内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

腹式呼吸の効果とは?メリットと正しい方法

皆さんは普段、呼吸の仕方を意識したことはありますか?呼吸は無意識に行われているものなので、意識して行っているという方はあまり多くないと思います。そんな無意識に行われている呼吸ですが、呼吸にはいくつかの方法があります。

普段私たちが無意識に行っている呼吸は胸式呼吸とよばれる方法ですが、呼吸法は意識することで変えられます。

いくつかある呼吸法の中でも、体にさまざまな効果やメリットがあると期待されているのが腹式呼吸です。腹式呼吸は、これまでにも体によいと注目されており、身体的な面だけではなく、精神的な面においても効果があるといわれています。

今回は腹式呼吸で期待できる効果やメリット、正しい腹式呼吸のやり方について解説します。

1. 腹式呼吸とは?

深呼吸する女性
呼吸は腹式呼吸(ふくしきこきゅう)と胸式呼吸(きょうしきこきゅう)に分けられます。
腹式呼吸とは、胸とお腹を仕切っている横隔膜(おうかくまく)という筋肉を動かす呼吸法です。

横隔膜は肺の下にあり、腹式呼吸では横隔膜を下げて空気を取り込みます。胸はあまり大きく膨らまないので、肺に負担が少ないのが特徴です。

1−1. 腹式呼吸と胸式呼吸の違い

腹式呼吸と胸式呼吸の違いは、横隔膜の使い方です。普段の生活の中で無意識にしている呼吸は、胸の肋間筋(ろっかんきん)を使う胸式呼吸です。腹式呼吸は、肋間筋と横隔膜を使って空気を取り込みます。

呼吸の役割の一つに、体内の空気の交換があります。呼吸と密接な関係がある肺は、実は自ら伸びたり縮んだりすることはできません。周りの筋肉や骨が動くことによって伸縮できるのです。

腹式呼吸と胸式呼吸を比較すると、腹式呼吸のほうが横隔膜を3倍〜4倍動かすといわれています。肺は横隔膜に引っ張られると広がりやすくなり、胸式呼吸よりも吸える空気の量が多いといった違いがあります。

2. 腹式呼吸に期待できる効果とは?

ベッドの上で深呼吸する女性
腹式呼吸に期待できる効果は、肺だけではなく体全体にいい影響を与えることです。

普段、無意識に行っているのは胸式呼吸ですが、意識すれば腹式呼吸を行うことができます。腹式呼吸は、自律神経を調節したり、全身の筋肉を弛緩させたりできるので、さまざまな効果やメリットが期待できます。

2-1. 便通の改善

腹式呼吸には、便通の改善が期待できます。腹式呼吸は横隔膜を大きく動かすので、腹部内の圧力が高まり、その圧力が排便をサポートするのです。また、腹式呼吸をすることによって腹筋と腸が刺激され、便意をもよおすきっかけにつながるので、便秘で困っている方には、腹式呼吸が有効です。

2-2. ストレス軽減

腹式呼吸には、ストレスを軽減する効果が期待できます。人は長期間のストレスや、不安や緊張が強くなると運動をしていなくても、息が上がる場合があります。これは、呼吸が浅くなることが原因です。

腹式呼吸には自律神経を調節し、副交感神経を優位にする働きがあります。副交感神経には、心拍数を下げ消化器への血液供給量を増加させることで、体を休息した状態へと導く作用があります。

緊張して落ち着かない場合やストレスを感じてイライラしているときに、意識的に腹式呼吸を行ってみましょう。

2-3. リラックス効果

腹式呼吸は、リラックス効果が期待できます。ストレス軽減と同じように、腹式呼吸によって、迷走神経が刺激され副交感神経が優位になり、リラックスできるようになります。

また、睡眠の質を上げたい方にも腹式呼吸はおすすめです。ちなみに横になっている状態では自然と腹式呼吸となるので、就寝前はゆっくりと大きい呼吸を数回すると、体がリラックスした状態になり、眠りにつきやすくなるでしょう。

2-4. ダイエット

近年、腹式呼吸を行う運動やダイエット方法が多く見られるようになりました。腹式呼吸を行うと内臓や普段あまり使わない筋肉が刺激され、血行が促進されるので代謝が上がり、内臓脂肪の減少やダイエットに効果があるといわれています。

また、腹式呼吸をするときに動かす横隔膜は、インナーマッスルの一つです。ダイエットには、インナーマッスルの強化が効果的といわれていますので、腹式呼吸もぜひ取り入れてみましょう。

2-5. 逆流性食道炎の改善

腹式呼吸は、逆流性食道炎の方の治療法の一つです。腹式呼吸をしたからといってすぐに完治するわけではありません。しかし、腹式呼吸によってお腹の腹腔内圧が高まり、横隔膜を上下に動かすことができます。

その結果、横隔膜が鍛えられて、逆流性食道炎にかかわる下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)が正常に働くようになり、胃酸の逆流防止や胃腸の機能改善につながります。

また、消化機能や腸の動きそのものがよくなるので、胃酸が逆流しにくくなるといった効果が期待できるのです。

2-6. 免疫力の向上

腹式呼吸は、副交感神経を優位にするのでリンパ球数が増加し免疫力の向上が期待できます。

リンパ球とは白血球の一部で、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体を攻撃する役割があります。つまり、腹式呼吸で副交感神経が優位となり、リンパ球が増加するので免疫力向上につながるのです。

3. 腹式呼吸のデメリットとは?

疲労を感じる高齢女性
メリットが多い腹式呼吸ですが、デメリットもあります。
メリットや効果が多いからといって、やりすぎは禁物です。ここでは、腹式呼吸のデメリットを解説します。

3-1. 無意識に行うことが難しい

腹式呼吸は、日常生活の中で無意識にやるのは難しい呼吸法です。先にもお伝えしていますが、私たちが普段行っている呼吸法は、胸式呼吸です。そのため、自分で時間を決めるなど意識しなければ、腹式呼吸を行うことは難しいのです。

3-2. やりすぎるとめまいを引き起こす

腹式呼吸をやりすぎると、クラクラするなどめまいを引き起こすリスクがあります。

腹式呼吸を行う際は、めまいで倒れてしまわないよう、壁や椅子の近くでやるようにしましょう。やりすぎは禁物です。体調や慣れに応じて無理のない回数だけ行いましょう。

4. 腹式呼吸の正しいやり方

腹式呼吸
腹式呼吸は正しいやり方で行うことが大切です。
腹式呼吸の正しいやり方は、息を吸うときにお腹を膨らませて、吐くときにお腹をへこませます。

ふーっとゆっくりと6秒くらいかけて息を吐ききったあと、鼻からゆっくりと3秒くらいかけてお腹を膨らませるように意識して息を吸い込みます。これを5分~10分程度、繰り返し行います。

息を吐くときはお腹がぺったんこに、息を吸ったときにはお腹が膨らんでいることを意識して呼吸すると、より深い呼吸ができます。慣れないうちは、特に息を吐くことに意識を集中するとよいでしょう。横になることで自然と腹式呼吸ができるので、慣れるまで仰向けになって行い、慣れてきたら座った状態や立った状態で、腹式呼吸を行うとよいでしょう。

正しく腹式呼吸ができているか確認する場合は、下腹部と胸に手をあてましょう。お腹が動き、胸が動いていないかで確認できます。

4-1. 腹式呼吸を継続するためのポイント

腹式呼吸は慣れないうちは、なかなか継続が難しいかもしれません。しかし、毎日継続するためには、1日の中で腹式呼吸を行う時間を決めて、意識的に行うことがポイントです。

時間は1日、朝晩10分程度で十分です。腹式呼吸だけを行う時間を取るのが難しい方は、テレビ見ながらや家事の合間などに行うとよいでしょう。また、慣れたきたら時折、正しくできているか確認してみるのがおすすめです。
毎日、ゆっくり腹式呼吸を行うことで、便秘や逆流性食道炎などの症状の改善が期待できます。

5. まとめ

深呼吸をする男女
腹式呼吸は毎日継続することで、便秘や胃酸の逆流の改善、ストレス軽減、リラックス効果、ダイエットなどさまざまな効果が期待できます。毎日、朝晩決まった時間に約10分程度、呼吸をしながら自分の体と向き合ってみましょう。腹式呼吸は道具を準備する必要がないので、いますぐ誰でもできる健康法です。

腹式呼吸に効果を感じるためには、意識して正しいやり方で行うことが大切です。やり過ぎにならないように、できる範囲で毎日の生活の中に取り入れましょう。腹式呼吸だけではなく、何事もやり過ぎは禁物です。

腹式呼吸を継続しても便秘が解消しなかったり、胃腸の不調に悩んだりしている方は、早めに医療機関に相談しましょう。胃がんや大腸がんは、早期発見・早期治療が重要です。内視鏡検査を定期的に行って、健康維持に努めましょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。