肝機能のAST・ALTとは何?これだけは覚えておきたい5つのこと
健康診断で必ず測定されるAST・ALTですが、肝臓の数値であることは多くの方が知っているかと思います。確かに肝臓の数値ではあるのですが、数値の意味を理解している方は少ないようです。
そこで今回は、AST・ALTの数値について、知っておきたい5つのことを解説します。
ASTとALTは、肝臓の機能を調べるために測定されます。ASTとALTの数値のバランスによって、体の中で何が起きているのかが予測できます。
つまり、ASTとALTの数値やバランスによって、疑われる疾患や体の状態を把握でき、治療や食生活、生活習慣の見直しをするきっかけにもなるのです。
ASTとは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼという酵素の一種です。肝臓をはじめ、心筋や骨格筋に多く含まれています。
なんらかの原因で、心臓や肝臓の細胞が破壊されると血液中にASTが吐き出されます。ASTのように細胞が破壊されることで、血液中に吐き出される酵素を逸脱酵素といいます。
ASTの数値は単独ではなくALTとのバランスによって、体の中の異変や病理を疑う指標として使われます。また、基準値を上回ると疾患の疑いがありますが、下回ることについては問題ありません。
ALTとは、アラニンアミノトランスフェラーゼという逸脱酵素の一種で、肝臓にもっとも多く含まれています。そのため、ALTの数値が高いときは、肝臓に問題や疾患がある可能性を一番に考えます。
医師は、ALTの数値だけではなくASTの数値とのバランスや、総ビリルビン、アルカリフォスファターゼなどの値との兼ね合いを考慮して、高値の原因を探ります。
AST・ALTは多くの方が「肝臓の数字」という認識があるかと思います。
ただ単にAST・ALTの値が高いことだけに注目するのではなく、2つの値やバランスをみることで肝臓やそれ以外の臓器の状態を推測できます。
ここでは、AST・ALTの数値が表す値のバランスなどから知っておきたい5つのことを解説していきますので、参考にしてください。
2-1. AST・ALTは主に肝臓の中に存在している
AST・ALTは主に肝臓の中に存在しており、肝細胞が壊れると血液中に吐き出されるため数値が上がります。つまり、AST・ALTの数値が高い場合には、肝細胞の多くが死んで壊れていることを表しているのです。
ただし、AST・ALTの数値が高いからといって、肝臓の機能が低下しているわけではありません。数値が上がるのは、肝細胞が壊れ肝臓がダメージを受けているだけです。実は、肝細胞は一度壊れても時間が経つと、再生して復活します。
このことから健康診断の結果でAST・ALTの数値が高かった方は、採血をした時期に、なんらかの原因によって肝細胞が壊れていた、と認識するといいでしょう。
2-2. ASTよりもALTのほうが肝細胞の状態を反映している
ALTはASTよりも肝細胞に多く含まれていることから、ALTのほうが肝臓の細胞状態を反映しているのです。医師が肝臓の状態を確認するために肝数値に注目するときは、ASTよりもALTに注目しています。
2-3. 肝臓になにか病気がある場合の数値モデルは2種類ある
健康診断で下記の2つの数値が出た場合は、肝臓になんらかの疾患がある場合が考えられます。
・AST、ALTのどちらも高い
・ALTがASTよりも高い
上記の数値バランスの場合には、肝臓の炎症や疾患を疑います。考えられる疾患は、急性肝炎・アルコール性肝炎・慢性肝炎・脂肪肝です。
2-4. ASTがALTよりも高い場合は心臓や筋肉などの疾患が疑われる
AST・ALTは肝臓の機能を表す数値ですが、数値のバランスによっては肝臓以外の病気が疑われるケースもあります。ASTがALTよりも高い場合は、心臓や筋肉、血液などの肝臓以外の疾患が考えられます。たとえば、溶血性貧血などの血液疾患や心筋梗塞などの心疾患です。
ただし、アルコールのとりすぎによるアルコール性肝障害の場合は、アルコールがALTの合成を阻害するため、ALTよりASTの数値が高くなる場合が多いです。
2-5. AST・ALTの高値を指摘された場合に疑われる疾患は2つ
AST・ALTの高値を指摘されたほとんどの場合は、脂肪肝かアルコール性肝障害が考えられます。ただし、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎や肝腫瘍のケースもあります。
数値だけを見て「アルコールを飲み過ぎたからだろう」と自己判断をせず、精密検査を受け原因を明確にする必要があります。
肝臓の働きと聞いて、「アルコールの分解」をイメージされる方が多いかと思います。実は、肝臓にはアルコールの分解以外にもさまざまな働きがあります。
肝臓の働きは500以上あるといわれていますが、主な働きは4つです。肝臓の働きを知ることで、AST・ALTが示す数値の意味も理解しやすくなるでしょう。
肝臓で行われる代謝とは、摂取した食べ物から得られた栄養を、各臓器で利用できる形に変換することをいいます。
食事からとった栄養素は、そのままでは利用できません。消化器官で分解されたあと、肝臓に送られ代謝されてはじめて体のさまざまな臓器や器官で利用でき、体内で使えるエネルギーとなるのです。
脳が働くために必要なブドウ糖を供給しているのは、肝臓です。脳は365日24時間絶えずエネルギーとなるブドウ糖を必要としており、供給もそれに合わせて行う必要があります。
肝臓は、脳へ絶え間なくブドウ糖を供給するために、ブドウ糖をグリコーゲンという形にして蓄えながら必要に応じ供給もします。また、血糖値が上がりすぎないようにコントロールするのも、肝臓の働きの一つです。
肝臓は、胆汁酸をつくる働きがあります。胆汁酸からつくられる胆汁の主な役割にはさまざまなものがありますが、その代表とされる役割は下記の3つです。
・脂質の消化吸収をサポートする
・古くなった赤血球などを排出する
・血中のコレステロール濃度を調整する
肝臓がつくり出す胆汁酸により生まれた胆汁は、肝臓で処理された赤血球などの不要物を使い血中のコレステロール濃度を調整します。また、小腸で脂肪の消化を助け肝臓内の不要な物質を排出するために必要です。
肝臓でつくられた胆汁酸がなければ、食事で摂取した脂質の消化が難しいのです。
肝臓は、アルコール、体内で発生したアンモニア、薬など体にとって有害となる物質を分解し無毒化する働きを持っています。
アルコールに含まれるアセトアルデヒドという有毒物質は、肝臓の働きによって、酢酸に分解されたのち二酸化炭素と水になって排出されます。つまり、アルコールの過剰摂取は、肝臓の働きを増やし負担になります。
脂肪肝を長い間放置していると、最悪の場合肝硬変になり肝臓は本来の働きができなくなってしまいます。さらに、肝硬変から肝がんに移行するケースもあります。
肝硬変になると、本来肝臓で分解していたアンモニアが分解できなくなり、血中のアンモニア濃度が上がり、意識障害や腹水貯留を起こします。また、肝硬変が進むと肝臓の機能が著しく低下した状態である肝不全になるケースもあります。
脂肪肝と診断されても、早期に対策や治療に取り組むことで改善する可能性があります。また、自身の生活習慣や食生活の見直しも重要です。
脂肪肝と診断された場合に、皮下脂肪が多い・肥満体質である方は、まず体重を減らしましょう。
内臓に脂肪が多くある肥満と高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさるメタボリックシンドロームが原因で起こる脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といいます。
摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、肝臓で中性脂肪が多くつくられ皮下脂肪や内蔵脂肪として蓄積されます。やがて肝臓の中にも、異所性脂肪としてたまり脂肪肝となります。つまり、脂肪肝とメタボリックシンドロームは深い関係があるといえるのです。
また、加工食品や糖質の多い食事は、肝臓に過剰な量の糖質をグリコーゲンとして貯蔵することになり、脂肪肝になりやすくなるとされています。
糖分や脂肪分のとりすぎに注意し体重を減らすことで、皮下脂肪や内蔵脂肪が減少すれば、脂肪肝も改善する可能性が高いです。
肝臓は、アルコールに含まれる有害物質であるアセトアルデヒドを無毒化する働きをもっています。
毎日の晩酌や飲むアルコールの量が多い場合には、肝臓の負担も大きくなることを認識しましょう。1度に飲むアルコール量が多い方は量を減らす、毎日飲む方は休肝日をつくるなどし、肝臓の負担を軽減するようにしましょう。
AST・ALTは、肝臓の機能を表す数値ですが、それだけではなく数値のバランスによって体の状態を推測できます。
ただし、「高値だからアルコールのとりすぎ」など自己判断はしないようにしましょう。高値を表している場合には、思わぬ疾患が隠れていることもあるため専門の医療機関を受診しましょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。