内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

腫瘍マーカー検査でがんの早期発見はできる? がん検診でおすすめしない理由を解説

みなさんは毎年、がん検診を受けていますか?がん検診はがんの早期発見はもちろん、自分の健康について振り返る機会になっている方も多いのではないしょうか?
がん検診や健康診断はがんをはじめ、生活習慣病の早期発見や予防といった観点からも、とても大切な役割を担っています。

厚生労働省が発表した『令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況』にある「性別にみた死因順位」では、男女ともに悪性新生物が1位です。

がん健診は臓器ごとに検査を行う必要があるため、採血するだけでわかる腫瘍マーカー検査で体内にがんがあるかどうかを調べてほしいという方もいらっしゃいます。
しかし、腫瘍マーカー検査でがんの早期発見はむずかしいと考えられます。

今回は腫瘍マーカー検査とはどんな検査なのか、がんの早期発見に有効な検査とは何かについてご紹介します。

1. 腫瘍マーカー検査とは?

血液検査
腫瘍マーカー検査とは体内にがんがあるかどうかを調べる血液検査です。通常、体内ではさまざまなホルモンや酵素、タンパク質が作られていますが、がんが体内にできるとこれらの数値が上昇したり、健康なときにはない物質が現れたりします。

臓器によって増加するホルモンや酵素、タンパク質の種類が異なるため、どの種類の物質がどれくらいの量増えているのかを血液検査で調べ、どの臓器にがんがあるかを見極めます。

2. がん検診で腫瘍マーカー検査は受けた方がいい?

男性医師
がん健診で腫瘍マーカー検査を受けることはオススメしません。
腫瘍マーカー検査でがんの早期発見ができるとイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、腫瘍マーカーの測定でがんの早期発見はむずかしいのが現状です。

基本的に健康診断やがん健診で腫瘍マーカー検査を受けるのは、余分な費用がかかるだけで臨床的にはあまり意味がないといえるでしょう。

腫瘍マーカー検査が行われる目的は、既に癌の診断がついている人に対してがんの治療効果の判定や進行状況を確認、再発や転移の早期発見のためだからです。

2-1. 進行したがんに有効なスクリーニング検査

腫瘍マーカー検査はがんの早期発見のために行う検査ではなく、進行癌に対して抗がん剤治療などのがん治療が必要な患者に対して治療前後の数値を比較し、その治療が効いているのかどうかの効果を推測するための指標として用いられます。
治療の効果判定には、CT検査などの画像診断を行いますが、短期間で頻回にCT検査を行うことは、放射線被曝の影響から他の健康被害が生じるリスクもあります。
つまり、薬剤そのものが効いているのかの見極めや術後の患者の負担を軽減するためにCTこのため、CT等の画像検査での治療効果判定を行う回数を減らすために腫瘍マーカー検査を適時行いながら、例えば、腫瘍マーカーの数値が上昇している場合には、CT検査を早めに行い、癌の悪化を見落とさないなどの治療の効果判定の指標として用いています。

腫瘍マーカーは、がんが進行したときに数値が上昇する傾向にあるため、腫瘍マーカー検査で異常値が確認された場合は、進行した癌がある可能性があります。
しかし、進行癌であっても腫瘍マーカーが正常のままであるケースも非常に多くあります。
早期癌の場合は、ほとんどの場合で腫瘍マーカーは正常値のままです。
また、どんなに精密検査を行っても癌は無いにも関わらず、体質的な問題で腫瘍マーカーだけが高値を示す人もいます。
このような理由から、癌を早期発見するための検査として、健康診断で腫瘍マーカー検査を受けるのはおすすめできません。正常値であっても早期癌が存在する可能性があるからです。

2-2. 数値だけでは判断できないケースがある

がんが進行したときに腫瘍マーカー検査の数値が上昇するとお伝えしましたが、実は全身にがんが転移しているような状況であっても、腫瘍マーカーが陽性にならないケースがかなりあります。

その一方で、体内にがんが存在しないにもかかわらず、腫瘍マーカー検査の値が上昇しているケースも見られます。こうした検査結果には、カットオフ値が関係しています。カットオフ値とは、さまざまな検査において陽性と陰性を識別するための数値であり、腫瘍マーカー検査においてもカットオフ値は決められています。

腫瘍マーカー検査のカットオフ値はがん患者と健康な人の測定値をもとに決められているため、ときに健康な人であっても一般的に示される数値と異なる動きを示す場合もあるのです。
もし腫瘍マーカーで高値の結果が出た場合は、経過観察を行ったり、その他の検査を行い、本当に癌が存在するのかの診断がなされます。

3. 例外もある!腫瘍マーカー検査ががんの早期発見につながる疾病とは

男性の股間
基本的に腫瘍マーカー検査ではがんの早期発見は難しいですが、一つだけ例外があります。それは男性のみに発症する「前立腺がん」です。前立腺がんになると、前立腺で作られるタンパク質の一つであるPSA(前立腺特異抗体(ぜんりつせんとくいこうたい))の分泌量が上昇します。

前立腺がんの場合は、早期からPSAが上昇するため腫瘍マーカー検査でPSAの値を調べれば、早期発見できる可能性があります。しかし、PSAで高値という結果が出ても、必ずしも前立腺がんというわけではなく、「前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)」や前立腺の炎症などでも高くなるケースがあります。

40歳以上の男性には、前立腺がんの早期発見のためにがん検診で腫瘍マーカー検査を受けましょう。

4. がんの早期発見に有効な検査とは?

CT検査
がんの早期発見に有効な検査は、画像検査です。画像検査は、体内にがんがあるかどうかを見極めるスクリーニング検査として適切な検査方法です。
画像検査には、CT・MRI・腹部エコー検査・内視鏡検査などがありますが、臓器の特徴によって適している画像検査は異なります。

4-1. CT・MRI・腹部エコー検査が適している臓器

CT・MRI・腹部エコー検査が適しているのは、中身が詰まっている充実性臓器とよばれるような肝臓・心臓・脾臓などです。
CT検査はがんの診断でもっとも基本的な画像診断で、撮影した画像によってがんの有無や大きさなどを客観的に判断できます。

MRI検査は、CT検査では判断がつきにくい脳や肝臓、骨などにがんがあるかどうかを診断するのに適していますが、臓器自体が動く心臓や腸管などは像がぶれてしまうため向いていません。

腹部エコー検査は、超音波検査とも呼ばれており、痛みもなく体に負担が少ない検査です。腹部エコー検査の対象となるのは、肝臓・胆管・脾臓・膵臓・腎臓などです。
これらの画像診断は、がんの有無だけではなくその他の疾病の早期発見にも有効であるため、人間ドックを受ける際はオプションとしてつけるとよいでしょう。

4-2. 内視鏡検査が適している臓器

がん検診で内視鏡検査が適しているのは、管腔臓器(かんくうぞうき)とよばれる食道や胃、大腸などのような中身が空洞になっている筒状の臓器です。これらの臓器は意思に関係なく、口から入ってきた食べ物を消化するために常に動いています。

そのため、撮影しているときに臓器が伸びきっていれば突出しているような腫瘍を発見できますが、臓器内部がシワになっていたり縮んでいたりすると、初期のがんを発見できません。

CTやMRI、腹部エコー検査では早期発見は難しいのが現状です。CTやMRI検査で管腔臓器のがんをまったく捉えられないわけではありませんが、これらの検査でがんが発見された場合はかなり進行している状態と考えられます。

内視鏡検査はつらいというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、管腔臓器の場合は直接内側を目で確認できる内視鏡検査に勝るものはありません。

現在では苦痛を和らげる鎮静剤や体に負担が少ない経鼻内視鏡など、検査を受ける方の心身における負担を軽減した内視鏡検査を実施しているクリニックも多く存在します。
35歳以上になったら、食道がん・胃がん・大腸がんの内視鏡検査を受けるようにしましょう。

5. まとめ

女性看護師
医療の進歩に伴いがんはひと昔前と比べると、生存率が向上してきています。しかしながら、日本人の死亡要因の1位はがんです。がんは早期発見、早期治療が重要です。

こうしたことが広く周知されているからこそ、がん検診で腫瘍マーカー検査を希望する方も多いのではないかと考えられます。

しかし、腫瘍マーカー検査は基本的にがんの早期発見に向いていません。がんを早期発見するためには、適切な画像診断を行うことが重要です。
とくに内視鏡検査はつらいイメージがあるかもしれませんが、苦痛を和らげながら検査を実施してくれるクリニックもあります。

35歳を過ぎたら年に1度、がん検診を受けるようにしましょう。健康な体こそが、より豊かな毎日を送るために大切ではないでしょうか。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。