内視鏡医師の知識シリーズ
ENDOSCOPIST DOCTOR'S KNOWLEDGE SERIES

食道がんは自覚症状がほとんどないって本当?初期症状や検査方法について詳しく解説!

食道がんは、国立がん研究センターの統計によると、2019年のデータで診断数が26,382例(男性21,719例、女性4,663例)、死亡数は2020年のデータで10,981人(男性8,978人、女性2,003人)となっています。罹患数、死亡数ともに大腸がんや肺がん、胃がんなどと比べると少ないのが特徴ですが、データから見る限り男性がかかる率の高いがんであることがわかります。

今回は、食道がんとはどのようながんなのか?初期症状や検査方法などについて見ていきたいと思います。

1. 食道について

人体模型
食道がんについて見ていく前に、食道について詳しく知っておく必要があります。
食道とは、喉(咽頭)と胃の入り口(噴門)の間を結ぶ細長い管状の臓器のことです。食べものや飲みものを摂取する際に通過する消化管であり、咽頭近くを「頸部食道」、胸の付近にある食道全般部分を「胸部食道」、食道と胃を連結している部分を「食道胃接合部領域」と呼んでいます。

食道の構造ですが、壁が何重にもなっており、内側から粘膜、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、外膜といった具合に分かれています。

2. 食道がんとは

喉に違和感のある高齢男性
食道がんは、食道のうち粘膜部分に発生するがんです。

食道がんは大きくわけて「扁平上皮がん」と「腺がん」の2つがあります。そのうち日本人の90%以上で発症する食道がんは「扁平上皮がん」となります。一方の「腺がん」の日本人発生率は10%以下で、欧米男性に発症が多いがんとなっています。

2-1. 扁平上皮がん

扁平上皮がんとは、食道の中心部分にできることが多いがんで、別名有棘細胞がんとも呼ばれています。扁平上皮がん自体は食道以外にも舌やのど、肺、肛門、子宮頸部など、内部が空洞となっている臓器の内側の粘膜組織から発生するがんです。

食道における扁平上皮がんは、食道の粘膜である扁平上皮細胞ががん化したもので、主に60~70歳の男性が多く発症します。

2-2. 腺がん

腺がんは通常食道下部に発生するがんです。食道腺を構成する腺細胞ががん化したもので、胃酸が食道に逆流し、粘膜が炎症を繰り返した結果、腸型細胞に置き換わった状態(バレット食道)が影響していると考えられています。

3. 食道がんの原因

ウイスキーとタバコ
食道がんの原因として主に挙げられるのが「飲酒」と「喫煙」です(扁平上皮がんの場合)。

まず飲酒ですが、アルコールを摂取すると体内で代謝が行われ、アルコールが分解されます。その際にアセトアルデヒドという物質が発生するのですが、このアセトアルデヒドは人への発がん性が疑われている毒性物質です。アセトアルデヒドを分解する酵素活性が弱い人の場合、アセトアルデヒドが食道粘膜の扁平上皮に蓄積しやすいため食道がんになりやすい傾向があります。

特にフラッシャーと呼ばれるお酒を飲むと顔が赤くなる方は、食道がんになるリスクが高く注意しなければなりません。また、若い頃には顔が赤くなっていたのに歳を重ねてからは赤くならなくなった、という方も危険因子を持っているので注意しましょう。

次に喫煙についてですが、たばこの煙にはおよそ5,300種類の化学物質および70種類もの発がん性物質が含まれています。タバコを吸わない人も、受動喫煙という形で副流煙を吸ってしまうため、家族や身近に喫煙者がいる場合には注意が必要です。

喫煙者は非喫煙者に比べるとの食道がんの発生率が約7倍というデータもありますので、現在喫煙中の方もこれから禁煙することにより食道がん発生リスクを下げることは可能です。

4. 食道がんの初期症状

胃痛の男性
食道がんは初期の段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、人によっては熱いものやすっぱいものを飲んだり食べたりした際にしみる感じがあったり、飲み込みの際に違和感があるなどの症状が出ることがありますが、がんが進行するにつれて食べものが飲み込みにくくなるなど自覚症状が現れてきます。

たとえば、以下のような症状が代表的な食道がんの初期症状と言われています。

4-1. 胸や背中の痛み

食道がんが進行して食道の壁を超えてしまい、周囲の組織に浸潤すると胸や背中に痛みが生じるようになります。初期の状態では症状が現れてもすぐ消えてしまうことがあるため、がんが進行していることに気付かないで過ごしがちです。

胸の奥がチクチクする、食べ物を飲み込んだ際にしみるような感じが続くようであれば、消化器内科等を受診し詳しい検査を受ける必要があります。

4-2. 食事が飲み込みづらくなる

食道がんが進行してくると食道の内側が狭くなってくるため、食事が飲み込みづらくなってきます。場合によっては食べたものを吐きだしてしまうこともあります。食事だけでなく水や唾液を飲み込むことも辛くなっている場合には、がんがかなり進行している状態かもしれません。

4-3. 体重の減少

食事を摂るのがつらくなると、必然的に食事の回数や量が減ってしまうため体重が減ってきます。またがん細胞が体内で蓄積された栄養素を吸収しエネルギーを消費してしまうため、さらに体重減少を加速させることがあります。

4-4. 声のかすれ

がんが進行して周囲の気管や気管支を圧迫したり浸潤したりすると、その刺激により声がかすれたり咳が出ることがあります。食道がんの場合、声帯を動かす反回神経の周りにリンパ節転移が起きることが多いため、声のかすれは食道がんの初期症状として現れやすいものです。

通常、声がかすれると耳鼻科を受診する患者さんは多いですが、耳鼻科では問題がないことから食道がんだと気付かず、がんの発見が遅れてしまいがちです。

もし声がかすれる、咳が出る、のどに違和感があるといった症状が出た場合には、食道がんの可能性を疑ってみることで、がんの早期発見につながります。

5. 食道がんの検査方法

内視鏡
上記で紹介したような症状が起こるなど、食道がんの疑いがある場合には速やかに医療機関にて検査を行う必要があります。まずは食道がんかどうかの検査を受けたのち、食道がんであることが確定された場合には、さらにがんの進行度合いを診断する検査が行われます。

一般的な食道がんの検査方法としては、

・上部消化管内視鏡検査
・上部消化管造影検査
・超音波内視鏡検査
・CT検査
・MRI検査

といったものがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

5-1. 上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査は、通常「胃カメラ」と呼ばれているものです。食道の中に内視鏡を入れて食道内部の粘膜部分の色や隆起、陥凹などを確認します。検査中に粘膜部分に異常箇所が見られる場合には、組織を採取して生検を行います。採取後組織のがんの有無を顕微鏡で確認した上で、がんであった場合にはがんと確定されます。

5-2. 上部消化管造影検査

上部消化管造影検査は、通常「バリウム検査」と言われているものです。バリウムといった造影剤を飲み食道を通過する際にレントゲン撮影を行います。この検査では、食道内のポリープやがん、隆起した箇所、陥凹場所などを特定したり、食道が極端に狭くなっていないかを確認することができます。ただし、内視鏡検査に比べると精度が落ちるため、以前と比べ検査自体の数は減っています。

5-3. 超音波内視鏡検査

超音波内視鏡検査では、内視鏡の先に超音波装置を付けて検査を行うもので、がんの深さがどれくらいまで及んでいるか、食道の周辺臓器やリンパ節への転移があるのかなど、表面から見ることができない粘膜下部の病巣などについて詳しく調べることができます。

5-4. CT検査

CT検査では、体の周囲からX線を当てて体の断面を画像化し、食道のどのあたりにがんが発生しているのか、周辺臓器への転移、リンパ節転移はあるのか、といったことを調べることができます。

5-5. MRI検査

MRI検査は、強力な磁気を用いることで、CT検査ではうまく判断できないリンパ節転移状況やその他臓器への転移などの診断において有効とされている検査です。

6. まとめ

検診結果
食道がんを予防するにあたり、初期の自覚症状がない食道がんを普段の生活で発見するのは容易なことではありません。本記事の中で紹介したような、胸や背中の痛み、食事の飲み込みづらさ、咳や声のかすれといった症状がすでに起きている時には、がんが進行していることも多いため、がんの早期発見には定期的な検診が欠かせません。

しかし、食道がんは厚生労働省が定めている「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」の中に挙げられている胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんといったがんとは異なり、検診の実施が定められているがんではありません。よって、食道がんの疑いがある方は、胃がん検診等を行う際などに、現在の身に起きている症状を事前に医師に伝え、食道周辺の検査も併せて行ってもらうようにしましょう。

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この記事を書いた人

秋山 祖久医師

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。