内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

胃カメラをラクにするには病院の選び方がポイント!胃カメラが辛くなる理由も解説

過去に胃カメラ検査を受け辛い思いをした方は「苦しかった」「きつかった」という思いが強く、できれば胃カメラ検査を受けたくないと考えているかもしれません。また、まだ胃カメラ検査を受けたことがない方の中には、周りの方から「胃カメラは辛い」と聞き悪いイメージを持っているかもしれませんね。

胃カメラ検査をラクに受けるには、病院の選び方が重要です。

今回は、胃カメラ検査をラクに行える病院の選び方と、胃カメラが辛くなる理由も解説します。

1. 胃カメラ検査が辛いとどのようなデメリットがある?

内視鏡
皆さんが胃カメラ検査を受ける目的はさまざまありますが、多くの場合は下記の3つでしょう。
・健康診断や人間ドック
・胃がん検診など早期胃がんを見つけるため
・胃の不調や症状があり診断を受けるため

上記の目的で胃カメラ検査を受ける場合、胃カメラ検査が辛いとデメリットが発生します。デメリットは、検査を受ける患者さん側だけではなく検査を行う医師にもあります。

1-1. 胃カメラ検査が辛いと検査結果に影響する恐れがある

胃カメラ検査は、口や鼻から内視鏡スコープを入れ、胃の中を観察する検査です。

人間の体には、喉に異物が触れると「おぇ」と嗚咽してしまう咽頭反射が備わっています。これは、自身の意思ではなく、口からものが入ってきたときに体外へ押し出すための防衛機能です。

胃カメラは、自分の意志で口へ入れたものではないため、喉に内視鏡が触れると嗚咽が起こります。咽頭反射は、胃カメラ検査を辛くさせる一番の理由です。何度も嗚咽を繰り返すのは苦しく、悪い印象しか残りません。

また、医師も患者さんが苦しそうにしたり体を動かしたりすると、検査に集中し難く、「早く終わらないと」という心理が働き冷静な判断ができなくなる恐れもあります。

1-2. 経鼻内視鏡なら辛くない?

口腔から挿入する内視鏡は咽頭反射があって辛いと感じる方が多いですが、鼻から挿入する経鼻内視鏡はどうでしょうか?

鼻腔は口腔に比べ狭いため、経鼻内視鏡の太さも細くなります。内視鏡の先には病変を映し出すためのカメラや周りを明るく照らすためのライトが付いていますが、経鼻内視鏡は細くなる分、カメラの性能も経口内視鏡に比べると質が落ちます。

鼻腔の先の狭い空間に内視鏡が入るため、人によっては痛みが生じます。

2. 胃カメラ検査をラクに受けられる病院の特徴

医師と看護師
胃の異変や病変を確実に見つけるためにも、胃カメラ検査はラクに受けた方がいいのです。では、胃カメラ検査をラクに受けられる病院とはどのような病院なのでしょうか?

見分けるポイントは下記の通りです。
・鎮静剤を使用した胃カメラ検査を行っている
・内視鏡検査の数と治療数の実績が多い
・内視鏡専門医の資格を持った医師が検査を行っている
・第三者から高い評価を受けている

では、一つひとつみてみましょう。

2-1. 鎮静剤を使用した胃カメラ検査を行っている

胃カメラ検査を辛くきついものにしてしまう原因に咽頭反射がありますが、鎮静剤を使用することで咽頭反射は軽減されます。また、鎮静剤によって眠っている間に検査を行えるため検査時間も短く感じるのが特徴です。

鎮静剤を使用した検査では、患者さんは眠っているのでほとんど動かない状態です。鎮静剤なしで行う検査では、苦痛から体を動かす患者さんがいることもあり押さえながら検査するケースもあります。鎮静剤によって患者さんが動かない状態であれば、短時間で丁寧に胃を観察することが可能です。

鎮静剤を使用した胃カメラ検査は、患者・医師ともに負担が減り短時間で検査を行うことができる反面注意することもあります。

鎮静剤を使うことで起こりうる副作用は下記の通りです。
・鎮静剤に対するアレルギー
・血圧の低下
・呼吸への影響

鎮静剤を使用するときには、患者さんの性別、年齢、身長や体重などの体格、飲酒の有無、睡眠薬の服用の有無などをもとに、一人ひとりに合わせた鎮静剤の量の調整が必要になります。

鎮静剤の量が多かった場合には、検査後に呼吸が戻らないこともあるため、鎮静剤の知識を熟知した経験豊富な内視鏡医が対応することが望ましいです。

2-2. 検査数や治療数の実績が多い

胃カメラ検査を受ける際は、内視鏡検査数や治療数などの実績が多い医療機関を選びましょう。

胃カメラの性能、操作性は上がり、より鮮明にモニターを通し胃を観察できるようになりましたが、内視鏡を扱う医師の技術は実績の数によるものが大きいといえます。

鎮静剤で眠った状態であっても、異物が咽頭に触れれば咽頭反射は起こります。咽頭反射が起こりやすい狭い空間に、うまく内視鏡を入れかつ咽頭に触れることなく食道、胃、十二指腸へと内視鏡を進めるには操作技術が必要です。

内視鏡検査を円滑に行うための技術は、すぐに得られるものではありません。知識はあっても実際の操作は別だからです。内視鏡検査は、経験値が多くなればなるほど技術も上がるため、実績数から内視鏡検査に長けた医療機関、医師なのかを見極めることも必要になります。

また、内視鏡の操作以外にも、検査数や治療数の実績が多いことで、さまざまな病変を目にする機会があることから、小さな病変や一見病変に見えないものなどの見落としが少なくなることも期待できます。

過去の検査数や治療数などの実績を知りたい場合は、医療機関のホームページで「内視鏡検査数」「治療実績」といった欄をチェックするといいでしょう。

2-3. 内視鏡専門医の資格を持った医師が検査している

法律上では、皮膚科や眼科の医師が、腹痛を訴える患者に対して診療を行うことは可能です。しかし専門分野以外の知識が無い医師もいます。

つまり、消化器内視鏡専門医でなくても医師の資格があれば腹痛を訴える患者さんの診療を行うことがあり、中には内視鏡の検査を行っている医療機関もあるということです。

胃カメラ検査を受けるにあたり、内視鏡専門医であることを推すのには理由があります。内視鏡専門医とは、日本消化器内視鏡学会が認めた一定水準以上の技術を取得している医師のことです。

内視鏡専門医になるためには検査や治療実績が必要になり、それに応じた試験をクリアしなければなりません。また、内視鏡専門医の資格は更新する必要があるため、常に技術や知識が問われます。

2-4. 第三者から高い評価がある

医療機関によっては、ホームページに検査実績や治療数などが掲載されていますが、実際の検査の様子を知ることも大切です。

飲食店や娯楽施設などに出かける前に口コミサイトを確認する方もいるでしょう。また、職場や近所の方から教えてもらった好評な飲食店は、気になります。

医療機関も同じで、実際に通院した方や検査を受けた方に話を聞くことで、胃カメラ検査をラクに受けることができる医療機関を見つける参考になるでしょう。

ただし、胃カメラ検査を受けた方が周りにいないという方も多いかと思います。その場合には、Googleの口コミを参考にするのもいいかもしれません。

3. 胃カメラ検査を受けるメリット

病気を発見する医師
胃カメラ検査を一度も受けたことがない方が「胃カメラが辛い」と耳にすることや、すでに胃カメラ検査を受けて実際に辛い思いをした場合は、検査を受ける心理的ハードルが高くなります。

検査を受ける心理的ハードルが高くなることで、「症状がなければ検査を受けたくない」と思う方も少なくありません。

ラクに胃カメラ検査を受けた経験がある場合は、胃カメラ検査を受けるメリットのほうが大きくなります。

3-1. 早期発見できれば完治できる

胃がんは、大腸がんに次いで2番目に罹患率が高く、死亡率は3番目に高いことから「胃がんになったら助からない」というイメージを持っている方もいるでしょう。しかし、近年は胃がんの主原因の一つといわれているピロリ菌感染が減少しており、胃がんに罹患する方も減少しています。

早期胃がんを見つけるためには、定期的に胃カメラ検査を受けることが推奨されています。「胃カメラ検査はラク」と知っている方にとっては、検査への疑心感や不安もないため定期的な胃カメラ検査へのハードルも低くなり、早期に胃がんや病変を見つけるメリットが生まれるのです。

4. まとめ

健康診断
胃カメラをラクに受けるためには、病院や医師の選び方を知ることが重要です。胃カメラ検査をラクに受けられる医療機関であれば、患者さん自身の負担の軽減だけではなく、小さな病変を見落とされずに済む可能性も高くなります。

胃カメラ検査を検討中の方は、鎮静剤の使用だけで医療機関を選ぶことを避け、内視鏡専門医が在籍する内視鏡検査に長けた病院で検査を受けましょう。今回紹介した医療機関の選び方を、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。