内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

大腸癌の検診ってどんなことをするの?大腸癌は早期発見・早期治療が大切!

皆さんは毎年、大腸癌検診を受けていますか?検診は病気の早期発見・早期治療に重要な役割を果たしています。わかっていても胃や大腸などの内視鏡検査は、少なからず苦痛を伴う場合もあるため、なかなか受ける気持ちになれないという方もいらっしゃるかもしれません。

しかし近年、日本では大腸癌で亡くなる方が増加傾向にあります。令和2年に厚生労働省が発表した日本人の死因順位の第1位は悪性新生物で、その中でも大腸癌の死亡数は男性で3位、女性では1位と発表されています。

この記事では大腸癌の早期発見・早期治療の大切さや、大腸内視鏡検査をはじめとする大腸癌検診、大腸癌の死亡数が日本で増加している理由について解説します。

1. 大腸癌の検診はどんな検査をするの?

検便の写真
大腸癌の検診でもっとも多く行われるのが「便潜血検査(べんせんけつけんさ)」です。2日分の便を採取し、便に血が混じっていないかを検査します。

2日分の便を採取するのは診断率を上げるためです。食道や胃で出血をした場合、胃液により血液が変性しますので、便潜血検査では陽性になりません。つまり、便潜血検査は、大腸内で出血するような病気がないかを調べる検査です。

癌やポリープがあると便に血が混じることがありますが、症状が早期の場合は目で潜血の有無が確認できないため、便潜血検査が有効です。

具体的な数値では、早期大腸がんの50%以上が便潜血陰性であり、進行大腸がんでも約30%が便潜血陰性と言われています。このため、便潜血陰性であっても大腸がんを否定することにはなりません。

便潜血検査で異常が認められると精密検査が必要となります。その病状によって精密検査の方法はさまざまですが、主に以下の3つが多く用いられています。

1-1. 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸内視鏡検査は「大腸カメラ」のことで、精密検査でもっともよく行われています。下剤で腸内を空にしたあと、内視鏡を肛門から挿入し直腸から盲腸まで観察しながら、ポリープなどの病変の有無を確認します。

病変が確認された場合は、病変の一部の組織やポリープそのものを採取し、病理検査を行います。まれに出血や腸に穴が開くなど偶発症がみられますが、診断精度が一番高い検査です。

1-2. 注腸造影検査

注腸造影検査は、下剤で腸内を空にしたあと、肛門からバリウムと空気を注入しX線写真を撮影します。注腸造影検査は大腸内視鏡検査と併用されることが多く、癌の正確な位置や形、大きさなどがわかります。

いろいろな角度から大腸全体の様子を観察できるといった特徴があります。ただし、注腸造影検査は病変が有無を見る検査であり、病変があると診断された場合、大腸内視鏡検査を再度受ける必要があります。

1-3. 大腸CT検査

一般的に行われるCT検査は、X線を使用して、体の内部を画像化する検査です。周辺臓器に癌が広がっていないか、転移がないかを調べます。

またCT検査には、「CTコロノグラフィ検査」という3DのCT検査があります。CTコロノグラフィ検査は、肛門から二酸化炭素を注入してCT撮影をします。内視鏡検査と同じような画像を撮影できますが、病変が確認されるケースでは内視鏡検査が必要です。

2. 大腸癌とはどんな病気?

便秘の女性
大腸癌とは大腸に発生する癌で、大きく2つにわけることができます。一つは大腸の内側にできた腺腫という良性のポリープが癌化するものと、正常な粘膜から癌が発生するものです。

一般的には、大腸癌の約8割が、大腸ポリープから癌化するといわれています。どちらの場合も癌が進行すると、粘膜から大腸壁を作っている筋層に癌細胞が入り込み、血管やリンパ管を通って全身へと広がっていく恐れがあります。

2-1. 症状

大腸癌の初期段階では、自覚症状はほとんどありません。進行すると自覚症状が現れますが、症状に気づいたときには癌が進行していると考えられます。
主な自覚症状は以下のとおりです。

・血便(便に血が混じる)
・下血(腸から出血し赤や赤黒い便が出る、便の表面に血がついている)
・下痢と便秘を繰り返す
・細い便が出る
・残便感がある
・腹部膨満感(お腹が張る)
・腹痛
・貧血
・体重が減る

2-2. 大腸癌が発生する要因

大腸癌が発生する要因は、喫煙や食生活の生活習慣や遺伝などです。喫煙は大腸癌だけではなく、さまざまな癌の発生リスクを高めます。

食生活では、牛肉や豚肉などの肉類、ハムやベーコン、ソーセージなどの加工肉の過剰摂取、飲酒が大腸癌の発生リスクを高めると考えられています。

国立がん研究センターの研究結果によると、1日9gの牛肉を食べると大腸がんのリスクが上昇します。1ヶ月に換算すると270gです。豚肉は1日36gまでです。1ヶ月に換算すると1kgまでは大丈夫な計算になります。
加工肉は深刻です。基本的にほとんど食べないことが基本と考えてください。
ちなみに、鶏肉には基本的に大腸がんリスクはありません。たくさん食べても大丈夫です。

その他、生活習慣だけでなく、体脂肪や腹部の脂肪が多い人、身長が高い人、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群が近親者にいる場合も大腸癌の発生リスクが高い傾向にあります。

3. 日本人に大腸癌が多い理由とは?

ステーキとポテト
近年、日本人の大腸癌の罹患率や死亡数が増加しており、国立がん研究センターの統計(全国推計値)によると日本で大腸癌と診断される人は1日に433人、大腸癌で亡くなる人は1日に139人といわれています。

また男性は11人に1人、女性は13人に1人が大腸癌と診断されていると推計されています。想像以上に、大腸癌と診断される方が多いと思ったのではないでしょうか?

なぜ近年、日本において大腸癌と診断される方が増加したのでしょうか?その理由の一つに「食の欧米化」があります。次に、大腸癌の死亡数をみていきましょう。

厚生労働省が発表した2017年の人口動態統計によると、1年間の大腸癌の死亡数が日本は5万681人、アメリカは5万260人でした。数字だけを見るとその差はわずかですが、アメリカの人口は日本の約3倍ですので、日本の大腸癌での死亡数の割合が高いことがわかります。

食の欧米化は確かに大腸がんの罹患率を高くしていると推測できますが、死亡数の増加はまた違う理由が考えられます。

3-1. アメリカが日本より大腸癌の死亡数が少ない理由

アメリカが日本よりも大腸癌で亡くなる方が少ない理由は、大腸内視鏡検査の受診率が大きく影響していると考えられます。

アメリカでは、約67%の人が大腸内視鏡検査を含む大腸検診を受けていますが、日本では約40%とアメリカと比べると低い割合です。

先にお伝えしたとおり、大腸癌は大腸ポリープから癌化することが多いといわれています。大腸内視鏡検査で大腸ポリープが発見された段階ですぐに、ポリープ切除などの治療を行うと大腸癌で亡くなるリスクが低くなります。また定期的に大腸内視鏡検査を受けることで、初期の段階から大腸ポリープを発見できます。

実際にアメリカでは大腸内視鏡検査で発見されたポリープをすぐに切除することで、大腸癌の罹患率が減少しているのです。

日本でも大腸内視鏡検査の受診率を上げられれば、発見されたポリープが癌化する前に切除など適切な治療によって、大腸癌を未然に防げるのではないでしょうか。

4. 大腸癌検診のすすめ

大腸がん検診
大腸癌は早期発見、早期治療が大切です。早期治療によって治る可能性が高くなります。大腸癌は初期では自覚症状がないため、自分でおかしいなと気づいたときには癌が進行している恐れがあります。
そうなると治療に時間がかかり、日常生活に大きな支障をきたします。

また治療が難しいといったケースも少なくありません。大腸内視鏡検査を受けることで、こうしたリスクを軽減することができます。

厚生労働省では40歳を過ぎたら、年に一度は大腸癌検診を受けることを勧めています。大腸癌検診は「つらい」「痛い」「恥ずかしい」などのイメージが強く、積極的に検査を受ける人が少ないのも事実です。

しかし、これらの理由で検診を受けずにいると、あとで後悔することが起こるかもしれません。症状がないときこそ、自分の健康のために大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。

また近年、病気にかからないように予防するという考えの「予防医学」が注目を集めており、健康を維持するためには予防医学の考え方が大切だといわれています。
予防医学をわかりやすく例えてみましょう。

川でおぼれている人がいるとします。
みなさんがよく医学といってイメージする、病気の人を治療するのが「治療医学」です。
治療医学は、川で溺れている人を助けます。
予防医学は、川で溺れる人を減らすために、川に橋をかけます。

このように病院は治療を受ける場所だけではなく、自分の健康チェックをする場所にもなりつつあります。

5. まとめ

健康的な食事
大腸癌は、日本で増加傾向にあります。大腸癌の怖いところは、初期の段階では自覚症状がないことです。
自覚症状が現れたときには、すでに病状が進行している恐れがあるため、治療に時間がかかることや、最悪の場合、命にかかわることもあります。

喫煙、飲酒などの生活習慣や食生活の見直しとは、大腸癌の予防に効果的です。しかしそれだけではなく大腸内視鏡検査などの大腸癌検診を定期的に受ければ、大腸癌を未然に防ぐことが可能です。大腸癌は早期発見、早期治療によって、治る可能性がある病気です。

これまで大腸癌検診を受けたことがない方や、しばらく検診から遠ざかっていた方が、大腸内視鏡検査を受けてみようと思ってくださったとしたら、うれしいです。
自分や大切な人のために、定期的に大腸癌検診を受けましょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。