内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

胃カメラ検査は妊娠中でも大丈夫?胃カメラ検査の疑問に答えます

胃カメラ検査を受ける場合、検査について少しでも疑問があると検査を受けること自体、躊躇してしまうかもしれません。
検査前に胃カメラに対して疑問があっても「こんな質問しても良いのだろうか?」という人も多いようです。

そこで、今回は、胃カメラ検査は妊娠中でも受けられるの?胃カメラ検査時の食事はどうするの?ポリープがあったらその場で切除してくれるの?など、胃カメラ検査のときによく聞かれる疑問についてお答えします。

不安や疑問を少しでも解決し、前向きに胃カメラ検査の受診を検討していただけたら幸いです。

1. 胃カメラ検査とは

胃のイメージ
胃カメラ検査の正式名は、上部消化管内視鏡検査といいます。

カメラを搭載した細いスコープを口または鼻から挿入し、食道から胃、十二指腸までの粘膜を直接観察する検査です。胃カメラ検査では、炎症、出血、ポリープ、悪性腫瘍などの異常の有無を観察していきます。

検査時間は、おおよそ5分~10分です。胃カメラは、カメラや医療器具の進化によってより細く高性能なものへと開発されてきました。また、施設によっては鎮静剤を併用し検査を行うため、苦痛なく検査が受けられるようになって来ました。

胃カメラ検査は、鎮静剤使用の有無、スコープが経鼻内視鏡なのか経口内視鏡なのかなど施設によって違いがあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

1-1. 胃カメラ検査でわかる病気

胃カメラ検査では、食道、胃、十二指腸を観察します。これらの臓器で起こりうる疾患や病変の有無がわかります。

具体的な疾患を下記にまとめてみました。
胃カメラ検査でわかる病気
萎縮性胃炎などピロリ菌が原因と思われる病変が発見された場合には、ピロリ菌の有無を確認する検査を行う場合があります。

ピロリ菌検査には、内視鏡で胃の組織を採取し試薬を使ってヘリコバクターピロリ菌の有無を調べる迅速ウレアーゼ試験などがあります。

2. 授乳中や妊娠中の胃カメラ検査

妊婦
「最近胃がむかむかする」「喉や脇腹に違和感がある」など症状がある場合でも、「妊娠中に胃カメラ検査は受けられるのか?」と不安を持っている妊婦さんもいるでしょう。

また、出産後に胃カメラ検査を受けようと検討している方では「授乳中の胃カメラ検査はどうなるの?」と疑問を持たれているかもしれません。

妊娠中、産後の胃カメラ検査について解説します。

2-1. 妊娠中の胃カメラ検査

妊娠中の胃カメラ検査は流産のリスクが伴うため、基本的には検査は行いません。

ただし、命に関わる病気を疑う場合など妊娠中であっても胃カメラ検査を受ける必要がある場合があります。その際は、まずは産婦人科の主治医に胃カメラ検査を受ける必要性を相談することが先決です。胃カメラ検査が必要であると主治医の判断があれば、産婦人科や小児科を併設している総合病院の消化器内科で胃カメラ検査を行うことになります。

妊娠中に胃カメラを受ける場合には、下記のような注意があります。
・胎児への影響を考え静脈麻酔(血管に注射をして、眠くなるような状態)が使えない可能性がある
・胃カメラ検査が必要でかつ、妊娠経過が良好な場合で産婦人科医が検査可能と判断する場合に限り胃カメラ検査を実施する。妊婦さんの状況よっては検査ができない場合もある
・お腹が大きくなる影響で、横向きになれない場合は検査が難しい場合がある

妊娠中の胃カメラ検査は、胃カメラ検査で発見できる疾患(メリット)と母子の状態などさまざまなことを総合的に判断して行います。

2-2. 授乳中の胃カメラ検査

授乳中の胃カメラ検査は問題ありません。また、鎮静剤も使用できますが、使用可能な薬剤が制限されます。
胃カメラ検査後3時間空けたら搾乳し、それは破棄します。その後、授乳を開始できます。

ただし、胃カメラ検査を行う前に検査を受ける施設や医師に、授乳中である旨を伝えることを忘れないようにしましょう。

3. 胃カメラ検査のとき食事はどうすればいいの?

水を飲む女性
胃カメラ検査に伴って、どんな食事がいいのか?など疑問に思われている方も多いかと思います。
また、検査の結果によっては食事制限がある場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

3-1. 胃カメラ検査前日の食事

前日の食事内容に関しては、基本的に制限はありません。
ただし、夕食は午後10時までに済ませてください。

また、過去に胃がんなどで胃の外科的な手術(開腹手術、腹腔鏡手術)を受けたことのある方は、手術の影響で胃内に食べ物が残りやすくなっているため、夕食は午後6時までに済ませ、普段よりも水分を多めに摂取するようにしてください。

検査前の食事が摂取できない時間帯でも水分の摂取は自由です。
検査前の脱水予防と胃からの食事の排出促進のためにも水分は積極的に取りましょう。検査開始前まで水分摂取は可能です。

摂取する水分の種類は、水や麦茶・ポカリスエットなどのスポーツドリンクはOKですが、コーヒーやコーンポタージュ、味噌汁などは検査に影響する可能性があるため、食事が摂取できない時間帯では摂取しないでください。

午後からの検査の場合は検査の5時間前であれば、下記のものは摂取可能です。
・卵(ゆで卵、目玉焼き、スクランブルエッグ)
・豆腐
・ゼリー

上記に挙げたものは、5時間以内に胃で消化されるため胃カメラ検査に影響がない食品です。これら以外の食べ物は、検査の妨げになることも考えられるため5時間前であっても食べないようにしましょう。検査時は、検査を受ける施設の指示に従ってください。

ただし、胃の外科的手術の経験がある方は胃に食べ物が残りやすいため、食事は前日の18時までとし、午後からの検査であっても(検査5時間前であっても)当日は卵や豆腐などもとらないようにしましょう。

胃に食べ物が残っていると、胃カメラ検査のやり直しが必要となるケースもあります。前日の食事については、以下に挙げる消化しにくいものはできるだけ避けましょう。

3-2. 検査後の食事

胃カメラ検査において異常や病変がなく観察だけで終了した場合には、検査後の食事や飲酒の制限はありません。

ただし、迅速ウレアーゼ試験や組織の一部を採取した場合には、検査後の食事やアルコール摂取に注意が必要です。

迅速ウレアーゼ試験など胃の組織を一部を採取するときには、痛みを感じることはありません。これは、消化管の粘膜に痛みを感じる神経がないためです。しかし、胃粘膜に傷ができている状態であるため、胃酸が多く分泌されると出血を起こすリスクが高くなります。

胃粘膜からの出血リスクを避けるためにも検査当日だけは、飲食するものに気を付けることをおすすめします。

検査当日に避けたい飲食
・脂っこいもの
・刺激物(塩分の高いもの、辛い物など)
・アルコール

上記にあげたものは、胃酸の分泌を誘発しやすい食べ物です。

4. 高齢者の方の胃カメラ検査の注意点は?

高齢者と介護スタッフ
高齢者の方などで入れ歯や差し歯を使用している場合には、検査前に取り外していただきます。

口腔からの胃カメラ検査の場合にはマウスピースを装着して行いますが、体動でマウスピースが外れてしまうことも考えられます。差し歯においては、グラグラしている場合は誤嚥のリスクになるためあらかじめ外すようにしましょう。

ただし、接着剤などで固定して、日常的に落下などない入れ歯やしっかり固定されている差し歯であれば、外す必要はありません。

もし、不明な点や疑問、不安などがあれば検査前に看護師や施設内のスタッフに確認しておくと安心でしょう。

5. 胃カメラ検査で胃のポリープは切除できる?

内視鏡
大腸カメラ検査でポリープが見つかった場合、大きさによっては内視鏡で切除し当日そのまま帰宅可能です。では、胃カメラ検査の場合はどうなのでしょうか。

実は大腸の場合と異なり、胃の場合は、胃カメラ検査時にポリープが見つかっても検査時に切除まですることは出来ません。
技術的には切除可能であっても胃のポリープの場合は、切除後の出血のリスクが高いため、入院での治療が必要となります。

胃カメラ検査時にポリープがあった場合、治療適応になる可能性がありそうなポリープの場合は、まずは生検により組織検査を行い、その病理組織検査の結果を踏まえた上で切除治療を行うかどうかを判断します。

切除が必要なポリープであった場合は、入院施設のある治療可能な医療機関へご紹介致します。

6. まとめ

男性医師
胃カメラ検査は定期的に行うことで胃がんリスクを軽減できますが、検査に対する不安や疑問があると、積極的に検査を受けようという気持ちにはなれないかもしれません。

この記事で、少しでも胃カメラ検査に対する不安や疑問を解消し、胃カメラ検査を受けていただきたいと思います。

もし、わからないことがあれば「こんなことで」と躊躇せずに専門医に相談しましょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。