アニサキスとは?突然の激痛と吐き気!胃アニサキス症について解説
皆さんは、「胃アニサキス症」という疾患をご存じでしょうか?胃アニサキス症は、突然発症する激しい胃痛、吐き気を伴う疾患です。
主な原因は、アニサキスの幼虫が寄生している新鮮な魚介類を食べることです。イカ、イワシ、アジ、サバ、カツオ、サンマなどの魚介類を生、または不完全に加熱・冷凍した状態で食べると、寄生しているアニサキスも一緒に人の体内に入り、胃に刺入します。これが胃アニサキス症です。
今回は、胃アニサキス症がどのような疾患なのか解説します。
イカ、イワシ、アジ、サバ、カツオ、サンマなどの魚介類に寄生する寄生虫のひとつです。アニサキスは、乳白色で長さ2~3cm、幅0.5~1mmの大きさで肉眼でも確認できます。
アニサキスは、寄生している魚介類が死亡しても死滅しません。魚介類が生きている間は内臓に寄生していますが、魚介類が死亡した数時間後には内臓から筋肉へ移動することがわかっています。
新鮮な魚介類は、購入後すぐに内臓を取り除くことが大切です。ただし、魚介類が生きていてもすでに筋肉内にアニサキスが寄生していることもあるため、調理するときには目視やブラックライトを当てアニサキスがいないかを確認するようにしましょう。
アニサキスを発見した場合には、それらの魚介類を食べないようにすることが重要です。
アニサキス症は、魚介類に寄生したアニサキスが体内に生きたまま潜入することで起きます。アニサキスは、胃をはじめ腸や腸管外にも寄生することがわかっていますが、ほとんどの場合は、胃に寄生します。
世界では、1963年にはアニサキス症の原因がアニサキスの寄生によるものだと特定できていました。日本では、内視鏡の普及とともに1970年代以降からアニサキスの摘出が可能となったため、アニサキス症の実態が把握できるようになったのです。
アニサキスが寄生している魚介類を食べることで、さまざまな症状を発症します。
主な症状は、生鮮魚介類を食べた1時間~数時間後に起きる激しい胃痛です。この胃痛は今までに経験のないような痛みで、場合によっては床を転がりまわるほどの痛みだと表現する方もいます。また、胃の防御反応として吐き気や嘔吐を引き起こす場合もあります。
それ以外にも、かゆみやじんましんなどのアレルギー症状が現れるケースもあるのです。
激しい胃痛を訴え受診した場合、まず問診を行います。胃アニサキス症では、問診の結果がとても重要です。魚介類を生で食べた数時間後に嘔吐や胃痛が出ている場合には、必ず医師にそのことを伝えましょう。
問診を行いアニサキスが疑われた場合、胃内視鏡検査によって胃壁内にアニサキスがいないかを確認します。
アニサキスが発見されたら、鉗子(かんし)と呼ばれる先端がマジックハンドのようになった器具を用いて、アニサキスを摘出します。アニサキスの検出ができれば、劇的に症状が改善するのが胃アニサキス症の特徴です。
アニサキスは胃壁に食い込んでいるので、鉗子で摘出するときに途中で虫体が切れないよう慎重に行います。また、アニサキスは数匹潜入していることも多いため、胃壁の隅々まで観察し、残らず摘出することもポイントです。
生鮮魚介類摂取後の胃痛や腹痛がある場合は、アニサキスを疑い即座に内視鏡検査を行います。
胃カメラを行ったことがある方の中には、「胃カメラは苦手」という方もいるでしょう。それは、口から入るホースのような内視鏡に嗚咽が止まらず辛い経験をしているからだと思います。
すでにアニサキス症によって胃痛や腹痛、吐き気のある中でさらに苦しい思いは避けたいです。そのような希望がある場合には、鎮静剤を使う内視鏡専門の医療機関を選択しましょう。
アニサキスが寄生している魚介類を食べることで、胃に入り込み胃壁に潜入すると聞くと「アニサキスが胃壁に噛みつくから痛みが出るんだ」と思われる方もいるでしょう。
実は、アニサキスが胃壁に噛みつくことで胃痛が起きているのではありません。
胃アニサキス症の胃痛は、アニサキスが胃壁に突き刺さることによる直接の痛みではなく、アニサキスが胃壁に食い込むことでアレルギー反応が起きるためです。
アニサキスが胃壁に食い込み分泌する物質によって、胃壁周囲の粘膜がアレルギー反応を起こし炎症が生じます。粘膜周囲が腫れることで痛みが起きるのです。
また、アレルギー反応が強く出ると、かゆみやじんましん、ひどいときにはアナフィラキシーショック症状が出るケースもあります。
実は、アニサキスは胃だけではなく小腸や大腸へ移動してしまうケースがあり、腸へ移動したアニサキスによって激しい腹痛や腸閉塞を起こす症例もあるのです。
アニサキスを摘出すれば、激しい胃痛や嘔吐などの症状はほとんど治まります。
一方で体内にアニサキスが入っても3~4日で弱り、1週間で死滅するといわれており、無症状、軽い腹痛・胃痛で治まる場合もあります。
アニサキス症は感染症と思われる方もいますが、食中毒の一種です。
アニサキスによる食中毒は、2012年まで食中毒統計の中で「その他」の扱いでした。2012年以降アニサキスを原因とする食中毒は、独自項目となり2013年からは中毒統計で個別に集計されるようになりました。
厚生労働省が行っている「アニサキスによる食中毒発生状況」によると、令和元年から令和4年まで、年間で約300~400名の患者が確認されています。ただし、症状が軽く自覚症状がないままアニサキス症が改善されているケースもあると推測されるため結果よりも推計は多くなるでしょう。
また、アニサキスによる食中毒は、食中毒全体の40%を占めています。
参照:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/anisakis.html
アニサキスによる胃アニサキス症や腸アニサキス症、アニサキスアレルギーを予防するには、下記の方法があります。
・60度以上で1分以上の加熱をする
・マイナス20度以下で24時間以上の冷凍処理を行う
・生食で魚介類を食べるときは目視でアニサキスの有無を確認する
・生の魚介類の内臓は食べない
・釣りなどで取った魚やまるごと1匹の魚を購入した場合は内臓を早めに取り除く
・生魚は天然ではなく養殖を買う
・アニサキスは塩漬け、酢漬け、醤油、わさびでは死滅しないことを理解する
イカ、イワシ、アジ、サバ、カツオ、サンマなどの魚介類の主に内臓もしくは身(筋肉)に寄生していることも覚えておきましょう。また、冷凍されていないシメサバを購入する場合にも目視でアニサキスの有無を確認したほうがよいでしょう。
アニサキス症の症状と似ているものに、アニサキスアレルギーという疾患があります。
アニサキスアレルギーになってしまうと、アニサキスの死骸でもアレルギー反応を起こしてしまうため魚介類全般が食べられなくなってしまうのです。
アニサキスアレルギーとは、アニサキスのタンパク質をアレルゲン(抗原)として発症するアレルギーのことです。魚介類の生食後6時間以内に、じんましんやかゆみなどを主としたアレルギー症状が起き、ひどい場合は血圧降下、呼吸苦、意識消失などのアナフィラキシー症状を起こす症例もあります。
一度アニサキス症を起こすと、アニサキスアレルギーを引き起こしやすくなるのが特徴です。アニサキスアレルギーの原因となるアニサキス抗原は複数ありますが、中には加熱や冷凍処理をしても抗原性を失わないアニサキス抗原があります。そのアニサキス抗原にアレルギー反応を起こす体質になってしまうと、しっかりと加熱処理された魚を食べてもアレルギー反応が出てしまうのです。
魚介類好きの方にとって、一生魚介類が食べられなくなるのは辛いことでしょう。アニサキス症、アニサキスアレルギーを回避するには、アニサキス抗原を極力体内に入れないことが重要です。魚介類の生食の際は、十分気をつけましょう。
寿司やさしみなど生で魚介類を食べた数時間後に、激しい胃痛や吐き気、嘔吐がある場合は、胃アニサキス症の疑いが高くなります。その場合には、必ず消化器内科を受診し生で魚介類を食べたと伝えるようにしましょう。
とれたての魚介類は美味しいですが、アニサキス症を予防するには十分加熱されているかもしくは一度冷凍されている魚介類を食べることがおすすめです。
自身で釣り上げた魚などを生で食べる場合にも、釣り上げた魚の内臓をすぐに取り除き、調理するときに目視でアニサキスの有無を確認するようにしましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。