内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

大腸ポリープが大腸がんの原因?大腸がんができる5つのメカニズムを紹介!

大腸がんの研究は進んでいますが、その原因についてはまだ完全に解明されていないのが現状です。しかし、大腸がんの発生メカニズムの中で明らかにされているものもあります。

今回は、「大腸がんはどうやってできるの?」という疑問を持っている方に対して、明らかになっている5つのメカニズムについて解説します。

1. 大腸がんの5つの発生メカニズムとは

大腸がん検診
大腸がんや大腸ポリープの研究によって明らかになっている大腸がんの発生メカニズムは5つあります。どんなポリープががん化するのかを知っておくことで、大腸内視鏡検査の結果を医師から説明されたときに理解しやすくなるでしょう。

大腸がんの発生メカニズム
・良性のポリープが大きくなりがん化
・正常な大腸粘膜にいきなりがんが発生
・鋸歯状病変と呼ばれるポリープががん化
・潰瘍性大腸炎の継続でがん化
・過誤腫のがん化

では、一つひとつみていきましょう。

1-1. 良性のポリープが大きくなりがん化する

adenoma(腺腫)という良性のポリープが大きくなった結果、がん化することをadenoma-carcinoma sequenceといいます。

大腸がんの発生メカニズムとして最も多いと考えられているのが、良性の大腸ポリープである腺腫が大きく成長した結果、がん化するadenoma-carcinoma sequenceです。

大腸粘膜上に盛り上った隆起として観察される隆起型のポリープが、大きくなることでがん化し、大腸がんになります。大腸カメラ検査時にがん化する前の良性のポリープの状態で発見し、切除すれば大腸がんの発生予防につながります。

1-2. 正常な大腸粘膜にいきなりがんが発生する

正常な大腸粘膜に、いきなりがんが発生することをde novo carcinomaといいます。de novoとは、ラテン語で「はじめから」という意味を持ちます。

de novo carcinomaは、表面型といわれる平べったい形や陥凹型といわれる窪んだ形をしています。de novo carcinomaはadenoma-carcinoma sequenceとは異なり、サイズが小さくてもできたときからがんとして発生します。そのため、大腸カメラ検査を行う医師は、大腸内視鏡検査を行っているときには、平坦型や陥凹型の病変がないか注意深く観察しています。

1-3. 鋸歯状病変と呼ばれるポリープががん化する

hyperplastic polyp(過形成性ポリープ)、serrated adenoma(鋸歯状腺腫)、mixed hyperplastic adenomatous polyp(MHAP)、sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)といった鋸歯状腺管構造をもつポリープががん化する経路をserrated polyp neoplasia pathwayといいます。

serrated polyp neoplasia pathwayは、adenoma-carcinoma sequenceのように腺腫ががん化する経路に比べると、がん化する割合は少ないといわれています。

hyperplastic polypといわれる過形成性ポリープは、以前はがん化しないポリープとされていましたが、近年の研究によってがん化する確率は低いもののゼロではないことがわかっています。そのため、内視鏡検査で発見された場合は切除することをオススメします。

1-4. 潰瘍性大腸炎が継続することでがん化する

dysplasia-carcinoma sequence(colitic cancer)といわれる、自己免疫異常が原因で起こる潰瘍性大腸炎による炎症の継続でがん化する経路です。

潰瘍性大腸炎は原因が明確になっていませんが、自己免疫異常が原因で発症するのではないか、といわれる特殊な大腸炎です。潰瘍性大腸炎の炎症が続くとがん化するといわれているため、潰瘍性大腸炎が発見された場合には炎症をしっかりと抑える治療を行うことでがん化のリスクを下げることが重要です。

1-5. 過誤腫のがん化

過誤腫とは、胎生期に組織の形成異常により生じる腫瘍と奇形の中間的なポリープです。一見、腫瘍のように見えますが腫瘍ではなく、奇形の一種です。過誤腫自体は良性ですが、がん化する場合もあります。

過誤腫は、peutz-Jeghers症候群や若年性ポリポーシス症候群といった遺伝性疾患で発生しやすいといわれています。ポリープ切除後にpeutz-Jeghers症候群や若年性ポリポーシス症候群だったことが判明した場合には、大腸がんや胃がんのリスクが高い体質だということを認識することが重要です。

それぞれの発生確率は、peutz-Jeghers症候群で16,000人~100,000人に1人、若年性ポリポーシス症候群では200,000人~250,000人に1人とされています。疾患の発生確率は低いものの、大腸以外でも悪性腫瘍が発生する可能性が高いため、全身検査が必要です。

がんを予防するためには、過誤腫が良性のポリープである間に切除し、定期的に胃カメラと大腸カメラを受ける必要があります。

2. 大腸がんを防ぐためには

腹痛の高齢男性
大腸がんを予防するためには、がんを疑う症状を知り、定期的な内視鏡検査を受けることが大切です。
大腸にポリープが発生し出血しても、便に付着する血液は微量な場合が多く、気づくことは容易ではありません。腹部の痛みや血便といった症状が出てきたときには、ポリープががん化していたり、がんが大きくなっていたりすることもあります。

2-1. 定期的な内視鏡検査を受ける

大腸内視鏡検査は、大腸がんやがん化する前のポリープを早期発見できる検査です。大腸がんが発見される割合は、男女ともに50代から急激に増加します。大腸がんになるには数年から数十年かかるためその前段階である年齢で、大腸内視鏡検査を受けるといいでしょう。一度も大腸内視鏡を受けたことがない方の場合は、35歳を過ぎたら一度受けるのがおすすめです。

大腸がんは早期発見・早期治療で、完治が可能な病気です。症状が出る前にがんリスクを下げることが大切です。

2-2. 大腸がんを疑う症状を知っておく

大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないといわれていますが、まれにポリープや早期がんの状態で症状が現れることがあります。主な症状をまとめてみました。

・血便(便に血が混じる)
・下血(直腸に近い場合は赤く、盲腸に近いほど赤黒い)
・下痢と便秘を繰り返す
・細い便が出る
・残便感がある
・おなかが張る
・腹痛が頻回にある
・貧血やめまいがある
・急激な体重減少がある

血便は、日頃から便を観察する習慣があれば異変に気がつくかもしれませんが、出血量が微量だと、気づかない場合が多いです。

ポリープやがんが大きくなり便の通り道が狭くなると、便が通過するときにポリープが傷つき出血します。直腸に近い部分にポリープがある場合は赤く、盲腸に近いほど赤黒い下血がみられるのが特徴です。また、大腸に残った便が出づらくなるため残便感や細い便が出ます。

がんは、周囲にある血液から栄養を得ることで大きくなるため、貧血やめまい、急激な体重減少も起こりやすくなります。

2-3. 大腸ポリープを切除したことがあれば定期的な内視鏡検査が必要

ポリープができても切除すれば、大腸がんのリスクを下げられます。小さなポリープのうちに切除出来れば、安全に簡単に大腸がんの予防が可能です。

大腸ポリープを切除した場合は、1年後に大腸内視鏡検査を受けることが一般的です。
ただし、以下のケースの場合は短い期間で内視鏡検査をしなければならないことがあります。

・切除したポリープが20mm以上
・ポリープが10個以上あった
・がん化したポリープがあった

どのくらいの期間で大腸内視鏡検査が必要かは、かかりつけ医に確認するとよいでしょう。

また、ポリープ切除後にpeutz-Jeghers症候群や若年性ポリポーシス症候群だったことが判明した場合には、大腸がんや胃がんのリスクが高い体質であるため定期的な内視鏡検査が必要です。

3. まとめ

内視鏡
大腸がんの発生メカニズムとして現時点で明らかになっているメカニズムは、5つあります。それ以外にも発生経路や原因が解明されていないものもあり、大腸がんを防ぐには定期的な内視鏡検査を受けることが大切です。

35歳までに大腸内視鏡検査を受けたことがない方は、大腸内視鏡検査で大腸の状態を把握しておくことが大切です。また、大腸内視鏡検査を受けポリープやがんが発見されなかった場合や大腸がんのリスクが低いとされる場合には、4-5年に1度、ポリープを切除した経験がある場合には、1-3年に1度を目安に大腸内視鏡検査を受け大腸がんを防ぐことが重要です。

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この記事を書いた人

萱嶋 善行医師

福岡大学医学部卒業。
福岡大学病院など多くの総合病院で消化器内視鏡検査・治療を習得。
病理診断にも研鑽を積む。2023年3月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。