内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

胃カメラを先にしないと自費?ピロリ菌検査費用を保険適用にする方法!

身近な方がピロリ菌に感染していたことを耳にすると「自分もピロリ菌検査を受けたほうがいいかな?」と考える方は多いでしょう。

ピロリ菌検査や除菌治療の費用は保険適用だと思われがちですが、検査の結果や受ける順番によっては、保険適用では無く自費になってしまいます。この場合は、たとえピロリ菌検査を受け、ピロリ菌感染があり除菌治療を受けようと思っても保険が適用されません。

実は保険が適用されるには、ピロリ菌検査を受ける前に胃カメラ検査を受けることが必須の条件です。

それ以外にもルールがあるため、検査を受ける順番や条件を知っておくことが大切です。

ピロリ菌検査や除去治療を、保険適用で受けるためのルールや手順について解説します。

1.ピロリ菌検査とは?

血液検査
ピロリ菌検査は、ピロリ菌の感染を確認する検査です。感染を確認する検査にはさまざまな検査があり、人間ドックや定期検査で受けられます。

下記の検査は、一般的なピロリ菌検査です。

・血清ピロリ菌抗体価
・ABC検診

1-1. 血清ピロリ菌抗体価

血清ピロリ菌抗体価とは、採血で血液中のピロリ菌の抗体(タンパク質)を測定し、ヘリコバクターピロリ菌感染の有無を調べる検査です。

ただし、一度でもピロリ菌に感染したことがあればピロリ菌抗体陽性と判定されるので、感染の時期が過去なのか現在なのかを明確には判断できません。

1-2. ABC検診

ABC検診は、血液検査によって胃粘膜の収縮の程度をあらわすペプシノゲン値と、ピロリ菌感染の有無をあらわすピロリ菌抗体値を測定し、胃がんリスクをA〜Dの4段階で判定する検査です。

ABC検診はピロリ菌感染の有無だけではなく、ピロリ菌感染の影響によって胃がんになりやすい胃になっていないかを確認できます。

ABC検診の判定表
ABC検診の判定表
ABC検診では、ピロリ菌感染のリスクと胃炎の程度を測るためペプシノゲンを測定し、A~D群に分類します。なお、ABCと進むにしたがって胃がんリスクが高いとされています。検診結果の内容は下記の通りです。
ABC検診
ピロリ菌除去治療を受け除菌が成功した場合でも抗体は数年かけて陰性化するため、除菌治療を受けた方が血清抗体やABC検診をうけても正確なピロリ菌感染の状況は判断出来ません。

2. ピロリ菌検査・除菌治療の費用の目安

電卓と保険のイメージ
ピロリ菌検査の費用は、保険適用となる場合とそうではない場合があります。

「親類が胃がんだった。自分も心配だからピロリ菌感染の有無が知りたい」など自覚症状がないケースは自費になります。一方、慢性胃炎(萎縮性胃炎)や胃潰瘍などと診断された場合には、保険適用になることがあります。

費用の目安を表にまとめてみました。
ピロリ菌検査・除菌治療の費用
検査を受ける施設や症状によって、費用が異なる場合があります。気になる方は、検査や除菌治療前に医師に確認するといいでしょう。

3. ピロリ菌検査・除菌治療の費用を保険適用にするには

男性医師
血清ピロリ菌抗体価やABC検診で、ピロリ菌感染の疑いがあるという結果だけでは、保険適用で除菌治療を受けることはできません。

保険診療で、ピロリ菌の検査や除菌治療を行うには下記のルールがあります。

・ピロリ菌検査や除菌治療を行う半年以内前に胃カメラ検査を受けている
・胃カメラ検査でピロリ菌感染による慢性胃炎(萎縮性胃炎)が確認されている

また、保険診療でピロリ菌検査や除菌治療を行うには、明確な手順も決められています。

ピロリ菌除去治療の手順は下記の通りです。

・胃カメラ(内視鏡)検査を受ける
・慢性胃炎(萎縮性胃炎)と診断される
・ピロリ菌検査を行う
・ピロリ菌検査で陽性判定
・ピロリ菌除菌治療を行う

つまり、ピロリ菌検査や除去治療を保険診療で受けたい場合は、胃カメラ検査を先に受けることが必須です。

ルールが満たされない場合や手順を守っていない場合は保険診療になりませんが、ピロリ菌検査は人間ドックのオプションなど自費で受けることは可能です。

4. 胃カメラではなくバリウム検査ではダメ?

バツ印を持つ医療従事者
バリウム検査でも、慢性胃炎(萎縮性胃炎)の疑いを指摘されるケースがあります。

バリウム検査でピロリ菌による慢性胃炎(萎縮性胃炎)が疑われたとしても、胃カメラ検査で慢性胃炎(萎縮性胃炎)と確定診断されなくては、ピロリ菌検査や除菌治療は自費になります。

多くの方が、「一度バリウム検査で慢性胃炎の疑いが指摘されているのに、どうして胃カメラで再度検査する必要があるの?」と思われるかもしれません。

この理由は、バリウム検査は胃カメラ検査と違い確定診断が出来ないためです。

4-1. バリウム検査とは

バリウム検査は、胃のレントゲン検査のことです。X線を吸収する性質を持つ鉱物が原料であるバリウムを飲んで、胃の粘膜にバリウムを付着させます。

胃の粘膜に付着したバリウムによって、胃の形や潰瘍やポリープを疑うことができます。たとえば、潰瘍ができていれば潰瘍部のくぼみにバリウムが溜まります。また、ポリープであれば、バリウムが弾かれた状態になり判断できます。

バリウム検査は、影絵のようなものです。レントゲンで撮影しながらバリウムの流れを観察し、胃の内膜に付着させ凹凸の有無を確認します。ある程度進行した疾患であれば発見されるケースもあります。しかし、小さい病変は正常の粘膜に比べてやや白いだけ、という粘膜の状態なので早期胃がんの発見は困難です。

つまり、バリウム検査はあくまでもスクリーニング(ふるいわけ)検査であり、早期の胃がんや小さな病変や異変を見つけることは困難で、確定ではなく「疑い」としか判断できません。

5. なぜピロリ菌検査の前に胃カメラ検査?

内視鏡
なぜピロリ菌検査や除菌治療前に胃カメラ検査が必要なのか、疑問を持った方もいるのではないでしょうか。

おおよそ半年以内に胃カメラ検査を受けることや、胃カメラ検査によって慢性胃炎(萎縮性胃炎)が発見された場合のみピロリ菌検査と除菌治療が保険の適用になるというルールは、日本消化器病学会によって定められています。

なぜ、胃カメラ検査を受けることがルールになっているのでしょうか?

理由は、先にピロリ菌除去治療を行ってしまうと、早期胃がんなどを見落とす恐れが生じるからです。詳しく解説します。

5-1. 日本消化器病学会とは

日本消化器病学会は、胃や腸などを専門とする消化器内科専門医が所属する学会です。消化器病学会には、さまざまな病気を専門にしているドクターが集まる特別委員会があります。

日本消化器病学会では、消化器疾患診療のためのガイドラインの公開も行っています。診療のガイドラインは、多くの患者さまにとってメリットになる診療手順について取り決めされたものです。

日本消化器病学会の中には、ヘリコバクターピロリ菌診断治療委員会があります。胃カメラを先に行う理由として、ピロリ菌の感染により慢性胃炎が起こり、加齢とともにピロリ菌関連の疾患が出てくる可能性があることを挙げています。

特に日本では、ピロリ菌関連の疾患として胃がんの合併が多いのが特徴です。そのため、ピロリ菌の除去治療を行う前には、胃がんリスクの有無を確認するために胃カメラで確認するというルールを設けています。

5-2. 先にピロリ菌の除去をしてはいけない理由とは

ピロリ菌に感染している場合、除去治療をすることで胃がんリスクも軽減されますが、胃カメラ検査の前にピロリ菌の除去を行うと早期胃がんの発見が遅れるケースがあります。

・早期の胃がんの発見が困難になる

ピロリ菌の除去治療を行うと、胃粘膜の炎症が治まるため粘膜がツルっとして正常な状態に戻ります。

早期の胃がんは、平坦、わずかな赤い凹みであることも多く、周囲の胃粘膜との違いはほとんどありません。ピロリ菌除去治療を行うと、一見胃粘膜が正常に見えるので、早期の胃がんかどうかわかりにくくなってしまいます。

このような場合は、胃カメラ検査を定期的に行っていても早期がんを見逃してしまうケースも少なくありません。

胃カメラ検査をしているのにもかかわらず、何年も経ってから進行した胃がんが発見されてしまうというケースも起こりうるのです。

6. ピロリ菌感染のリスクとは

胃のイラスト
胃がピロリ菌に感染している場合、さまざまな疾患の原因になります。特に胃がんの合併症が多いとされています。慢性胃炎の原因の約80%が、ピロリ菌感染によるものです。また、胃がんの95%以上は、ピロリ菌感染が原因といわれています。

検診でピロリ菌感染が疑われた場合やバリウム検査で萎縮性胃炎の疑いがある場合には、いきなりピロリ菌除去治療を行うのではなく、胃カメラ検査で胃の状態を確認するようにしましょう。

7. まとめ

保険証
胃がんリスクを軽減させたいと思われている方の多くが、ピロリ菌検査をまず受けるという認識を持っているようです。

胃がんリスクを下げるために行ったピロリ菌除去治療によって、早期の胃がんを見逃し進行がんになっていては、元も子もありません。まずは、胃カメラ検査を受け胃の状態を把握しピロリ菌感染が疑われる慢性胃炎がある場合には、ピロリ菌検査を受けるようにしましょう。

胃カメラ検査を受け胃がんリスクが高いという診断のもとで、ピロリ菌検査やピロリ菌除去治療を行えば、保険適用になります。

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この記事を書いた人

細川 泰三医師

国立鹿児島大学医学部卒業。
麻生飯塚病院、北九州市立医療センター、国立病院機構福岡東医療センターで多数の消化器内視鏡検査・治療に従事。2020年4月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。