯塚病院、北九州市立医療センター、国立病院機構福岡東医療センターで多数の消化器内視鏡検査・治療に従事。2020年4月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。