内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

コレステロールの悪玉・善玉って何?名前で誤解されがちなコレステロールの実態について

健康診断の結果の中でも、気にされることが多いコレステロールの数値。そんなコレステロールには悪玉(LDL)と善玉(HDL)の2つがあることはよく知られています。悪玉・善玉という名称からコレステロール値が高いと悪い、反対に低いと良いと思っている人も多いようですが、実は必ずしもそうではありません。

今回は、誤解されることも多いコレステロールの悪玉・善玉について、コレステロールの実態と共に詳しく説明していきます。

1. コレステロールとは?

血液検査の結果
まずはコレステロールついて解説していきます。

コレステロールは、血液中に流れている脂質のひとつです。私たちの身体を形成している細胞膜やホルモン(男性ホルモン・女性ホルモン・ステロイドホルモン)、ビタミンD、胆汁酸といったものの材料となります。

コレステロールは体内で合成されるほか食物から摂取することができます。体内で合成されるコレステロール(内因性コレステロール)は、その約75%が糖質や脂質を材料として肝臓や腸、皮膚で作られます。

一方、食物から摂取するコレステロール(外因性コレステロール)ですが、日本人が摂取する平均的なコレステロール量は300mg/日(性別や年齢によって200~400mg/日と幅あり)となっています。摂取したすべてが吸収されるわけではなく、そのうち50%程度しか吸収はされません。特に食物繊維や植物性ステロールを含んだものは吸収されにくく、そこで吸収されなかったコレステロールは便となって排出されます。

体内のコレステロールは、恒常性(ホメオスターシス)が保たれており、食物からコレステロールを摂取すると、肝臓や腸、皮膚で作られるコレステロールの量が抑えられます。

2. 悪玉コレステロールと善玉コレステロール

ウォーキングをする男女
コレステロールといえば、「悪玉コレステロール」と「善玉コレステロール」といった言葉を耳にすることは多いと思います。この悪玉コレステロール、善玉コレステロールとは一体何なのかについて見ていきたいと思います。

2-1. 悪玉コレステロールとは?

悪玉コレステロール(LDL:Low Density Lipoprotein)とは、肝臓で作られたコレステロールを全身に運搬する役割を担っているコレステロールです。悪玉コレステロールはリポタンパク質という名の粒子として血液内に流れていき、全身の各臓器などに運ばれます。リポタンパク質の比重が低いのが特徴です(コレステロール47%、中性脂肪10%)。

全身へ運ばれた悪玉コレステロールは、細胞や組織内に吸収されていきますが、全てが吸収されるわけではなく、吸収されないものは血液内を循環し続けることがあります。その過程で血管の壁に層を作って蓄積されてしまい酸化変性されます。その結果動脈硬化や心筋梗塞、狭心症、脳卒中などが起こりやすい状態になります。そのような、マイナスなイメージから悪玉コレステロールと名付けられています。

2-2. 善玉コレステロールとは?

善玉コレステロール(HDL:High Density Lipoprotein)とは、増えてしまったコレステロールを全身から回収したり、血管の壁に蓄積されたコレステロールを除去して肝臓へ戻す働きを持つものです。リポタンパク質の比重が高いのが特徴です(コレステロール24%、中性脂肪5%)。

善玉コレステロールは、悪玉コレステロールとは反対に動脈硬化を防ぐ役割があるため、その良いイメージから善玉コレステロールと名付けられています。

善玉コレステロールはもともとの素質であって、数値がおおよそ決まっています。基準値は40~70mg/dLとされていて、善玉コレステロール値が低すぎても良くありません。ちなみに、善玉コレステロールを増やそうとしたら運動することで増やすことは可能です。有酸素運動を行うのがよいとされているものの、最低でも早足・大股・息が切れるぐらいのジョギングやランニングレベルの運動量は必要となります。理想としては週に3日15分程度の運動をすると良いですが、かといって善玉コレステロール値の上げすぎも良くはないので注意しましょう。

ちなみに、欧米ではコレステロールが高い/低いの違いのみであり、悪玉・善玉といった区分はありません。日本では、コレステロールの善玉・悪玉を、腸内細菌の善玉菌・悪玉菌と同じように思っている人も多くいます。そのため、悪玉コレステロールの数値が高い=腸内の悪玉菌が増えている、善玉コレステロールの数値が高い=腸内の善玉菌が増えていると考えている人がいるようですが全然別物です。コレステロールは腸内細菌とは別物です。

3. コレステロールに関する誤解

悪玉コレステロール
コレステロールは、基準値を少しでも超えたら薬を飲まないといけないのでは?といった誤解があります。実は医療機関のドクターにも誤解している人が結構いて、コレステロール値が低ければ低いほど良く、心疾患が少なくなるという論文もあるほどです。しかし反対に低すぎも良くないという論文もあります。

3-1. コレステロールの基準値について

コレステロールの検査値が気になる人は多いと思います。よく「正常値から外れた」といった使い方をしている人がいるのですが、「正常値」というのは間違いで、「基準値」が正しい使われ方となります。

基準値とは、検査会社の若いスタッフの何十人か(30~50人)のデータで構成されているもので、高齢者のデータはほとんどなく、何万人のデータといった大規模な数の基準値ではありません。そのため、検査会社によってこの基準値は異なります。

一般社団法人日本動脈硬化学会では、悪玉コレステロール値が140mg/dL以上の場合、善玉コレステロール値が40mg/dL未満の場合には脂質異常症を疑うことと定義されています。

基準値だけで見てしまった場合、コレステロールの脂質異常症に該当する人が多く出てしまいます。たとえば、40~50代の更年期の女性の場合には、閉経後女性ホルモンの減少により、総コレステロール、中性脂肪が増加するため基準値を外れる人がかなりを占めることになります。

3-2. コレステロールの基準値を超えるとショック?

コレステロールは、悪玉コレステロールだと「悪い」イメージが付きまといますが、身体にとっては必要不可欠なものです。人間の細胞は約37兆個あるものの、その細胞の膜を作る材料が悪玉コレステロールで、それがなければ細胞に元気がなくなってしまいます。細胞膜のほかホルモンや胆汁酸、ビタミンDなどの材料としても悪玉コレステロールは使われますので、薬で悪玉コレステロール値を下げてしまうと、それらを構成する材料がなくなってしまい、あまり良いことはありません。

悪玉コレステロールの基準値としては、70~140mg/dl未満が理想とされていますが、心臓の病気の既往がある人は低いほうがいいものの、元気な人であれば180~200mg/dlぐらいの値であってもよいとも言われています。

3-3. コレステロールの薬の服用はいいの?

コレステロールの薬の中でも「スタチン」という薬は世界で売り上げがTOP10入りする薬です。スタチンは悪玉コレステロールの治療薬として有名で、肝臓におけるコレステロールの合成を抑制して血中コレステロールを低下させます。

スタチンの服用によって悪玉コレステロール値を下げることは、動脈硬化や心筋梗塞、狭心症などを防ぐのには非常に有効ですが、一方でコレステロール値が下がってしまうことによりホルモンやビタミンDが作られなくなってしまうと、免疫が落ちてしまうなどのマイナス面もあるため、薬に頼りすぎるのも良くはありません。

4. まとめ

血液検査
以上、コレステロールとはどんなものなのか?悪玉コレステロール・善玉コレステロールの実態について紹介してきました。

コレステロールは数値が悪いと良くないと思われがちですが、細胞膜やホルモン、ビタミンD、胆汁酸などの材料となり身体を作る上で欠かせないもののひとつです。悪玉コレステロール・善玉コレステロールという名前のイメージもあり、何かと誤解されがちなコレステロールではありますが、適正数値を保つことは非常に大事になります。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。