内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

胃カメラとはどのような検査?辛い検査ってホント?

胃カメラ検査を受けてみたいと思っていても「胃カメラって辛いんじゃないの?」「胃カメラは受ける前の準備が大変?」と不安を感じている方もいるかと思います。

患者さんから受けた質問の中にも「胃カメラ検査」に関することが多く、胃カメラ検査を検討している方の参考になる質問も多いです。

そこで今回は、胃カメラ検査について皆さんの疑問や不安を解消できる内容を解説します。

1. 胃カメラとはどのような検査か知りたい

胃のイラスト
胃カメラとは、胃内視鏡という管の先端に小型カメラがついた器具を指します。胃カメラ(内視鏡)検査は、口または鼻から胃カメラを挿入し食道、胃、十二指腸まで通し直接それぞれの粘膜を観察する検査です。

粘膜を観察することによって、がん(腫瘍)や炎症など治療が必要になる病気が隠れていないかを観察します。胃カメラ検査は、胃の中はもちろん、食道や十二指腸も観察できる検査で、精度の高い検査です。

1-1. 胃カメラで疑わしい病変が見つかった場合

内視鏡検査では、検査中に疑わしい病変が見つかった場合、その組織を少しだけつまみとり、病理医による顕微鏡検査(生検)で診断を行います。

生検を行うことで、治療が必要なものなのかそうでないかを診断します。

2. 胃カメラの種類

内視鏡
胃カメラには、口から入れる経口内視鏡カメラと鼻から入れる経鼻内視鏡カメラがあり、多くの患者さんから「どちらのほうがラク?」と聞かれます。

検査を受ける条件や状況によって、どちらがおすすめなのかも変わってきます。

2-1. 経鼻内視鏡

鎮静剤を使用せず、起きたままの状態であれば鼻からカメラを通す経鼻内視鏡のほうが比較的ラクに検査を受けられるでしょう。

胃カメラを辛くする原因に「嗚咽反射(おえつはんしゃ)」があります。これは、歯磨きのときに、喉に歯ブラシが当たり「おぇ」となる反応のことです。管が喉の奥にあることで、嗚咽反射が続き辛いため、胃カメラが苦手になってしまう方も多くいます。

経鼻内視鏡であれば、舌の奥にある咽頭に直接管を通すため、嗚咽反射が誘発されにくくなるのです。

・経鼻内視鏡のメリット
経鼻内視鏡のメリットとして、嗚咽反射が起きにくく鎮静剤を使用しなくても検査可能という点が挙げられます。

経口内視鏡の直径が8~9mmに対して、経鼻内視鏡の直径は4~5mmと細いので、経口内視鏡より嗚咽反射が起きにくく、鎮静剤を使わずに検査を受けられることがメリットです。

通常鎮静剤を使用した場合には、お酒を飲んだあとのように判断能力が低下してしまうため検査後の車の運転や機械を使った作業ができません。鎮静剤を使用しなければ、検査後すぐに帰宅できます。

・経鼻内視鏡のデメリット
嗚咽反射が少なくラクに検査が行える経鼻内視鏡ですが、鼻血が出やすい方や鼻腔が極端に狭い方、鼻の疾患がある方、心臓疾患があり血液がさらさらになる薬を飲んでいる方は検査ができない場合があります。

また、スコープが細いことで経口内視鏡に比べると、カメラの画質が劣ってしまう、というデメリットがあります。それ以外にもカメラの可動域が狭く臓器内で観察できる角度に制限が出てしまうのです。

さらに、病変が見つかったとしても管が細いことで、鉗子を出すための穴が小さいため、生検までは行うことができますが、内視鏡治療が行えません。

近年の技術の発達によって、経鼻内視鏡のカメラの画質はよくなっていますが、高額な機器になるため導入している医療機関も数少ないです。

胃カメラ検査を受ける目的は、病気の早期発見であることを考えると、経口内視鏡での検査がおすすめです。

2-2. 経口内視鏡

胃カメラ検査をなぜ行うのかという目的を考えると、経鼻内視鏡よりも経口内視鏡のほうがおすすめです。

経口内視鏡で検査を受ける場合は、検査精度が高くなるため、病変を早期発見し早期治療する胃カメラ検査の本来の目的を果たすことが期待できます。経口内視鏡検査をラクに受けるには、鎮静剤を使用できる医療機関を選びましょう。

鎮静剤を使用することで、ウトウトしているうちに検査が終わり、嗚咽反射や空気によって膨らむ胃の違和感もありません。

内視鏡専門医から見たときに、鎮静剤を使った経口内視鏡検査がもっともおすすめの選択といえます。

3. 胃カメラ検査の前日の注意

男性医師
胃カメラ検査において、検査前日の準備はほとんどありません。
ただし、鎮静剤を使用する場合や過去に胃の疾患を患ったことがある方には注意点があります。

3-1. 鎮静剤を使用する場合

鎮静剤を使用し経口内視鏡検査を行う場合には、事前の問診で下記のことを確認します。

・体格
・年齢
・性別
・飲酒の有無
・アレルギーの有無

上記以外にも問診で細かな質問に答え、その方に合った鎮静剤の種類や量が医師によって処方されます。

体調がすぐれない場合や寝不足の状態で、問診で決定した量の鎮静剤を使用すると効きすぎてしまう恐れがあります。そのため、鎮静剤を使用する場合は、しっかりと睡眠をとりましょう。

3-2. 前日の食事について

大腸カメラ検査とは違い、胃カメラ検査では前日から食べてはいけないものや避けるものなどはありません。検査前日は、22時までに食事を済ませておきましょう。

開腹によって胃がんの手術を受けている方や腹腔鏡手術をしたことがある方で胃の一部を切除している場合は、胃が食物を消化するのに時間がかかります。

その場合は、胃の消化能力を考慮し、18時までに食事を済ませておく必要があります。ただし、早期胃がんで胃を残したまま胃の内側だけくりぬく手術を行った方は、22時までに食事を済ませれば大丈夫です。

胃の消化を助けるために、検査までの間に多めの水分をとることも推奨しています。

・水
・麦茶
・スポーツドリンク

上記に挙げた水分は、検査直前まで飲んでも検査に影響はありません。

逆に検査前に避けたいものは、下記のものです。

・コーヒー
・コーンポタージュ
・味噌汁

上記の水分は、胃に色が付きやすく残りやすいので検査に支障をきたす恐れがあります。

4. 胃カメラ検査当日について

水を飲む女性
胃カメラ検査の当日について、知りたい方も多くいるかと思います。特に多く聞かれるのが、検査後の食事についてです。

4-1. 咽頭麻酔を使う

胃カメラには、経口内視鏡と経鼻内視鏡の2つがありますが、それぞれ口から食道へのルートなのか、鼻から食道のルートなのかの違いのみで咽頭を通過します。

咽頭を通過するため鎮静剤を使用するしないにかかわらず、咽頭麻酔を行います。咽頭麻酔の目的は、カメラが入るときに起こる咽頭反射(嗚咽反射)の軽減です。

咽頭麻酔では、歯科医院でも使用されるキシロカインという局所麻酔のスプレーを使用します。咽頭麻酔が効きはじめると、唾の飲み込みなどの感覚が鈍くなります。歯科医院で局部麻酔をしたときに、知らない間によだれが口からこぼれてしまったという経験はありませんか?

まさに、この麻痺のような感覚が喉にも起きるのです。

4-2. 検査あとはすぐに食事ができません

麻酔が効いている間は喉の感覚がなくなるので、誤って気管に食べ物や飲み物が入っても自分では気が付かず、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こすリスクが高くなってしまうのです。

本来、気道と食道には酸素と食べ物を察知し切り替えをする弁があります。誤って食べ物や飲み物が気道に入ってしまった場合には、咳などを起こし外部へ排出する機能がありますが、麻痺した状態ではその反応が鈍くなってしまうのです。

検査後は、1時間ほど時間を空け麻酔が解けるのを待ちます。麻酔が解けたか確認するために1時間後に少しだけ水を飲み、むせたりしなければ食事の許可が出ます。

当院の場合は、鎮静剤を使用した経口内視鏡検査を行っているため、目が完全に覚めるとされる約1時間は休んでいただきます。同時に、咽頭麻酔もその間に効果がなくなります。

朝から食事をとっていないことや胃カメラの緊張感から解放するための意味合いも込め、軽食を用意しています。

5. 検査後の異変があれば病院へ連絡すること

病理検査
経口内視鏡での検査において、病変を疑う炎症やポリープなどが見つかった場合、組織の一部を切り取る「生検」を行う場合があります。

切り取った組織からの出血によって貧血や黒い便が出るなどの症状が現れるケースがまれにあります。

通常、生検を行っても少量の出血があるだけで自然止血しますが、血液をさらさらにする薬を服用している場合には、予想以上の出血があります。貧血や黒い便が出るなどの症状は、出血が止まっていない可能性があるためすぐに病院へ連絡しましょう。

6. まとめ

病気を発見する医師
胃カメラを受けたことがない方にとって、「胃カメラ検査が辛い」という情報は不安材料になるでしょう。

鎮静剤を使用した経口内視鏡であれば、嗚咽反射も軽減されラクに検査を受けられる上、精度の高いカメラで直接病変や炎症の有無を確認できるので、病変の早期発見と治療ができます。

胃カメラ検査の不安が少なければ、リラックスして胃カメラ検査を受けられるのではないでしょうか?もし、気になることや不安なことがあれば、検査前に医師に確認しておくことも大切です。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。