急性胃粘膜病変(AGML)とはどんな病気?胃腸のプロが解説!
一般的に胃炎と言った場合、慢性胃炎を意味します。慢性胃炎は胃の粘膜が長期間にわたって炎症を起こしている状態でゆっくりと進行していくことや、症状が軽微であるために気付きにくいのが特徴です。
この慢性胃炎とは異なり、胃の内側を覆う粘膜に急性的な損傷が生じる状態のものを急性胃炎または急性胃粘膜病変(AGML)と呼びます。胃の周辺に強い痛みが生じたり、吐き気や嘔吐が現れた場合には急性胃粘膜病変の疑いがあるため、原因を特定し適切な治療が必要となります。
今回は急性胃粘膜病変とはどのような症状なのか、またその他の胃炎にはどのようなものがあるのか、胃腸のプロが詳しく解説していきます。
急性胃粘膜病変(Acute gastric mucosal lesion)とは、さまざまな要因によって急激に胃の粘膜に炎症が起こる病気です。検査によって浮腫やびらん、出血、潰瘍などが見られた場合に診断されます。
急性胃粘膜病変の主な特徴としては、急激なみぞおち付近の痛みや嘔吐、吐血、下血、膨満感などが見られます。
急性胃粘膜病変の原因には次のようなものが挙げられます。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアスピリン、抗生物質、副腎皮質ホルモン剤、抗がん剤などの薬物使用により、粘膜が刺激されて急性胃粘膜病変が発症することがあります。
過度の飲酒も胃粘膜に損傷を与えることがありますので注意が必要です。
精神的なストレスや手術、外傷、重篤な疾患などによる肉体的ストレスが原因で急性胃粘膜病変と診断されることもあります。
ストレスが胃の粘膜を荒らす原因としては、自律神経系の影響があると言われています。ストレスがかかることで交感神経系が活性化されると胃酸の分泌が増加します。過剰に胃酸が分泌されることで胃の粘膜を侵食し損傷を引き起こすことがあります。
また、ホルモンの影響も胃の粘膜を荒らす要因と考えられています。ストレスホルモンであるコルチゾールは胃の粘膜を保護する粘液の分泌を抑制しますが、粘液が不足することで胃酸や消化酵素からの保護が減り、粘膜が損傷しやすくなるといったことが起こります。
急性胃粘膜病変では、ヘリコバクターピロリ菌への感染が関与することもあります。ヘリコバクターピロリ菌は、胃の内壁に生息する螺旋状のグラム陰性菌で、胃の中にヘリコバクターピロリ菌が生息している場合、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんといった胃疾患を発症する原因となっています。
ヘリコバクターピロリ菌に感染した場合には、適切な診断のもと除菌治療を受けることが重要です。除菌治療では抗生物質を1週間服用する薬物療法が行われます。
そのほか急性胃粘膜病変の原因としては、コーヒーや香辛料、熱い飲食物の過剰摂取、特定の食物摂取によるアレルギー、肝臓や腎臓に内臓疾患があるケースなどが考えられています。
急性胃粘膜病変の診断は、上部内視鏡検査により胃の粘膜の状態を確認する方法が取られます。特徴的な所見としては、多発するびらんや浅い潰瘍性病変であり、凝血や出血を伴うことが多いです。また血液検査にて貧血などがないかどうかを確認することもあります。
急性胃粘膜病変になった場合の治療方法ですが、まずは原因を除去することが必要です。軽微な場合であれば内服薬を服用したうえで経過観察が取られます。また、薬剤使用が原因である場合、その薬剤の使用を停止したうえで胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬など)を服用することがあります。
なお出血が認められる場合には、内視鏡検査を行い緊急止血の処置がとられる場合もあります。比較的重症の場合には入院を行い食事制限による点滴治療が行われたりもします。
胃炎には慢性胃炎や急性胃粘膜病変(急性胃炎)のほかにもさまざまな種類の胃炎が存在します。
びらん性胃炎とは、胃の内壁を覆う粘膜層が炎症を起こし、表面がびらん(浅い潰瘍)を形成する状態のものを指し、慢性または急性の形態を取ることがあります。びらん性胃炎の症状としては、上腹部痛や吐き気、嘔吐、胃もたれ、食欲不振、胃出血などがありますが、重症の場には吐血や黒色便が見られることがあります。
非びらん性胃炎とは、胃の内壁の粘膜が炎症を起こしているものの、びらんが形成されていない状態のものを指します。炎症はあるものの、粘膜の表面には大きな損傷が見られません。非びらん性胃炎の症状としては、上腹部痛や消化不良、食欲不振、体重減少などが見られます。
萎縮性胃炎とは、胃の内壁の粘膜が慢性的に炎症を起こし、最終的には胃腺の萎縮(縮小や消失)と機能低下を引き起こす状態のものを言います。萎縮性胃炎を発症することで胃の正常な消化機能が損なわれ、さまざまな消化器系の問題を引き起こす可能性があります。
萎縮性胃炎の原因としてはヘリコバクターピロリ菌感染が主な原因とされており、除菌治療を行うことで粘膜の萎縮を抑えることが可能です。
萎縮性胃炎は初期段階ではあまり症状がみられないものの、進行にともない上腹部痛や食欲不振、体重減少、吐き気や嘔吐、貧血などが見られることがあります。また萎縮性胃炎が進行すると、胃潰瘍や胃がんのリスクが非常に高まるため注意が必要です。
自己免疫性胃炎とは、免疫をつかさどる体内の抗体が誤って胃の内壁の細胞を攻撃することによって引き起こされる慢性の炎症性疾患を指します。これにより、胃の粘膜が徐々に破壊され、胃の機能が低下する結果を招いてしまいます。
自己免疫性胃炎は、初期症状があまり現れないのが特徴ですが、進行することで上腹部痛や消化不良、食欲不振、貧血などが起こる場合があります。ひどいケースだと手足のしびれや神経症状が現れることもあります。また胃がんのリスクが高いため、定期的な検診(胃内視鏡検査)が求められます。
感染性胃炎とは、ウイルスや細菌、真菌、寄生虫などの病原体が胃の粘膜に感染し、炎症を引き起こす状態を指し、慢性または急性の形態を取ることがあります。慢性の全身疾患やがん治療における免疫抑制剤服用者などがかかりやすい胃炎です。
胃切除後胃炎とは、胃の一部または全部を切除する手術を受けた後に生じる胃の炎症のことを指します。胃の血流が低下したり大量の胆汁が胃に接触することで、胃が正常に動かなくなり、胃の粘膜に炎症が生じます。主な治療方法としては、胃酸抑制剤の服用により胃酸の分泌を抑えたり、ビタミンB12の補充や鉄剤の摂取が行われます。
以上、急性胃粘膜病変とはどのような症状なのか、またその他の胃炎にはどのようなものがあるかについて紹介してきました。
胃炎といってもその原因や種類はさまざまあるため、胃が痛んだり吐き気や嘔吐があったとしても何の胃炎の可能性が高いのかよくわからないという人は多いでしょう。ですから、胃に不快感がある、または何らかの症状が現れた場合には、すぐに消化器内科に行き、胃内視鏡検査を受診して医師の診断を受けるのがベストな解決方法です。
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この記事を書いた人
秋山 祖久医師
国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。