肝臓がんの早期発見に必要な検査とは?胃腸のプロが詳しく解説!
肝臓がんはすべてのがんの死亡数の中でも男女計で第5位に位置している身近ながんのひとつです。
国立がん研究センターが公表しているがん種別統計情報によれば、肝臓がんと診断された人の数は2019年データで37,296例(男性25,339例、女性11,957例)にものぼり、死亡数は2020年のデータで24,839人(男性16,271人、女性8,568人)を数えます。また、5年相対生存率は35.8%(2009~2011年)とあまり高くないため、早期発見および早めの治療が大事になります。
今回は、肝臓がんの原因やその症状について、また早期発見に必要な検査方法についても詳しく解説していきます。
肝臓がんは、肝臓に発生する悪性腫瘍の一種で、肝がんと言われることもあります。肝臓がんは初期症状がほとんど見られないため、定期検診などで症状がある程度進行したのちにがんと診断されることが多いのが特徴です。
肝臓がんには大きく分けて2つあり、肝臓の主細胞となる肝細胞ががん化してできる「肝細胞がん(HCC)」と、肝臓内の胆管ががん化してできる「肝内胆管がん(ICC)」とがあります。
日本で肝臓がんと言えば、その約9割が肝細胞がんのことを指します。
肝臓自体は本来がんができにくい臓器であるものの、以下のような要因によって肝臓がんが発生する可能性が高くなると言われています。
日本における慢性肝炎のほとんどがB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)です。特にC型肝炎ウイルスに感染すると慢性肝炎に移行する確率が約70%とも言われています。
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスを治療せずに長期間にわたって放置したままにしておくと肝硬変を引き起こすことがあり、それが肝細胞がんリスクを高める原因とされています。ちなみに肝臓がんの原因の約50%がC型肝炎ウイルスによるものです(B型肝炎ウイルスによる肝臓がんは約12%程度)。
肝硬変とは、肝臓が硬くなって正常な機能を果たせなくなる状態のことを指します。慢性肝疾患やアルコール性肝疾患が原因で肝硬変が発症するケースは多く、その結果肝細胞がんのリスクを増加させます。
また、最近では、非アルコール性脂肪肝からNASH(非アルコール性脂肪肝炎)を発症し、肝硬変へと移行する病態が注目されています。
メタボリックシンドローム(メタボ:糖尿病をはじめとする生活習慣病の前段階の状態)や脂肪肝、糖尿病といった症状も肝臓がんのリスクを高めることがあります。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、がんの初期には明確な症状が現れないことが多く、進行してから症状が現れることがほとんどです。
慢性肝疾患により肝機能が低下した場合には、黄疸やむくみ、かゆみ、倦怠感といった症状があらわれることがあります。なお肝細胞がんが進行した場合には、腹部の痛みやしこり、圧迫感、体重減少、食欲不振、全身のだるさ、黄疸(皮膚や白目(眼球結膜)が黄色くなる状態)などが見られることがあります。
繰り返しになりますが、肝臓がんは初期症状が現れにくいため日々の定期検診が重要です。特にB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染している人、また慢性肝炎・肝硬変のリスクがある人は、肝細胞がんのリスクがかなり高いため、定期的に医師による診断を受けることが望ましいとされています。
まずは、健康診断によって肝機能を定期的にチェックすること、そして肝炎にかかっていないかどうか、脂肪肝になっていないかを確認しましょう。
肝臓がんの予防方法として、他のがんの予防と同様にがん全般の予防には禁煙、過度なアルコール摂取をしないこと、バランスのよい食事、適度な運動、適正な体型維持、感染予防などが大事になります。
肝細胞がんに関しては、肝炎ウイルスへの感染予防をまず行い、B型肝炎やC型肝炎ウイルス感染が判明した際には、今以上に肝炎が進行しないよう、ウイルス除去や増殖を抑制する薬を用いた治療が薦められています。
肝臓がんの検査方法としては、画像検査や血液検査、肝生検といった病理検査などがあります。
画像検査では、腹部超音波検査(エコー)、MRI検査(磁気共鳴画像)、CT検査(コンピュータ断層撮影)、PET検査(ポジトロン断層撮影)などが行われます。
腹部超音波検査(エコー)では、肝臓内の腫瘍を発見するために、超音波を使って肝臓の状態を観察します。超音波検査は痛みがなく、比較的簡単に行えるため、初期スクリーニングとして使用されることが多いです。ただし、超音波検査は、技術者の技量が大きく影響すること、また肥満の人や肝硬変の人の場合、描出が難しいケースもあります。
CT検査(コンピューター断層撮影)では、X線を使用して肝臓の詳細画像を撮影することが可能です。造影剤を用いない場合の肝細胞がんの検出精度は低く、造影剤を用いることによって、がんの血流の特徴をより詳細に評価することができます。
MRI検査(磁気共鳴画像)は、磁場を利用して肝臓の腫瘍を詳しく評価する検査です。特に造影剤を使用したMRIは肝臓がんの診断に有効とされています。ただし、撮影に時間がかかる点(30~40分程度)や、CT検査と比べてコストが高い点がネックとなります。
PET検査(ポジトロン断層撮影)は、がん細胞が通常より多くのブドウ糖を消費する性質を利用し、がんの広がりを調べることができます。
肝臓がんの血液検査では、肝臓の異常を調べる肝機能検査やがんの可能性を探るための腫瘍マーカー検査が行われます。
肝臓の機能を評価するために、AST(GOT)やALT(GPT)、γ-GTP(γ-GT)、ALP、ビリルビンなどの値を測定します。
肝臓がんで上昇することがある特定の血液中の物質(腫瘍マーカー)の測定を行います。肝臓がんがあることで上昇する代表的な腫瘍マーカーとしては、AFP(α-フェトプロテイン)や、PIVKA-II(異常プロトロンビン)といったものがあります。ただし3cm以下の肝臓がんの場合、腫瘍マーカーが高値を示すケースはほとんどありません。
肝生検とは、肝臓の表面に約1.5mmの細い針を刺し、肝臓の組織を採取して顕微鏡でがん細胞の有無を確認するものです。肝生検を行わないと原因特定や診断確定が困難な疾患がある場合に用いられます。
ほかにも、腹腔鏡検査や内視鏡検査などが行われることもありますが、実際にどの検査が適用されるかは患者さんの症状やこれまでの病歴、検査結果を総合的に医師が判断したうえで決定されます。
以上、肝臓がんの原因やその症状について、また早期発見に必要な検査方法などについて紹介してきました。
肝臓がんは、がん死亡率のトップ5に入るほどの危険ながんのひとつです。5年相対生存率も35.8%と胃がんや大腸がんの約半分(胃がん:66.6 %、大腸がん:71.4%)となっているため、早期発見、早期治療が望まれるがんと言えます。
肝臓がんにならないためにも日々の定期健診は必須ですが、さらに用心を重ねる上で、今回ご紹介した腹部超音波検査やCT、MRIといった画像検査、血液採取による肝機能検査や腫瘍マーカー検査などを行い、しっかりと自身の肝臓の状態をチェックしておくとよいでしょう。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。