内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

逆流性食道炎・食道がんなど食道にかかわる病気をまとめて解説

食道は咽頭と胃を結ぶ管状の臓器で、上部食道括約筋と下部括約筋で構成されています。食道の長さは約25cmで太さは2~3cmほど、壁の厚みは約4mmの管状の器官で、食物はこの中を通り胃へと運ばれていきます。

そんな食道にも、さまざまな病気があります。たとえば、逆流性食道炎や食道がんといったものが有名ですが、それ以外にもあまり知られていない食道に関する病気が存在します。

今回は、食道にかかわる病気について説明していきます。

1. 食道に関する病気

喉に違和感のある高齢男性
食道に関する病気には

1. 逆流性食道炎
2. バレット食道
3. 食道アカラシア
4. 食道裂孔ヘルニア
5. 食道異物
6. 食道がん
7. 食道カンジダ症
8. 食道乳頭腫
9. マロリーワイス症候群
10. 食道静脈瘤
11. 好酸球食道炎

といったものがあります。

1-1. 逆流性食道炎

逆流性食道炎とは、胃の消化液となる胃酸が食道に逆流してくることで、食道の粘膜に炎症を起こす病気です。逆流性食道炎は、内視鏡所見から、5段階のグレードに分類されます。主な症状としては胸やけや呑酸の症状が現れたり、食べ物がつかえる感じがあります。

逆流性食道炎は近年増加傾向にある病気です。直接的に命にかかわるような病気ではないものの、放置することにより食道がんのリスクが高くなります。逆流性食道炎になりやすい人としては、暴飲暴食を繰り返す、肥満、アルコールや炭酸飲料の過剰摂取、喫煙習慣がある、前かがみの姿勢を取る機会が多い、食後すぐに横になる、などが挙げられますので、まずは生活習慣を整えることを意識しましょう。

1-2. バレット食道

バレット食道とは、胃と食道のつなぎ目の部分で逆流性食道炎などによる炎症が起きた際に、食道下部の扁平上皮という粘膜が胃の円柱上皮という粘膜に置き換わってしまった状態のことです。このバレット食道が3cm未満のものをSSBE(Short Segment Barrett’s Esophagus)、3㎝以上のものをLSBE(Long Segment Barrett’s Esophagus)と言います。

バレット食道の主な症状としては、胸やけ吐き気、呑酸、食べ物がつまった感じ、腹部の張りなど逆流性食道炎とほとんど同じです。

バレット食道になったからといって何か特別な症状がすぐに現れるということはありませんが、バレット食道になるとバレット食道がんのリスクが高くなると言われています。

1-3. 食道アカラシア

食道アカラシアとは、食道と胃のつなぎ目部分が狭くなってしまうことで、食べ物が食道下部で止まってしまう状態のことを言います。発症例は少なく10万人に1人といった割合で発病するとされています。はっきりとした発症原因はわかっていませんが、遺伝的な要素があるのではないかと言われています。

主な症状としては、胸痛や誤嚥、胸のつかえ感、嘔吐などがあります。特に就寝時に嘔吐することがあるという報告もあります。

1-4. 食道裂孔ヘルニア

食道裂孔ヘルニアとは、食道と胃のつなぎ目部分が緩くなってしまうことにより、胃の内容物が食道に逆流しやすい状態になっている状態のことを言います。

自覚症状といったものは特にありませんが、重度の食道裂孔ヘルニアの場合、逆流性食道炎が発症しやすくなります。さらにひどい症状が出る場合には、外科的手術が必要となることもあります。

1-5. 食道異物

食道異物とは、口から摂取した固形の食べ物が食道を通過せず、嚥下困難な状態のことを言います。食道異物で多いのは魚の骨やエビの殻などを食した場合、また食べ物以外だとボタンや折れた歯を誤飲してしまったといったケースです。

食道異物の治療方法としては、水分を多く摂り異物の排出を促すようにする、また内視鏡で除去するといった処置が取られます。

1-6. 食道がん

食道がんは、食道の粘膜に発症する悪性の腫瘍です。2019年度で日本において食道がんと診断されたケースは26,382例、死亡数は2020年のデータで10,981人です。現代では2人に1人ががんになると言われていますが、食道がんの罹患数はそれほど多くなく、男性で2.5%(40人に1人)、女性で0.5%(184人に1人)となっています。

食道がんは扁平上皮がんと腺癌に分かれますが、日本人が食道がんを発症した場合、その90%が扁平上皮がんとなっています。一方の腺癌はこれまで欧米人に多く発症するがんとされていましたが、最近は若い人を中心に欧米型の食生活となってきたこともあり、日本人でも腺がんにかかる人が増えています。

食道がんは初期症状がほとんどありません。がんが進行することによって胸や背中の痛み、飲食物がつまる感じ、咳、声のかすれ、体重減少などの症状が出てきます。いずれのがんもそうですが、早期発見によって内視鏡治療など身体に負担の少ない治療で済みますので、定期的に胃内視鏡検査を受けることが非常に大事です。

1-7. 食道カンジダ症

カンジダとはカビの一種で、人間の皮膚などに生息している常在菌のひとつです。カビ特有の湿った環境を好む性質から、食道の粘膜などにはカンジダが繁殖しやすいという特色があります。そのため内視鏡検査では食道内に粉チーズのようなものが確認できることがあります。

体の免疫力が低下してくるとカンジダが増殖して、食道に感染症をもたらすことがあり、これを食道カンジダ症と言います。主な症状としては、逆流性食道炎のように胸やけや食べ物がつまった感覚、飲み込みにくいといったことが起こります。

食道カンジダ症は自然に治る病気のため、経過観察が取られることがほとんどですが、ひどい場合には抗真菌薬を使って治療されることがあります。

1-8. 食道乳頭腫

食道乳頭腫とは、食道や咽頭の扁平上皮部分に発生する小さなポリープ状の良性腫瘍を言います。大きさはほとんどが1cmに満たないほどで、下部食道に多く発生します。

悪化することはほとんどないため経過観察となることが多く、その後は定期健診や胃内視鏡検査にて現状の確認を行っていくこととなります。

1-9. マロリーワイス症候群

マロリーワイス症候群とは、食道と胃のつなぎ目部分の粘膜が破けてしまい出血してしまう状態のことを言います。飲酒などによる激しい嘔吐を繰り返すことで、食道に腹腔内圧がかかってしまうことが原因とされていますが、飲酒以外にも、激しい嘔吐の繰り返し、咳やくしゃみ、排便、分娩といった際に圧がかかることで発症することもまれにあります。

主な症状としては、悪心や嘔吐後の吐血、さらに出血した血液が胃酸で黒くなり黒色便が出ることもあります。ごくまれに、吐血や下血によりショック状態を引き起こしてしまうこともあるようです。

1-10. 食道静脈瘤

食道静脈瘤とは、食道の粘膜の下にある静脈が腫れて拡張したものを言います。静脈の流れが悪くなると血管に圧力がかかりこぶのようなものができることがあります。それが食道にできたものが食道静脈瘤です。主に門脈圧が上昇することで発生しますので、肝硬変や門脈圧亢進症などの疾患で起こりやすいです。食道静脈瘤は自覚症状がなく、胃内視鏡検査にて発見されることが多いのが特徴です。

症状が進行すると大量吐血や下血を引き起こし、重症の場合には失血性ショックで命を落とすこともあります。

1-11. 好酸球食道炎

好酸球食道炎とは、アレルギー反応に関与した際に現れる好酸球という白血球の一種が食道内部に多く発生し、慢性的に炎症を起こすことで生じる病気を言います。難病に指定されており(指定難病98)、10,000人に2人の割合で発症すると推測されています。

好酸球食道炎の原因はアレルギー反応が要因とされていますが、まだ完全に明らかになっておらず、根治が難しいのが現状です。主な症状としては、腹痛や嘔吐、下痢、食べ物が飲み込みにくい、といったことがあります。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。